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第九十一話 『そろそろ旅支度でも始めましょうかね』

 さて……俺の中にある感情と向き合うため、ここ数日フィルスをよく見ていたのだが……やっぱあれ、忠誠心が高いだけなんじゃね? としか思えない。

 白雪は、フィルスも満更でもないとか言ってたけど、正直フィルスは、まだ俺に依存しているところがある気がするし……まあ、それを解決するために、王様に亜人の人権問題どうにかしてもらうわけだけど。

 告白して、仮に……仮にOKしてもらえたとして、そこにあるフィルスの気持ちは、一体どういうものなのだろうか。それを考えると……少し、怖い。

 あ~告白はまだ無理かな~。せめてもうちょっと経ってからじゃないと、お互い相手を知らな過ぎる。特に俺。


 「ま、焦ってもしょうがないよな。気楽にいこう」

 「何がでしょうか? レイジ様」

 「どっひゃいっ!? フィ、フィルス!? ああいや、何でもないんだ、うん」


 いつの間にか心の声が漏れていたらしい。びっくりした…………変なこと、言ってないよね?


 俺たちは今、旅支度のために、王都の商業区画まで買い物に来ている。

 金も手に入ったし、兼ねてから考えていた世界を見て回る旅にそろそろ出ても良いのではないか? と考えたからだ。

 冒険者ランクはまだDだが、マーガスさんに聞いたところ、地方にも協会支部は結構あるらしく、全ギルド共通の常設依頼か、ギルドから個人に直接回された依頼、それから、協会を通しての指名依頼なら、そこで依頼達成の処理がしてもらえるらしい。

 なので、半年での依頼ポイントが足りず、冒険者資格を剥奪される、なんて心配はしなくていいとのことだ。

 まあ、前二つに関しては多少手数料がかかるらしいので、儲けという意味では若干不利だが。

 あ、ちなみに、レティアからの武闘大会出場は、一応指名依頼扱いになっていたらしく、割と多めにポイントがもらえていた。

 指名依頼は本来、Cランク以上でないと無いのだが、大会出場の指名の処理は毎年こうしているらしく、特例で認めたのだそうだ。

 まあそれが無くとも、例の事件の後、色々駆けずり回っていたおかげで、既にポイントは十分に稼いでいた。

 なので、俺とフィルスは、少なくとも最初のチェックを気にする必要はもう無い。


 「……レイジ様? 今のが目的の店舗だったと思うのですが、お寄りにならなくてもよろしいのですか?」

 「え? あ、ああいや、寄る寄る。スマン、ちょっとぼーっとしてた」


 ドキドキした心を誤魔化すために、現実逃避気味に現状を振り返っていたら、目的の店をスルーしていたらしい。

 慌てて道を引き返した俺たちは、その店へと入る。


 「いらっしゃいませ! ウェルダー商会へようこそ。冒険者の方ですかな? 本日は、どのようなご用向きで?」


 俺たちが店へと足を踏み入れると、小太りで人のよさそうな男性が、満面の笑みで話しかけてくる。


 「ちょっと、旅に出ようと思ってまして。必要なものを色々と買い揃えるために」

 「おお! そうでしたか。何かご希望の品があれば、こちらでご用意いたしますが?」

 「……いえ、大丈夫です。欲しいものが見当たらなければ、また声をかけさせていただきます」

 「畏まりました。それでは、ごゆっくり」


 確かに頼めば早いだろうが、俺が探すものの多くは、魔導具への改良を前提としているため、下手なことを言って勘付かれると厄介だ。

 今のところ、俺はこの技術を公開するつもりはないが、商人というのは、利にさとい生き物だからな。

 本来なら、遺跡で発見させることでしか手に入らないアーティファクトを自作できるなんて、一体どれほどの利益になるか……見当もつかない。


 店主の申し出を断った俺は、店内をブラブラと見て回る。

 この店はかなり大きく、前の世界のちょっとしたスーパーくらいのサイズがある。

 そうなれば当然、品ぞろえもかなりのもので、見ているだけでも結構楽しめる。

 もちろん、目的のものもちゃんと探しはするが。


 今回俺が作ろうと思っているものは、

 ・魔導コンロ

 ・無限収納バッグ

 ・飲料水生成水筒

 ・魔導チャッカマン

 それから、それに付随するいくつかの魔導具だ。


 まあ、チャッカマンは俺には必要ないが、今回はフィルスが一人でも大丈夫というのを基準にしているので、これも用意する。

 あとはまあ、毛布やテントなども欲しいが、これは無限収納が完成してから改めて買いに来ればいいだろう。

 そして、ここで購入したいものは、そこそこ丈夫で、魔法陣を埋め込める素材のバッグと、同じ条件の水筒がそれぞれ二個。バッグは、口が大きいものがベストだ。

 逆に水筒は、空間魔法で見た目の容量以上保存できるようにするから、むしろ小さい方が良い。

 ダメになると色々と面倒なので、丈夫さを第一に考えていきたいが……


 「ん~、イマイチだな」


 マグバッファー(火属性のバッファローみたいなの)の革やランドウルス(水棲の爬虫類)の革なんかは、悪くはないんだが……やっぱり、耐久性に不安が残る。

 でも、それでもそこそこの値段してるし、満足いくのだとちょっと高過ぎるかな?

 材料持ち込みのオーダーメイドとかできるなら、それが一番安く済むかも?

 デザインはシンプルだから、高いのは素材だろうし。

 自作できればそれが一番なのだが、俺の裁縫スキルじゃ、流石にモンス素材のカバンは厳しいだろうし……


 「これ以上の素材のものは、ぱっと見なさそうですが……」

 「そうだよな~。とりあえず水筒は買っていくとして、カバンはまたちょっと考えてみるか。まあ、本命までの繋ぎで安いの買って、練習がてら一個だけ作ってみるかな。ほんとはカバンも作れれば、それが一番なんだけどな~」


 まあ、ぼろいの一個作っておけば、人前で使う際のカモフラージュにもなるだろうし、無駄にはならんだろう。


 「私も、動物や弱いモンスターの革ではよく作ってましたが、上位のモンスター素材を扱った経験はないですし……」

 「ん? かばんは作ったことあるのか?」

 「え? あ、はい。森では生活に必要なものは、基本自分で作ってましたから」


 ふむ……物は試しか。


 「なら、失敗してもいいから、作ってみてくれないか?」


 モンス素材なんてテキトーに飛んで来ればいくらでも手に入るし、丁度いい。


 「え!? でも……」

 「いいんだよ。素材なんてどうでもいいし、物は試しだ。ダメか?」

 「いえ、それは全然かまわないのですが……」

 「じゃ、買うもの買ったら、さっさと宿に戻ろうか」

 「はい」


 あ、素材といえば、俺が古龍の状態で倒したあの大量のモンスター共はどうなったんだろう。

 あの時は余裕が無くて確認しそびれたけど、ちょっと城まで行って、王様に聞いてみようかな? 迷惑かな?

 もしもらえるなら、わざわざ倒しに行く必要もないし。

 簡易無限バッグできたら聞きに行ってみようっと。

 ふふふ……楽しくなってきたぞ~

 やっぱりこういう新しいものを作るのって、ワクワクするな!!

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