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第六十三話 『大会三日目・本戦第二試合』

 さて、俺の一試合目が終わった後、昼食を挟んで、今は一回戦最後の試合が行われている。

 ちなみに、昼食にはフィルスがわざわざ朝早くに厨房を借りて作ってくれたサンドウィッチを食べた。

 別に特別な工夫もない、なんならマヨネーズなどがない分、味は物足りないはずのものだったのだが……なんでかそのサンドウィッチは、今まで食べた中で一番おいしいと感じた。


 さて、今行われている試合が終われば、次は俺の番。

 一試合目はあっさり勝てたが、はたしてどうなることやら。

 ま、あそこまでさらっと勝てることは無いだろうなぁ……


 「レイジ選手、移動をお願いします」


 試合は思いのほか早く終わってしまったようで、早速スタッフが迎えに来る。


 舞台へ上がると、相も変わらず元気な観客たちの声が出迎えてくれた。

 フィルスたちの席の方を見てみるが、そこは相変わらずの空席。

 ……何かあったのか? 杞憂に終われば良いのだが……

 とにかく、今は目の前の試合に集中しよう。

 これが終われば帰れるのだし、さっさと勝って帰ろう。

 相手選手は……細身のおじさんか。魔法使いだろうか。

 いや、腰にレイピアみたいなの下げてるし、スピードタイプの剣士か?


 「さあ、続きまして二回戦目の第一試合!! 時間も押してるので、巻きで行きたいと思います!! そんなわけで、先ほどしたばかりの選手紹介は無しで、早速試合をしていただきます!! 両者とも、準備はよろしいでしょうか! それでは、移動をお願いします!」


 ふむ……紹介は無し、と。

 俺は相手の名前も知らんのだが……まあいいか。俺も急いでいるしな。


 「それでは――――試合、開始!!」


 俺たちが移動を済ませると、早速試合開始の合図が、会場中に響き渡る。


 さて、まずは様子見かな。

 一応、軽めの準備だけはしておくか。


 「我は天駆ける夢幻の疾風――――"天乱走歩(てんらんそうふ)" 、風よ、尖鋭せんえいなる刃となりて、我が手に宿れ――――"アイレスパーダ"」


 「――――ザルニーツァ」


 俺が詠唱を行っている間、相手も詠唱をしていたようで、相手の体に電気のようなものがまとわりつく。

 自身に雷を付与ってことは、スピードタイプか?


 俺が相手の次の動きに警戒を強めたその瞬間、相手の姿が視界から掻き消える。


 なに!? どこに――――


 そして次の瞬間、俺は右側からの凄まじい衝撃を受け宙を舞っていた。

 まさかここまでとは思わなかった。これは出し惜しみしていたら時間が掛かって、むしろ手の内を探られかねない。

 それに今は、一刻も早く帰って事情を確認したい。

 そう考えた俺は、吹き飛ばされながらも呪文の詠唱を始める。


 「森羅は流転(るてん)し、静寂は彼方へと消ゆ。万象は理を喰らい、混沌へと回帰する。我は常世(とこよ)の闇を統べる者なり。我は浄土(じょうど)の光を統べる者なり。崩壊よ! 光溢れる天を穿(うが)て! 破滅よ! 闇を覆いし地を砕け! (くら)く清らかなる現世(うつしよ)よ。今、(ゆが)み崩れて永劫の虚無(ゼロ)となれ――――"万壊(ばんかい)"」


