表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
135/152

第百三十四話 『フィルスのステータスを見てみた』

 さて、そんなわけでやってまいりました。教会です。

 こっちの世界の教会に来るのは初めてだが……外から見た感じでは、あんまり特別変わった印象は受けないな。

 地球のキリスト教の教会も、だいたいこんな感じだった気がする。

 まあ、こっちには十字架は無いんだけどな。


 「さ、入るよ」


 そう言って、香奈はフィルスの手を引いて行く。

 俺はよくわからんので、ここは経験者にお任せしよう。

 ちなみに、香奈は冒険者協会から出てきたときには既に怒っている様子は無く、普通に話してくれた。

 なぜキレ気味だったのかはよくわからんが、まあきっと何日もお風呂に入れていなかったせいで、ストレスが溜まっていたのだろう。


 教会の中に入ると、そこに広がっていたのはこれまた地球の教会と似たような光景。

 ただ一つだけ違うのが、マリア像の代わりに6体の石像が並んでいることだろうか。

 まあ、6大神を崇めているのだから、当然と言えば当然なのだが。

 にしても……割と似ているな。

 俺は神6人の内2人には既に会っているが、確かにあんな感じの顔だわ。

 やっぱこの世界では、地球に比べて神が身近な存在なのかね。容姿が正しく伝わってるくらいだし。


 「ようこそ、ラキシュの教会へ。本日はどのような御用向きで?」


 中の様子を見渡していると、近くに立っていた神父らしきおじいさんが声をかけてきた。

 といっても、俺にではなく先頭に立っていた香奈に対してだが。


 「あ、はい。こののステータスを見てもらいたいんですけど」

 「そうでしたか。少々のお布施をいただくことになりますが、よろしいですかな?」

 「はい、大丈夫です」

 「では、こちらへどうぞ」


 双方とも、手慣れた様子で会話を済ませ、さっさと奥の部屋へと向かう。

 流石香奈、城で常識を学んだ上で一月も冒険者をやっていただけのことはあるな。うん。


 「ちなみに、冒険者歴はお兄さんの方が長いですけどね」


 不意に横から心を読んだかのような言葉をかけられ、驚いた表情でそちらを見てしまう。

 そこには、半分呆れ顔の梨華ちゃん。


 「いや~、今のは流石に誰でもわかると思いますよ?」

 「む、ぐぬぅ……しかし、どうして今になって皆こんなに……スレブメリナではそんな――――」

 「そりゃ、別にわざわざ言う機会も無かったですし。好きなことして楽しそうだな~キラキラしてるな~って、皆で笑って見守ってましたからね」


 ぐっ……そんな感じで見られてたのか。

 確かに楽しかったし、視野が狭まっていたことに関しては、自覚もあるが……ハズカシイ。


 「お兄さんっていざって時は頼りになりますけど、普段は結構子供っぽいところもありますよね」

 「――――ぐはっ!」

 「まあ、そこが良いのかもしれない――――って、お兄さん? どうかしたんですか? こんなところで膝なんかついて」


 ……無自覚に俺の精神を追い詰めるとは、恐ろしい子!!

 とまあ冗談は置いといて……そこまでわかりやすかったとは。自覚はあったが、まだまだその認識も甘かったというわけか。

 流石に古龍状態だと表情なんて無いから、威厳を欠いたとかの心配は無いだろうが……目上の人間なんかの相手をするときは、気を付けないとな。

 ひとまず、人としての交渉事は完全に他の皆に任せよう。最悪裏から指示すれば……うん。裏方、大事。


 心の中で密かに決意を固めた俺は、不思議そうな顔をする梨華ちゃんに何でもないと伝え、前を行く香奈たちを見失わないように、少しだけ速めに歩くのであった。




 「やはり、お風呂は無理そうですね」


 移動先の部屋で、魔導具を使用して数秒でステータスの確認を済ませたフィルスは、それをサッと紙にメモした後、神父さんにお布施を支払う。

 そして教会に入ってから僅か五分足らずで用を済ませた俺たちは、外に出てきていた。

 もっとありがたいお話だとかお誘いだとかがあると思っていたので、拍子抜けである。


 「それは仕方ないでしょ。フィルスも私達と同じで、魔法より武器とスキルで戦うタイプなんだし、元からダメ元だしね」

 「まあ、私の場合スキルはあくまで奥の手だけど。短期決戦でしか使用できないし、使用後は確実にレイジ様のお手を煩わせてしまうから」

 「いやまあ、俺のことは別に気にしなくていいんだけどな」

 「で、ですが――――」

 「フィルスは血を吸うとき、絶対に正面から首元に噛みつくだろ? だから必然的に体がくっついて、ちょっと役得だしな。だからまあ、あんまり遠慮する必要はないんだぞ? ウィンウィンだ」

