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ーー完結記念ーー その後の世界 幸せに暮らして



 チュン 

   チュン 

     ギョワン





 鳥の声が聞こえる。 





   開けてある小窓から、清々しい風も入って来た。



 


 アパートの小さなキッチン。


 朝ごはんは…… いいや、簡単に行こう!

 焼いたハムと卵、目玉焼きにして…… パンでいいよね。

 コーヒーもインスタント。



 ワンプレート。


          簡単に、楽ちん朝ごはん。



 カーテンから、早朝の光が差し込んでるんだ。 お休みの日は、ゆっくり起きれるのに、なんでか、何時もの時間に目が覚めちゃうんだよね。 



 プレートとカップをお盆に乗せて、居間に行くのよ。



 こたつの上に、朝ご飯を置くとね、旦那様が起き出して来た。





「おはよう…… 早いね…… 無理しなくて、もっと寝ていていいんだよ?」


「うん、でも、何か目が覚めちゃってね」


「ワクワクするのも、判るんだけどね…… 今日はどうするの?」


「うん、姉妹が来るんだよ。 あの子の事だから、きっと早いよ」


「そっかぁ…… あっちも新婚さんなんだけどね」


「そうだね。 でも、結婚する時、約束したみたいよ?  性格を変えるつもりは無いって」


「アハハハ! それを了承したと、アレがか! こりゃ傑作だ!!」


「ギブ、アンド テイク な、そんな関係だって。 強がりだと思うけど、笑いながらそう言ってたよ」


「流石に、アーちゃんの姉妹は、一味違うよ。 結局…… 決め手に成ったも、君、絡みなんでしょ?」


「うん、まぁね。 ” ずっと一緒 ”って約束したからね」


「だから、ギブ アンド テイク なんだね」





 湯気の上がるカップから、芳醇な香りが漂うの。 これさぁ…… ちょっと美味し過ぎるよ。 インスタントなのに…… お土産に持って行こう……



  こたつに足を突っ込んで、二人向き合っての朝ごはん。



 テレビのモニターには、色んな文字情報が流れてる。 旦那様が特に気に掛ける様なモノは、無いみたいね。 横目でその情報を追っていくと、旦那様の手が私の目の前に差し出されたんだ。





「お休みの日は、ゆっくり休む! なんか有れば、呼び出しが掛かるんだし、それに、もう直ぐ旅行に行くんでしょ! やるべきことは、ちゃんと処理したよ!」


「うん、でもね、やっぱり気になるもの……」


「もう!」





 困り顔の旦那様。 旅行って言っても、里帰りだよ? 旦那様も頑張ってお仕事片付けたから、一緒にいける様に成ったけど…… そりゃ楽しみだったけど…… 姉妹夫婦も一緒に行ける事に成ったけど……




        でも……





 責任ってもんがあるでしょ!






「大丈夫。 アーちゃんが覚悟決めて、お嫁に来てくれた事は、十分に理解してる。 でも、頑張り過ぎないでよ。 もう、二度と手を離したくないんだよ」


「うん…… そうだよね……」


「そうだよ。 でも、思っていたより、大変な感じ?」


「想像してたのとは、ちょっと違ったけど、でも、とっても充実してる。 みんなもとっても良くしてくれるしね」


「当たり前でしょ。 僕の伴侶なんだし…… なんてったって、【銀髪紅眼(シルヴェレッド)鬼姫(オーガレス)】 ” 魔人王妃 ソフィア 様 ” なんだもんね」





 旦那様の口から、その名前を言われると、こそば痒い。 とっても、身の置き所が無いんだよ。 私は、私の出来る事を、旦那様の側でしてるだけなんだけど。 ……まぁ、時々、側用人のアリュースとはぶつかってるけど…… それも、イレーネ様が、納めて下さるんだし……





「頑張り過ぎは、良くないよ。 アーちゃん、一人が負う責任なんて、無いんだよ。 僕が居るんだしさ!」





 なんか、ニヨニヨ顔になってしまう。


 丁度その時、玄関の扉が、コンコンとノックされて、インターホンから、声が流れ来るんだ。






「消防署の方から来ました。 今、幸せになれる消火器をお分けしております!! なんと、今なら、9800円! この消火器に一杯の五百円玉で、貴方に幸せが訪れます!! 買って下さい! 買わないと、幸せが逃げて行きます!!! 開けて~~~ ソフィア~~~~ 開けて~~~~」






 ホント、プライベートは、騒々しいんだから! 玄関扉を開けるの。 何時もの侍女服じゃない、菫色のワンピースを着た、私の姉妹 ―――ミャーが其処に居たんだ。 あぁ、彼女の旦那様も一緒ね。





「あんまり、大声出さないで。 まだ、朝、早いよ」


「ミャーはね、待ちきれないんだよ!!! あっ! 陛下! お、おはようございます」





 鋭い牙を隠すように、両手で御口に手を当て、焦りまくる、ミャー。 小さいアパートなんだから、そんなに騒々しくしてたら、出て来るって。 私の後ろに、そっと立つ旦那様。 彼もニヨニヨした顔で、御出迎えだよ。





