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第九十二話 『カバン作ってたらなんか混浴させられた』

 「んじゃ、素材はいくらでもあるから、好きなの指定してくれれば剥ぐよ?」


 あの後、王城に行ってきた俺だが、結果だけ言えば……素材はほぼ全部残っていた。

 当然のごとく、しめしめと拾っていこうとした奴らもいたらしいのだが、多くの魔晶龍信者クリスフェデーレの者たちと王国軍が、これは古龍様のものなのだから、そちらに判断を仰がずに好きにすることは許さないと言って、全部回収し、王城にて保管をしていたとのこと。

 現場では、一部の熱狂的な信者が、目を血走らせて不正を監視していたため、奪っていこうとするような愚か者はほとんど出なかったんだと。

 ……狂信者かな? ぶっちゃけ、怖すぎだろそれは流石に。

 信仰される側なのに、若干身の危険を感じるぞ?


 まあそんなわけで、回収にかかった手間などを考え、素材の三割ほどを国に寄付して、俺が頼んだ差別撤廃と、王都の防衛設備の増強。それから、勇者の装備の強化のためなんかに使ってくれと言っておいた。

 王様は泣いて喜んでたけど、そんなに価値のある素材だったのかな? 焦げたり千切れたりしてるのも多かったんだけど……時間が経ってて、肉はダメになってるのもあったりするし。


 「えっと……正直聞いたこともない魔獣や魔物ばかりで、どれが良いのやら……」


 俺の持ち帰ってきたモンスの死骸は、国の方でリストにしてくれていたおかげで、一部アンノウンもあったが、だいたい何があるかは把握できている。

 そこで、そのリストをフィルスに見せてみたのだが、帰ってきたのはこの返事。

 ま、危険地帯のど真ん中にあったダンジョンのモンスターとかだし、そんなもんなのかな?


 「んじゃまあ、適当に良さそうなの剥いでみるから、それで作ってみて」

 「あ、はい。わかりました」


 俺は早速ギルドの中庭に出て、解体作業を進める。

 あ、宿では流石に解体は厳しいというか迷惑なので、ギルドの部屋と中庭を借りて作業をすることにした。

 必要な道具は、さっきの店を出た後で買い揃えてきたので、後は俺が素材を剥ぐだけだ。

 とはいえもう夕方近いし、今日は皮の処理で終わりかな~


 さて、あとはどの素材にするかだが……魔法陣を挟むようにして、生地を二重にしたいから、あんまり厚過ぎるのはNG。

 表面の触り心地が酷いものもNG。

 となると……この辺かな?


 俺が取り出したのは、グランザガイルとかいう、翼の生えたサイみたいな魔獣。

 一見皮が厚そうに見えるが、よく見ると多層構造になっていて、内側の皮は結構柔らかくて使いやすそうだ。

 サイズもあって素材もたくさんとれるし、失敗前提の今回の作業には丁度良いだろう。


 とはいえ、これを今まで使っていたナイフで処理するのは流石に不可能。

 というわけで、ハイ! 白雪の出番です。

 まさか初使用が戦闘ではなく解体になるとは思わなかったが……まあそれは良いだろう。


 「んじゃ、よろしくな。白雪」

 「ん……風の魔素で切れ味抜群。余裕でスパスパ」


 ま、よろしくと言っても本体の刀の方を使うだけで、人型の白雪は、俺の隣で優雅に見学中なのだが。





 「あるじ、上手」

 「サンキュ。それじゃ、これをフィルスに渡してきてくれるか?」

 「ん……白雪におまかせ」


 俺が剥いだ皮を白雪に渡すと、白雪はそれを抱きかかえて、トテトテと若干おぼつかない足取りで、裏庭の別の一角で作業の準備をしていたフィルスの方まで歩いて行く。

 白雪の小さな体で、大きな荷物を持ってよたよたしている姿は……とても、萌えます。

 まあ、多少は心配でもあるが、白雪はあの体が壊れても刀に戻ってくるだけだし、大丈夫だろう。


 その後、しばらく解体作業を続けていると、あっという間に日が暮れてくる。

 完全に暗くなる前に宿に戻りたいし、今日の作業はここまでかな。


 「どうだ~? そろそろ帰ろうかと思うんだが」

 「あ、はい。染色作業は終わったので、一旦明日まで放置ですかね」


 俺がフィルスと白雪に声をかけに行くと、そこには染料につけられた大量の革。

 なめしまでは俺がやったが、染色は任せていたからな。作業が終わっていたようで何よりだ。

 他の剥いだ素材も、今度なめしておかないとな。

 それとも、専門業者にブン投げちゃった方が早いかな? 量が量だし。物によっては、どう処理していいかわからないのもある。

 ……ま、それはまた今度考えればいいか。


 「改めて見ると、すごい量だな。一晩置いとくなら、雨に降られてもいいようにだけしておくか」

 「そうですね。お手伝いします」


 その後、適当に使い辛そうな皮で雨よけを適当にこしらえた俺たちは、そのまま宿へと帰……るつもりだったのだが、あまりに染料や血で臭っていたので、街から出て、風呂に入るために例の山の洞窟まで飛んで行く。