 「レ、レイジ様///」

 「はいはいご馳走様。っていうか、こんな街中でいきなり雰囲気作らないでよね! ……見せられてる方の気持ちも考えて欲しいよねまったく……」


 フィルスといい雰囲気で見つめ合ったところで、香奈に注意されてしまった。

 しかし、その後に何やらぼそぼそ言っていたようだが、なんと言っていたのだろうか。いつもなら普通に聞こえるのだが、今は体外の魔素が操れていないせいで、人並みにしか音を拾えないんだよなぁ……


 「そんなことよりさ、他のステータスはどうだったの? フィルス結構強いし、割といいとこ行ってんじゃない?」

 「ふむ。確かにそれは俺も気になるな。元々他人のステータスを見れるスキルに昇華させるために自己ス能力鑑定をとっておいたのだが、なんだかんだまだスキルレベル上がってないし」


 他はなんやかんやでそこそこ成長している中、わざわざ一時期は上げる努力までしていた自己能力診断は、まだレベル9のままだ。

 最近はサボっていたとはいえ、上がってくれてもいいと思うんだけどなぁ……何かトリガーでもあるのだろうか?


 「えっと、私は他の方のステータスは見たことが無いので、高いかどうかはわからないのですが――――」


 そう前置きをしてから、ステータスの記載された紙を俺に渡してくるフィルス。

 どれどれ……

 

 Lv.48

 HP:4720

 MP:7180

 魔術適正:火C・水B・風A・土D・光D・闇E


 ふむふむ……わからん。

 レベルは結構高いみたいだが、如何せん基準が俺なせいで、これがどのくらいなのかが全く分からない。

 横からのぞき込んできている香奈のコメントで判断しよ。


 「おお! 結構高いね!! っていうか、HPもMPも私より高いし。それに風適性Aなら、魔法も結構強いんじゃない? フィルスは元々スピード型だし、相性良さそう!」


 へ~、香奈より高いってことは、割と高い方なのかな?

 香奈は少なくとも、そこらの冒険者よりは強いらしいし。


 「ま、そういう事なら、回復したらフィルス用の風属性の魔導具でも作ってみるか。ちなみに、香奈や里香ちゃんは適性の高い属性とかは無いのか?」

 「えっと、私は4属性全部Bはあるし、火はAだよ。光はCで闇はDかな」

 「私は、土と火がBですが、それ以外は全部Eです……」


 ふむ……Dっていうと、かろうじで使えるって程度だからな。実戦では無いも同然か。

 てことは梨華ちゃんは土と火の、簡単な補助系のが良いかな。元々近接タイプだし。

 香奈は全体的に使えるみたいだから、特異な火を主軸にしつつ、戦闘スタイルに合わせて色々考えてみるか。

 香奈のスキルの……『纏魔てんま』だったかな? は魔力を物に纏わせるっていうなかなかにユニークな感じだし、魔法との親和性も高そうだから、なかなかに楽しめそうだ。

 フィルスは元々の戦い方が結構出来上がってる感じだし、それが大きく変化するようなのは避けた方が良いかな? だとすると属性的に移動補助系と、出が早い中・遠距離系の魔法ってとこかな?


 「レイジにぃ~? 考えるのはいいんだけどさ、せめて宿に戻るかどこか食事処入ってからにしない? このへんは外あっついし。日焼けはもう気にするの諦めたけど、流石にわざわざ外にはいたくないよ。お風呂もお預けなら、無駄に汗もかきたくないし」

 「ん、ああスマンスマン。それじゃあとりあえずどっか探して入るとするか」


 白雪も待ちくたびれてるだろうしな。

 あ、店に入る前に白雪を実体化させてやらないとな。忘れたら拗ねられそうだし、さっさとやっちゃお。流石にそのくらいの魔素は回復してるし。


 そうしてすぐそばの路地で白雪を実体化させた俺は、その間に梨華ちゃんが神父さんに聞いて来た飯屋の多いあたりへと移動するのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