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第六十一話 『大会三日目・本戦開始』

GW中で時間はあるはずなのに、作業が捗らないマン。

適度に他にやることがあった方が、モチベが上がるっぽいです(笑)

 さて、昨晩はあまり眠れなかったが、至福の一時であったとだけは言っておこう。

 そんな俺は今、本戦に出場するため、街の中心にある闘技場『ファンデルワッサ』へと来ていた。

 気力は十分。体も問題なし! ……まあ、魔素が不安定なのは変わらないが、それは仕方ない。

しかし、今朝の頬をほのかに赤くしながら笑顔で見送ってくれたフィルスは可愛かったな……ふふふ……


 「な~にニヤついてんだレイジ。これから本戦だっていうのに随分余裕じゃねえか」


 「へ? あ、グライツさん」


 不意にかけられた声に振り返ると、そこには呆れ顔のグライツさんが立っていた。

 どうやら今の緩み切った顔を見られてしまったようだ。

 まあ、会場入り口前で突っ立てそんな顔をしている俺が悪いのだが。


 「おう。無事本戦に勝ち上がってきてくれたようで一安心だ。どこで当たるかわからんが、俺と戦うまで負けんじゃねえぞ?」


 「ええ、必ずあなたを負かしに行きますよ」


 「ははははは! いいね。そうでなくっちゃな。こりゃあ、ますます楽しみになって来たぜ」


 「できれば一回戦とかで当たってほしいですけどね。その方が変なプレッシャーとか感じなくて済みそうですし」


 「へっ! そんなプレッシャー感じるようなタイプじゃなさそうだがな、お前さんは」


 「そうでもないですよ。俺だって人並みに緊張したり不安になったりします」


 「そうかねぇ……ああそういやお前さん。予選の決勝は随分あっさり勝ったそうだな」


 「え? ええまあ。あそこまで勝ち上がって来たにしては、そこまで強くなかったですし」


 「はははっ! ま、そうかもな。奴は卑怯な手を使ってくることで、一部では有名な奴だ。お前はそれを避けられたから楽だったんだろうさ」


 ああ、じゃあやっぱりあの握手の時に感じたあの魔力はそういう事だったのか。


 「そういう事でしたか。それなら納得です。試合前に握手を求められたのですが、嫌な感じがしたので断ったんですよね」


 「間違いなくそれだな。奴とその前に戦った二人に話を聞いたら、妙に力が入らなくて、試合後に検査したら魔力がえらく乱れていたらしい。そいつらは、試合中にやられたと思ってたみたいだが、おそらく仕掛けられたのは試合前だったんだろうな」


 魔力、ね。それなら、俺はもしかしたら食らっても平気だったかもな。


 「ま、もうどうでもいいですけどね。終わったことですし。さて、それじゃあそろそろ行きましょうか」


 「そうだな。話なら控え室でもできるしな。こっちの控え室は個人で用意されてるから、話も聞かれる心配もない。準備とかあるなら遠慮しとくが、よかったら始まる前に遊びに行ってもいいか?」


 「ええ、いいですよ。特に何もないですから」


 「やったぜ。それじゃあ、また後でな」


 そう言って会場内に走っていくグライツさん。

 その様子はまるで子供のようで、いい歳の大人がと、思わず突っ込みたくなる、が……ブーメランになりそうなのでそこはぐっと堪えることにした。





 「レイジ選手――――と、グライツ選手も一緒でしたか。間もなく本戦開会式が執り行われますので、出場選手の皆様は、舞台入場口までお集まりください」


 中へ入り、受付を済ませた後、控え室でグライツさんとおしゃべりをしていると、あっという間に時間は過ぎ、本戦の開始時刻がやってきたようだ。


 「それじゃ、行くとしますかね。お互い頑張ろうや、レイジ」


 「ええ、もちろん。あ、わざわざありがとうございます。ご苦労様です」


 俺はスタッフの方を労ってから、グライツさんの後に続く。

 さあ、いよいよ本戦。ここからが本番だ。気を引き締め直さなくてはな。





 集合してからしばらくして、スタッフについて会場へと入ると、待ってましたと言わんばかりの歓声に迎えられる。

 視界に映るのは、大勢の観客たち。

 予選ですら結構な人数がいたというのに、本戦はそれに輪をかけて凄まじい数の人が集まっている。

 正面中央にある一際豪華な椅子に座っている初老の真っ白な髭を蓄えた男性が国王なのだろうか。

 まあ、あれだけ目立つ場所に座っていては、暗殺してくれと言っているようなものだし、影武者か何かの可能性の方が高いか。


 「続きまして、国王陛下による、開会宣言です」


 ん? ああ、もう開会式は始まっていたのか。

 俺たちが入ってきたのは、選手入場とか、そういう感じのだったのかね。

 先ほどの豪華な席の方に視線を戻すと、そこにいた男性が、何やら魔導具のようなものを手にしている。

 やはり彼が国王であったようだ。本物かどうかはさておき。


 その後、国王の挨拶やら試合順決めやらはあったものの、大まかな内容は予選とほぼ同じな開会式が終わり、20分後の試合に備え、俺を含めた選手たちは皆、控え室へと戻って行った。

 ちなみに、グライツさんとは、当たるとしたら準決勝になる。

 出場選手は各予選会場から二名ずつの計八名。

 試合は全部で四回で、今日はそのうちの二試合が行われる予定だ。

 予定、というのは、一応試合に時間制限は無いので、終わらない可能性があるからだとか。

 とはいえ、予定した期間中に終わらないのは困るので、よほどの場合は判定で勝負が決まる場合もあるそうだが。

 もっとも、過去に例は無いらしく、本当によほどの場合だけなので心配はいらないとのこと。


 さて、俺の一回戦の相手は確か……ファルガーさん、だったかな?

 会場で見た感じでは、身長2メートルくらいの、マッチョな戦士タイプって感じの男性だったけど……金色の短髪に、藍色の瞳。獲物はバカでかいメイスだったっけ。

 あれで殴られたら痛いだろうなぁ……気を付けよう。


 さて、仮に相手が魔導具を使ってくるとしても、おそらくは身体強化とかの補助系か、簡単な攻撃魔法くらいだろう。

 ならば警戒すべきは近接戦。

 近づけさせなければどうにかなりそうだ。


 一方で、俺が試合で使っていない魔導具は六つ。

 しかし、葬天は手練れ揃いの本戦では使用が躊躇われる。

 ならば実質、残りは五つ。

 試合数を考えると、せめて最初の二戦は、新しいのは一つまでで切り抜けたいところだが……

 切り札の一つは別にして、用意した十個の中で、特に強力なものは三つ。

 そのうちの一つである淵羅は、既に予選で使ってしまった。

 だから使えなくなるという訳では無いのだが、やはり警戒はされてしまうだろう。

 俺は知ってたらつまらんだろうなんてふざけた理由で、他の選手の情報は調べていないが、他の皆は普通に調べてきてるだろうしなぁ……

 ま、俺の場合は予選以外、ほとんどデータなんて無いだろうけど。


 「レイジ選手、移動をお願いします」


 おっと、考えているうちに時間が来てしまったようだ。

 俺の試合は一試合目だったからな。

 さて、本戦初試合なわけだし、せいぜい観客にがっかりされない試合にしなくてはな。


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