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異世界に来たのでハーレムを目指したら、女性が強すぎて一歩も進めない件  作者: きなこもち
第1章

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転移と勘違い

目を覚ましたとき、最初に感じたのは静けさだった。


本当に、何の音もしない。鳥の声も、車の音もない。耳鳴りがするくらいの無音だ。頬に冷たい感触があって、どうやら地面に横になっているらしいと気づく。


「…冷たっ…」


声を出してみると、自分でも驚くほどかすれていた。ゆっくりと上半身を起こす。ふらつきはない。立ちくらみもない。体が軽い。


(…あれ?)


昨日までの俺は、ベッドから起き上がるだけで気合が必要な人間だった。ブラック企業で心も体も削られて、休日はほぼ寝て終わる生活。それなのに、土の上からこんなにあっさり起き上がれる?


周囲を見回す。


森だった。


見渡す限り、木。高い木。濃い緑。空はやけに青くて、雲も高い。ビルもない。道路もない。電柱も信号もない。


「…は?」


頭が一瞬真っ白になる。


慌ててポケットに手を入れる。


何もない。


スマホがない。財布もない。家の鍵もない。代わりに触れたのは、知らない布の感触だった。自分の服じゃない。麻っぽいシャツに、動きやすそうなズボン。地味だけどしっかりした作りだ。


「待て待て待て」


心臓がどくん、と大きく鳴る。


(誘拐? 人体実験?)


嫌な想像が頭をよぎる。でもその瞬間、気づいた。


空気が、うまい。


思いきり吸い込むと、胸の奥まで澄んだ空気が入ってくる。今まで吸ってきた都会の空気とはまるで違う。


「あ…」


この感覚、どこかで知っている。


ゲーム。漫画。アニメ。散々見てきた展開。


知らない森。知らない服。体がやけに軽い。


「…これは」


喉がごくりと鳴る。


「来た…!」


思考が一気につながる。


これは――異世界転移だ。


「異世界転移だろ…!」


思わず声が大きくなる。


「勝った…!」


笑いがこみ上げてくる。


勝った。人生大逆転だ。あの会社も、上司も、意味不明なマナー講師も、全部もう関係ない。


「やった…やったぞ…!」


両手を握りしめる。ここからは選ばれし者の人生だ。能力をもらって、女の子に囲まれて、苦労せずに生きていく。


ハーレム。


脳内にその文字が浮かぶ。


(よし、まずは状況整理だ)


深呼吸して落ち着く。テンプレ通りに動けばいい。


空を見上げる。太陽は一つ。昼前くらいの位置。少なくとも地球に近い環境らしい。


その場で軽く跳ねてみる。


高い。


明らかにいつもより高く跳べている。着地も軽い。息も切れない。


もう一度跳ぶ。やっぱり高い。


「…お?」


足腰に不安がない。体が軽い。


「俺、もしかして…」


口元が自然に緩む。


(初期ステータス強化タイプ?)


よくあるやつだ。異世界に来たら身体能力が底上げされているパターン。


「…神様、分かってるじゃん」


誰にともなく親指を立てる。


武器はない。剣もナイフも持っていない。でも、不思議と不安はなかった。


(まあ、まずは村だよな)


異世界の基本。村で情報収集。村娘とイベント。冒険者ギルドで美人受付嬢。完璧な流れだ。


木が少ない方向をなんとなく選んで歩き出す。草を踏み、枝をかき分けながら進む。


しばらく歩いて、気づく。


疲れない。


山道のはずなのに息が上がらない。足取りも軽い。


(マジか…)


これはもう気のせいじゃない。確実に強化されている。


「勝ち確じゃん…」


声に出して言う。盗賊でもモンスターでも来い。俺は主人公なんだから。


そう思った瞬間、背筋にぞわっとした感覚が走った。


森の奥で、何かが動いた気がする。


音はほとんどない。でも、確かに気配があった。


「…動物?」


自分に言い聞かせる。森なんだから動物くらいいるだろう。


歩き続ける。


…歩く。


…歩く。


(…長くない?)


村、まだ?


テンプレならそろそろ着いてもいいはずだ。太陽が少し傾いている。


(え、これ普通に遭難してない?)


不安がじわっと広がる。


そのとき。


――ガサッ。


今度ははっきりした音。


「…誰か、いますか?」


声をかける。返事はない。


代わりに、複数の足音が近づいてくる。


(…あ)


胸の奥が冷える。


(村人かもしれないし)


そうだ、きっと親切な村人だ。俺を助けてくれる展開だ。


そう思いたかった。


木陰から出てきた影を見た瞬間、その期待は粉々になった。


三人。


全員、女。


全員、武器を持っている。


そして、目が笑っていない。


(…夜盗、じゃね?)


ゲームの知識が最悪の答えを出す。異世界あるある。最初に会う人間が敵。


「よう」


先頭の女が口角を上げる。


「迷子かい?」


その声を聞きながら、俺は思った。


(あれ?)


(ハーレムは?)


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― 新着の感想 ―
ブラック企業からハーレムを夢見てというのに惹かれました。 ゆっくり読み進めたいと思います
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