「まぁ、玄関先で騒ぐのも、何だから、入りなさいよ」


「はい! おじゃましま~す! 入ろうっ マル!」





 お、おいおい、高等弁務官捕まえて、マルって…… マルキド=エム=ドラキュリア公爵も、なんで、そんなに愛おし気に、ミャーを見てんだ? もう、朝っぱらから、お熱い事で……



 朝ごはんは終わってたから、二人分のコーヒーを追加。 何か、ドラキュリア公爵様が恐縮してる。 良いんですよ。 此処はプライベートで、貴方達はお客様なんだから……ね。 ミャーを見てごらんなさいな。 とっても、寛いでいるわよ?





 ――――――





 私達がオブリビオンに来てから、五年。 生活も落ち着いた。 元気に 「魔人王妃 ソフィア 様」 を勤めているよ。 




 私は、魔人王 アレガード 様に嫁いだんだ。 盛大な結婚式だったよ。 御父様の作って下さった、純白のウエディングドレスを着てね。 皆、それはもう、大変、祝福してくれた。 アレルア様も目に涙を浮かべて、祝辞を仰って下さったんだよ。



 なんか、旦那様の眼がきつかったけど、まぁ、それは、ソレ。 



 日々の生活と、御妃様の仕事。 頑張っちゃったよ。 でも、何時も一緒に居られるっていいよね。 私達の健康状態をチェックするって、エルダー=サキュバスの エリスネール=アフレシア伯爵夫人が、時々健康診断してくれたんだよ。


 でね、その時、ちょっとした問題が発見されたの。 私じゃ無く……ミャーにね。 私は「半妖」に成っちゃたから、その問題はクリアしてたんだけど…… ミャーは半獣人族だからね。




       そう、” 寿命 ” の問題。




 わたしの寿命は、「半妖」に成ったおかげで、相当に伸びたんだ。 旦那様の御側に立てるくらいね。 でも、ずっと一緒って、そう約束したミャーは…… ミッドガルドの「人族」並みにしか、寿命が無いんだ。 エリスネールさんが、意地の悪い事に、私にでは無くて、ミャーにその事を伝えたんだよ。


 やっぱ、この人、「聖女」の事は、嫌いなんだなぁ…… って、思ったくらい。


 何時も明るい、ミャーが落ち込んじゃってね。 でも、「寿命」じゃ仕方ないって…… でもさ、私の専属侍女の、「お仕事」は、完璧にこなしているんだ。 健気さに泣けてきそうに成ってたんだよ。 何とかならないかなぁって、思ってた。


処女宮(ヴァルゴ宮)】でも、一目 置かれていたくらいに出来た、侍女のミャー。 当然、こっちでも、ソツなくこなしてる。 その上、私が、姉妹だって、公言してるからね。 並みの男共(ヤロー共)は寄ってこない。 そんな中、一人、ミャーに熱烈なラブコール送った人が居るんだ。




      それが、ドラキュリア公爵様なんだよ。




 彼も相当長い寿命の持ち主。 魔族の中でも屈指の家柄。 そんな彼が一番困ってたのが、お嫁さん。  その、ドラキュリア公爵閣下のお家の不文律って言うか…… お嫁さんの条件に合致する人が居なかったんだよ。魔族の人達って、皆、結婚っていうか、その…… ゴニョゴニョ……が、はやくってね。




 いいや、手っ取り早く言うと、公爵家当主の「お嫁さん」は、処女じゃ無きゃならないんだわ!




 ミャーは、暗殺者ギルドの訓練の時も、それだけは護り切った豪の者だからね。 いや、まぁ、そんな訓練もある事は、ある事は有るんだけどね、そん時、ミャーは、まだ小さかったし…… 見送られていたんだって…… 閨房術は知識としては教え込まれていたけど、実践する機会は皆無だもんね。


 で、彼女を逃すと、本当に候補者居なくて、ヤバイらしい ドラキュリア公爵閣下が、果敢に迫ったらしいんだ。 他に取られたら、ほんと、孤独に過ごすしかないからね。 幾度も彼の真摯な求婚を、跳ね除け続けていたのが ミャー 。  ”ずっと、妃殿下の御側に居ると決めておりますので、申し訳ないのですが……” ってね。 



      公爵様、半分諦めていたんだって。



 そんな彼に、天啓の様なモノが降りてきちゃったらしいんだ。 これを最後にって、薔薇の花束を手に、ミャーに云ったそうよ……





 ”ミャー殿。 私との繋がりは、貴女にとっても計り知れない利益が有るのですよ”


 ”何の事でしょうか、公爵様”


 ”私の愛を受け入れて下されば、貴方は我が家の一人。 我が家の契りを結べば、貴女は「吸血族」に成ります”


 ”はい…… それで?”


