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異世界に来たのでハーレムを目指したら、女性が強すぎて一歩も進めない件  作者: きなこもち
第2章

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刃が止まると、別の刃が来る

異変に気づいたのは、朝だった。


理由は説明できない。

ただ、空気が重い。


宿の窓を開けた瞬間、胸の奥がざわついた。


(来るな)


根拠はない。

でも、体が先に理解していた。


---


廊下から足音が聞こえた。


二人分。


軽い。

でも迷いがない。


(セラじゃない)


セラの足音は、もっと消えている。


ドアノブが回る直前。


「――下がれ」


低い声。


エリスだった。


扉の向こうに立っている。


「誰だ」


廊下の奥に、黒衣の女が二人。


暗殺者じゃない。


軍属。処理係。


“証拠を残さない”側の人間だ。


「王女殿下の命令ではない」


一人が淡々と言う。


「国防強化派の臨時判断だ」


(ヴァレリア、やったな)


ついに、公式じゃない手を打ってきた。


エリスが一歩前に出る。


「彼は今、王城の保護対象だ」


「文書は?」


「ない」


即答。


「だが“緊急排除”は規定内だ」


片方が剣に手をかける。


半分、抜く。


(正論で殴ってくる)


エリスは迷わなかった。


剣を抜く。


「通す気はない」


空気が一気に張りつめる。


廊下が狭い。

距離も近い。


ぶつかれば、血が出る。


その瞬間。


「――やめて」


背後から声が落ちた。


エリスが振り返る。


「セラ?」


屋根から、静かに降りてくる影。


銀髪。黒衣。


でも今日は、刃を持っていない。


処理係が眉をひそめる。


「何だ、あんた」


セラはいつも通りの声で言う。


「この排除は、契約違反」


「は?」


「私はヴァレリア・グラントと個人契約を結んでいる」


「優先権付き」


廊下の空気が変わる。


処理係の動きが止まる。


(効いた)


「対象は未処理」


セラは続ける。


「未処理案件に第三者が手を出すのは内部規定違反」


片方が舌打ちする。


「期限は切れてる」


「期限超過は依頼主と私の問題」


セラの声は冷たい。


「あなたたちの権限外」


数秒の沈黙。


処理係は視線を交わし、ゆっくり剣を収めた。


「今回は引く」


「だが次はない」


足音が遠ざかる。


廊下に、静けさが戻った。


---


エリスがセラを見る。


「どういうつもりだ」


「命令違反」


即答。


「それと、独断」


俺を見る。


「それ、かなりまずいよな」


「分かっている」


顔色は変わらない。


でも覚悟の重さが違う。


俺は聞く。


「ヴァレリア、どう出ると思う?」


「政治で締めるか」


「私を切る」


(どっちもあり得る)


「後悔してる?」


少し考えてから、セラは言った。


「していない」


「ただ」


「計算が増えた」


「何の?」


「あなたが死なない未来」


それは暗殺者としては、かなり致命的だ。


エリスが低く言う。


「もう戻れんぞ」


「戻る気はない」


迷いなく。


「“順番”を見てしまった」


「無視して刃を振るのは、気分が悪い」


(まだ理屈で立ってるのが救いだな)


---


その夜、王城。


アリシアの机に報告が届く。


・非公式排除未遂

・個人契約者の介入

・期限超過


アリシアは静かに一文を書き足した。


《事態は個人問題から派閥問題へ移行》


そして命令。


《対象者の直接保護は行わない》

《関与者の独断行動は黙認》


(覚悟決めたな)


守らない。

でも止めない。


王族としては、かなり危うい判断だ。


---


夜。


屋根の上。


俺とエリスとセラ。


奇妙な三人。


風が強い。


エリスが言う。


「これから先、安全は保証できない」


「分かってます」


セラが続ける。


「私はもう依頼人を守らない」


「それって」


「暗殺者としては終わり」


あっさり言う。


「代わりに観測者として残る」


俺は息を吐く。


(ここまで巻き込んだか)


「二人とも」


できるだけ普通の声で言う。


「無理はしないでください」


エリスがすぐ返す。


「それは私の台詞だ」


セラも小さく言う。


「同意」


少しだけ、空気がゆるむ。


でも分かっている。


これは終わりじゃない。


ヴァレリアは、もっと綺麗な手を使う。


もっと正しい理由で。


そのとき。


誰が削られるのか。


何が失われるのか。


それは、まだ誰にも分からない。


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