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異世界に来たのでハーレムを目指したら、女性が強すぎて一歩も進めない件  作者: きなこもち
第1章

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拒否は、罪ではない――ただし、条件付きで

呼び出しは、本当に早かった。

命令を拒否してから、半日も経っていない。


「王女殿下より、直々の要請です」


使者の声は静かだった。

責めるでもなく、感情もない。


(…これは裁きだな)


覚悟はできていた。

罰せられるか、拘束されるか、立場を完全に奪われるか。


どれでもおかしくない。


---


謁見の間は、前回と同じだった。


赤い絨毯。

高い天井。

玉座。


だが空気が違う。


前回は「観察」だった。

今回は「判断」だ。


エリスが、俺の少し後ろに立っている。

鎧姿。

背筋は真っ直ぐだが、空気が硬い。


(…この人も巻き込まれてる)


王女アリシアは、穏やかな表情でこちらを見ていた。


「来てくれて、ありがとう」


その声が、妙に柔らかい。


「座って」


言われるまま椅子に腰を下ろす。


(処刑前に紅茶を出すタイプだな…)


内心でくだらないことを考えながら、呼吸を整える。


王女は、手を軽く組んだ。


「事実確認から始めましょう」


視線が、まっすぐこちらに向く。


「あなたは正規の命令を拒否しました」


「はい」


はっきり答える。


「理由は?」


「…俺が、俺じゃなくなる気がしたからです」


一瞬、間を置く。


「試験で“役割”を与えられたら、俺は多分、それに合わせます」

「そうなったら、戻れないと思いました」


静寂。


王女は小さく頷いた。


「誠実ですね」


次に、エリスへ視線が向く。


「エリス」


「はい」


「あなたは、その拒否を黙認した」


「現場判断です」


「規律違反の自覚は?」


「あります」


エリスは迷わず答えた。


王女は、二人を交互に見た。


怒りはない。

苛立ちもない。


(…計算してる)


罰をどう与えるかではない。

どう使うかを。


「結論を言います」


王女は、はっきりと告げた。


「今回の拒否を、私は“罪”とはしません」


エリスの肩が、わずかに緩む。


俺も、思わず息を吐いた。


だが、王女はすぐに続ける。


「ただし」


空気が張り詰める。


「前例にします」


意味が、一瞬遅れて理解できた。


「命令拒否は原則、認められない」

「しかし――」


王女はゆっくりと言葉を選ぶ。


「理由を明示し、代替案を提示した場合に限り」

「交渉の余地があると定義します」


(…定義、か)


つまり。


俺の拒否は、規律の例外ではなく、新しい枠組みに組み込まれる。


「あなたは拒否した」

「だが、暴れなかった」

「逃げなかった」

「国家を否定しなかった」


王女は、静かに言う。


「それは反乱ではありません」


「…抗議です」


俺はそう答えた。


王女は、わずかに笑う。


「ええ。だからこそ価値がある」


だが、声はすぐに冷静に戻る。


「しかし、あなたが危険である事実は変わらない」


胸の奥に、重いものが落ちる。


「条件を出します」


王女は言った。


「あなたは試験を受けなさい」


心臓が、跳ねる。


「ただし」


王女は目を細める。


「あなたの提示する形式で」


「…形式を、俺が?」


「ええ」


「あなたが“合わせる”ことを恐れるなら」

「合わせなくて済む枠組みを、自分で作りなさい」


頭が、一瞬真っ白になる。


(…丸投げじゃない)

(責任ごと渡された)


拒否は許さない。

だが、従い方は選べる。


それは自由ではない。


だが、完全な従属でもない。


王女はエリスを見た。


「エリス」


「はい」


「あなたを、その枠組みの監督責任者とします」


エリスの拳がわずかに震える。


「異論は?」


「…ありません」


王女は静かに続ける。


「彼が壊れれば、あなたの責任」

「守れば、あなたの功績」


エリスは、短く答えた。


「承知しました」


王女は再び俺を見る。


「あなたは命令を拒否しました」

「しかし同時に、国家と対話する立場を自ら選び取った」


称賛ではない。

評価だ。


「覚えておきなさい」


王女の声は、静かで冷たい。


「この国で拒否できるのは、力を持つ者だけです」

「そして力を持つ者は、常に評価され続けます」


自由はない。

だが、完全な無力でもない。


「下がってよろしい」


それで、謁見は終わった。


---


廊下に出る。


しばらく、二人とも黙って歩いた。


やがて、エリスが低く言う。


「…無茶をしたな」


「はい」


「だが」


少し間を置く。


「よく踏みとどまった」


その言葉が、静かに胸に落ちる。


俺は、裁かれたわけではない。


処罰もされなかった。


だが。


(定義されたな)


俺はもう、


命令に従うだけの存在でもなく、

勝手に暴れる異物でもない。


――交渉する存在。


それは面倒で、責任が重くて、

逃げ道も少ない。


でも。


完全に“モノ”ではない。


少なくとも今は。


それだけは、確かだった。


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