 俺は最低限、声を出すことだけは阻害されぬように防御をし続け、詠唱を完了させる。

 左腕がもげたが、気にしたら負けだ。どうせ放っておけば治る。

 そして魔法を発動させた瞬間、空には黒雲が立ち込み、大地は裂け、そこから火柱が立つ。

 そこらじゅうで爆発が起き、火をまとった竜巻が暴れ、地表から溢れ出した泥水が渦巻き、天より雷が落ちる。


 俺が今使った万壊という魔法は、火・水・風・土・光・闇の六属性全てを用い、あらゆる自然の災厄を起こすという、凶悪極まりない魔法だ。

 もちろんその分魔素の消費も激しいが、俺にとっては微々たるものだし、使ったそばから回復するので問題はない。

 ちなみにこの魔法、各属性の適性がSランク以上でなければ発動させることすら困難な超高等魔法のため、使えるものはほとんどいないだろう。

 これは今回用意した中で、最も強力な魔法だったのだが、舞台全てに対して、余すことなく致命打となりえる攻撃ができる魔法がこれしかなかったため、使用することにした。

 本当は目立つので、最後まで使うつもりはなかったのだが、今はフィルスが心配だ。

 もし万が一、俺がグダグダしていたせいで間に合いませんでしたなんてことがあれば、悔やんでも悔やみきれない。

 きっと今度こそ、怒りと絶望により精神が古龍に飲み込まれ、破壊の限りを尽くす化物となってしまうだろう。


 発動の起点となっている魔導具の周囲、半径一メートルの空間には効果が及ばないようになっているので、俺はただ突っ立っているだけだが、流石にもう倒れてくれただろうか。

 俺は魔導具に流し込む魔素の量を最小限に抑え、効果を弱める。

 すると、先程まで暴れ狂っていた魔法が鎮まり、断続的に突風や火柱が立つ程度となる。


 そうして開けた視界の中、相手を捜すと……舞台を囲む結界に風で貼り付けられて、白目を剥いていた。

 相手の戦闘不能を確認した俺は、魔法の発動を完全に停止させ、攻撃を終える。

 すると、すぐに司会の女性が結界内へと入ってくる。


 「しょ、勝者! レイジ選手!! いや~凄まじい魔法でしたね~。これはぜひ、一言コメントを――――ってあれ!? ちょ、レイジ選手!? おーい!!」


 俺は試合が終わったと判断するや否や、ゲートに向かって全速力で走り出す。

 後ろで司会の呼び止める声が聞こえるが、そんなのは無視だ。

 今は一刻も早く、二人の安否を確認しなければ――――


 俺は加速されたままの足で、街中や屋根の上を駆け抜け、ものの十五分ほどで屋敷へと戻ってくる。

 すると、屋敷は随分と騒がしくなっており、入口には何故か、いつもの門番の方に加え、騎士らしき格好の方々が立っていた。

 やはり、何かあったようだ。


 「あの、何があったんですか? フィルスやレティア様は!?」


 俺は門まで駆け寄ると、すぐさま顔見知りの門番の肩を掴み、質問をする。


 「そ、それは……レティア様は無事だ」


 レティア様()、だと? つまり――――


 「フィルスは? フィルスはどこにいる!」


 「一から説明してやるから落ち着け。事件が起きたのは今朝、レティア様達が馬車で会場へと向かう最中のことだった。俺は護衛としてそれについて行っていたんだが、途中、大通りにも関わらず、やけに人気が無くなってな。あまりに不審だったから、一度馬車を止めて、周囲を警戒していたのだが……急に意識を失ってな。目を覚ました時には、路地を入ったところで倒れたレティア様だけがその場に残っていたんだ」


 「……で、フィルスは?」


 「ああ。それでレティア様にすぐに事情を聞いたのだが、どうやら襲撃犯は三人だったらしくてな。異変に気がついたフィルスちゃんは、すぐにレティア様を連れて、その場を離れようとしたらしい。だが、馬車を出てすぐ、後ろで人の倒れる音がして振り返ると、そこには倒れた護衛と襲撃犯。相手もすぐに馬車が空になっていることに気がついて、探そうとしたらしいんだが、フィルスちゃんの方が判断が早かったようでな。すぐにレティア様を目立たない路地へと逃がして、自分は襲撃犯へと、1人立ち向かっていったそうだ。そしてしばらくして戦闘の音が遠ざかって行き、そのまま消息不明。今は領主様の騎士にも協力してもらって捜索をしているが……手がかりは掴めていない」


 ……戦闘音が遠ざかったということは、少なくともその時点では負けてはいなかったということだ。

 死体も見つかっていないのだし、まだ希望はある。


 「現場は……事件の現場はどこだ!」


 「そ、それは、丁度貴族街を抜けたあたりの、服屋の前あたりだとか。路地は服屋と靴屋の間だ」


 「わかった。ありがとう」


 俺はそれだけ聞くと、そのまま踵を返し、事件現場へと急行するのであった――――

後書き書いたのに、ページ戻っちゃって消えてしまった……ぐぬぬ……


さて、GWということで時間はあったので、あと3話くらいは書き終えています。

まあ、一度誤ってページを閉じてしまい、0.5話分くらい書き直し~なんてこともありましたが(笑)

そんなわけで、木曜までは毎日投稿できると思いますので、よろしくお願いします。

ではではー(^^)/

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