 ”お判りになりませんか? 貴方は ” 半獣人族 ” ではなく、 ” 吸血族 ”になるのです”


 ”…………では、ずっと、あの方の御側に居る事が出来ると? ”


 ”ええ、今のままの貴女よりも、ずっと長く………… ”


 ”………………わかりました。 あなたの愛を…… お受け致します」





 って、こんなプロポーズってあるの?



 鉄壁のミャーが、落ちたって、役所の中大騒ぎに成ったんだからね!! ドラキュリア公爵家のしきたりに則り、深夜の結婚式。 とっても、綺麗だったよ…… ミャー、緊張してたけど。





        幸せそうだった。





 職務規定の「結婚時の公休」が終わって、私の側に帰って来た彼女は、とっても輝いていたっけ。 


 公爵様は、ミャーにべた惚れ。 ミャーも…… なんだかんだ言って絆されてたんだよね。 持てる技術全部使ったって、こっそり、教えてくれた。




       公爵様…… ご愁傷様。




 でも、良かった。 ミャーも、いっつも 公爵様の話になると、とっても幸せそうな表情になるんだもん。 彼女にも 「 春 」 が、来たんだ。



 心に引っかかってたもの、全部、全部、無くなったんだもん。





 ――――――――






「魔人王陛下、ついに完成したのですね」


「うん、ダンジョンコアのメカニズムをかなり弄った。 転送装置としては、及第点だと思うよ。 ソフィアも手伝ってくれたしね。 開発局の連中も、最後の追い込みの時には、家に帰って呉れなかったよ」


「皆、ソフィア様の事を敬愛されておりますからな」


「そうか…… なら、嬉しいな」





 完成したって言うのは、簡易転移門の事。 ダンジョンコアの魔方陣を解析して、オブリビオンから、ミッドガルドへ流れる魔力がどうやって、流されているのかを解明したんだ。 あんな、超兵器クラスの跳躍門を作り出す頭脳集団が、年単位で解析してくれたんだよ。



 それも、私の一言からね。 




 ” ダンジョンコアが作り出してる、魔力の流れって、ある意味転移門と同じですよね ”





 全ては、其処からだったの。 オブリビオンから、ミッドガルドへの道は、中々と難しかったのよ。 色々と、ほんと、色々と制約とかあって。 エミリーベル先生が、隙を見つけてくれたんだけど、やっぱり、簡単には行かなくてね…… 


 それで、旦那様の配下の頭脳集団と一緒に、その道を探してたんだ。



    だって、御父様とお約束、したでしょ。



       また、お逢いしますって。



 みんなも、頑張ってくれたんだ。 それでね、ダンジョンコアを一組、それ用に使うって事で、精霊様達にもご了承頂いたんだよ。 私達の手で、技術を確立したら、使っていいってね。




       先日、それが完成したんだ。 




「念話機」使って、《ノルデン大王国》のユキーラ姫様に念話でお話して、御父様に繋ぎ付けて貰ったんだ。 レーベンシュタイン領にある、小ダンジョン…… ニ十階層くらいのモノなんだけど、其処のお掃除をお願いしておいたんだ。




 多分、それで、判る筈。


 御父様ならね。





「出発は、明朝ですね。 楽しみです。 お土産は、私の無限収納に入れましたし、コアの調整も終わっています」


「世界の理には、抵触しないか?」


「はい、精霊様の御許可は頂いておりますから」


「行くのは…… 僕と、アーちゃんと、ミャーちゃんと、公爵の四人で?」






 丁度、言い出すタイミングだよ。 なんか、にやけちゃう。 でも、喜んでくれるかな…… ちょっと、心配。





「いいえ、違いますよ」


「ん? あと、誰が行くんだ?」





 そっと、お腹を撫でるんだ。 うん、こないだ判った。 自分で調べた。



 なんか疲れるなぁって思ってね。






「もう一人…… 私の中に……」










           皆、絶句したあと…………








            大歓声が上がったんだ。





              喜んでくれた。 






               良かった。





            幸せだよ、 とっても……









     未来は、光に満ち溢れているって…… そう、確信したの。







――― おまけ ―――


 レーベンシュタイン男爵は、生まれて来る孫にメロメロになる予定。

 男爵家の跡取りの問題は、優秀なアーノルドさんにお任せ状態。

 アーノルドさん、渋々了承。 勿論、ソフィアの口添えがあったから。



 めでたし、めでたし……

完結マーク外し、誠に誠に、ごめんなさい。


記念に書いたこのお話 ―――短編にしたら、座りが悪いので…… 



追加に成ってしまいました事、お詫び申し上げます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 楽しく読めました。 本来だったら物語からフェードアウトしていたはずの人たちが、人類最高峰の戦士(?)となって合流してくる下りはやはり胸が熱くなりますね。なにより、ミャーとソフィアの二人の信頼…
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