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第百三十三話 『つっ込まれてキレられて』

 そうして、なんだかんだでさらに3日経ち、護衛任務の目的地であったラキシュ村へと到着した。

 到着前日には、俺も多少回復しており、人の姿をとることができたのは不幸中の幸いだった。

 服は久々に、最初に寄ったソメル村の爺さんから買ったものを着ている。


 さて、ここは砂漠に最も近い村という事もあってか、凄く栄えているわけではないものの、きちんとした防壁があり、冒険者協会などの共同施設も、割としっかりしたものが建っているようだ。

 気温も高く、建物は無骨な石でできたものがほとんど。嫌でも違う地域に来たのだと自覚させられる。

 一応村となっているが、街と言っても過言ではないのではないかと思えるほどだ。

 ニールさんとは到着してまず初めに向かった冒険者協会で、依頼達成の手続きを終え次第別れた。

 最後に、「例の件、よろしくお願いします」と言っていたが、それは大丈夫なのであんなに迫ってこないで欲しかったな。まあ、彼は根っからの商人なので、仕方のないことなのかもしれないが。

 そんなわけで、今は冒険者協会の前。


 「さて、それじゃあしばらくは休養ってことになるのだが、皆したいこととか――――」

 「「「お風呂(です)!!」」」

 (……おいしいごはん)


 お、おう。

 まあ、護衛任務中はあんまり色々好き勝手出来なかったから、湿らせた布で身体を拭くだけだったし、女の子はそうだよな。

 フィルスも最初の頃は、「お風呂なんて私なんかが恐れ多いです」みたいな感じだったが、無事馴染んできているようで何よりだ。

 約一名は希望が違うようだが、まあ白雪は身体を洗う必要は無いしな。

 あれ? でも食べる必要だって無かっt――――


 「何ぼーっとしてるの? 早く宿探そうよ~」

 「あーはいはい。わかったから引っ張るな」


 ま、いいか。白雪は食べるの好きだもんな。好きにさせてやろう。

 あっ……白雪と言えば、あの時貰った白雪説明書、まだちゃんとは読んでなかったな。

 どうせ魔導具製作もできなくて暇を持て余すことになるだろうし、後でじっくり読むとしよう。


 そうしてしばらく歩き回った俺たちだったが、ここは砂漠のすぐそばという事もあり、水を大量に使用する風呂のついた宿は、街で一番高い宿しか無く……


 「お風呂、入りたかったなぁ~」

 「仕方ありませんよ。流石にあの宿は高すぎます。今は良いかもしれませんが、後のことを考えれば、お金を使い切るのは得策ではありません」

 「そうそう。それに、大会の優勝賞金も、結構減ってきちまってるしな」


 結局俺たちが借りたのは、無難な感じの宿二部屋。三人部屋と一人部屋をひとつずつ。

 今はとりあえず、広い三人部屋の方に集まっている。

 食堂も風呂もついていないので、その辺は各自で用意しなければならない。

 まあ、宿の裏庭は好きに使っていいらしいので、料理をするならそこでかな。


 「あ、そういえばレイジにぃさ」

 「ん?」

 「携帯お風呂、持ってたよね? あれ使えないの?」

 「あ~あれなぁ……あれは確かに改良して、魔力での起動もできるようにはしたんだが……スレブメリナ着いて、最初の頃にいじってただけだからからな~。あれに使用している属性に変換した魔力を段階的に流してやらなきゃいけないんだ」

 「っていうと、土、水、火の順でってこと?」

 「そそ。しかも効率とかあんま考慮されてないから、そこそこ高めの適性が必要。まあ一応新規での作り直しだったから、魔素起動の初号機も残ってるけど、そっちは余計に無理だしな」


 学院や研究所で得た知識を使ってみたくて最初の頃に弄って以来、特に必要ないと思って放っておいたのがあだになったようだ。


 「……ちなみに、レイジにぃの言うところのそこそこって、どのくらい?」

 「ん? 全部A以上、かな?」

 「いやいやいや、高すぎでしょ! それって世間一般で言うところの、"一流魔法使い"だからね!? 一属性Aなだけで、第一線で活躍できるレベルだから」


 む? でも、マスターはSランクの属性があったし、S以上じゃないと凄くないんじゃないのか?