 門が閉じる前に帰らなければいけないので、さっと入ってちゃっちゃと帰るとしよう。





 「はい、到着っと」


 目立ちたくなかったので、魔晶龍騎士の姿でフィルスを抱えてきた俺は、洞窟の中まで入ってからフィルスを下ろす。


 「それじゃあ、魔導具を起動したら風呂ができるから、先に入ってくれ。俺はその間、外にいるから」


 風呂の魔導具はフィルスに預けていたので無事だったが、一つしかない。

 あれには保温機能がついており、複数の風呂を一度に用意することはできないので、時間は無いが仕方がない。

 最悪、俺は体を再構築すれば入る必要は無いし、それを見越して服も自作の魔素性なので問題は無いしな。


 「ですが、それでは時間が……」

 「大丈夫だよ。まだあと半刻くらいはここに居てもギリ大丈夫だし、心配いらないよ。それに、この風呂は初めてだろう? ゆっくり入ってきたらいいさ。石鹸やタオルは無いがな」


 レムサムのジウスティア家の屋敷では、毎日のように風呂に入っていたが、この携帯風呂を使用するのは、フィルスと出会ってからは地味に初めてだったりする。

 まあ、温度設定とかの調整がきちんとできてるか不安だったしな。今は俺が改めて調整したから問題ないが。


 「あの……でしたら、一緒に――――」

 「それはダメだ」


 絶対言うと思ったよ。一緒の布団に下着で入ってくるくらいだし。

 でも、流石に風呂は刺激が強すぎる。

 下着でもヤバかったのに、裸なんて……それに、今はフィルスへの好意を自覚してしまった分更にヤバい。

 正直、理性を保てる自信が無い。


 (あるじ。私も入りたい)

 「ん? ああ、構わないぞ?」


 俺は白雪を実体化させる。すると、そこには一糸まとわぬ白雪の裸体――――


 「どわぁぁあああ?! なんて格好で出て来るんだ、お前は!!」


 その肌色の不意打ちに、俺は慌てて後ろを向く。


 「? お風呂に入るなら、普通」

 「いやいやいや! 俺が去ってからにしろよ」

 「?? あるじも一緒に入る」

 「は? いやいや、入らないよ?」

 「でも、主があんまり離れると、実体化解ける。洞窟の外じゃ遠すぎ。なら、一緒に入った方が良い」


 ぐっ……そうだった。白雪の実体化には俺の魔素を使っているから、俺の魔素のコントロール圏外まで行くと、実体化が解けちまうんだ。

 さらに言えば、白雪の実体化は割とコントロールが繊細なので、まだ慣れていない現状では、せいぜい300メートルくらいが限界だったりする。


 「ま、まあ確かに……いやでも、それなら後ろ向いて待ってるから――――」

 「それだと、フィルスもわたしも気をつかう。一緒でいい。フィルスもわたしもいいって言ってる」


 くっ! 確かにそうなのだが、俺が気にするんだよ!!

 てか、なんでこんなに一緒に入らせたがるんだこいつは……


 「あるじ、時間ない。早くする」


 もはや俺の意見も聞かずに俺を引っ張っていく白雪。

 ここまで頑なだと、どっちにしろ押し負けそうだな。

 フィルスもさっきから首を縦に振るだけで、全く止める気配が無いし。


 「わかった! わかったから!! 魔導具の起動をさせてくれ!」


 結局折れて、風呂を作る俺。

 サイズは人数も増えたので、ちょっとした露天風呂くらいはあるが、流石に二人から逃げられるほど大きくはない。

 体を隠すタオルもないし、水着なんて、もっとある訳ない。

 これは……厳しい戦いになりそうだぜ…………役得ではあるのだろうけど。


 そうして俺は、白雪に促されるまま、風呂せんじょうへと入って行くのであった――――

ちょっとこの先の展開がイマイチ浮かんでなくてですね……

しばらく続いた日刊は、今日で最後になりそうです。

まあ、投稿を止めるつもりはありませんが、また数日に一話がしばらく続くかもしれません。

元々日刊作品という訳では無いので、言わなくてもいいかな? とも思ったのですが一応。すみません。

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