 学院では、そういうランクのことは詳しく習わなかったし、興味も無かったからな……このくらいのランクだと、こういうことができる~みたいな話は聞いたが、それも俺にとっては意味のないことだったし。


 「……その顔は、"え? Aって大したことないんじゃないの?"とか素で思っちゃってる顔だね」


 む 、顔だけでわかるのか。流石だな。


 「いい? 魔法の適性は、普通は高くてもせいぜいBまで。Aの人もまあまあいるけど、それは才能のある優秀な人で、きちんと修練さえしてれば半分将来を約束されてるようなもの。そのさらに上の適性Sなんて、もうその属性の魔法を必要とされる仕事なら何でもできるというか、向こうから頭下げてやってもらうくらいの人材なの! 導師とか賢者とか、そういうレベル! だから、エルバルトさんはあんなちっちゃいギルドのマスターやってたけど、ホントはかなり凄い人なんだよ?」


 ほう、そうだったのか。

 マスターも周りもあんな感じだから、そこそこ強い魔法使いくらいの認識だったわ。

 だから俺の魔法適正聞いて、皆あんな目ん玉ひん剥いてたのか。今更ながら納得だわ。

 というか、よく香奈がそんなこと知ってたな。


 「……私と梨華は、お城でそういう一般常識はある程度教えてもらってたからね。まあ、途中でレイジにぃに連れ出されたから、全部じゃないけど」


 あら、それは悪いことをしちゃったかな?

 というか、さっきからあまり心を読まんで欲しいのだが。なんでそんなわかるんですかね。


 「連れ出したのは別に気にしてないというか、座学はあんま好きじゃないから、正直嬉しかったよ? それから、レイジにぃは慣れると結構わかりやすいからね? 表情はそんな激しく変わらないけど、変化そのものは凄く正直だから」

 「む、そうか……気を付けよう」


 とはいえ、師匠からも「お前嘘を吐く才能欠片も無いわ! もう鍛えるのやめ!」と言われたくらいだしな。

 それがそういう理由からなのだとしたら、無理かもしれん。

 なにせあの師匠をもってしても匙を投げたくらいなのだからな。俺如きにどうこうできるはずもない。

 当時は師匠だからわかるだけと思っていたが、こっちに来てからの経験で、もう流石にそうじゃないことも自覚している。

 でもそれにしたって、お前は表情読み過ぎだろう。ちょっと怖いくらいだわ。


 「別にそのままでも良い気がするけどね。まあそれはいいとして……それで、私は無理そうだけど……梨華も魔法の適性は私より低かったし無理だよね。フィルスは?」

 「ごめんなさい。私は生まれてこの方、自分の魔法適正というものを見たことが無くて……」

 「……へ? 教会は? 行ったことないの?」

 「はい。あ、いや、うん。私はその……ずっと森で暮らしてきたから、そういう場所には……」

 「いやいやいや、それは知ってるというか! なんか嫌なこと思い出させちゃってごめんね!? でもそうじゃなくてね……レイジにぃ、フィルスを教会に連れて行ったことは?」

 「ん? そういえば一度も無かったな」


 そもそも教会なんて、下手に称号を見られたら面倒だからって、意図的に避けてたくらいだしな。

 まあ、学院で簡易的にステータスを見られた時は大丈夫だったし、今ではそこらの教会にあるものでは、名前と魔法の適性、それから各種能力値くらいしか見れないって分かってるからいいんだけど。

 ヤバいのは、もっと細かく見れるっていう各国首都の大教会と王家のみが保有するヤツだけだ。

 それにほら、フィルスは獣人だからな。下手に連れて行ってひどい扱いを受けたらまずいだろうと思ってな。


 「はぁ……そういえば、レイジにぃは自分で見れるから必要ないんだったね。ならそういう発想に至らなくても仕方ないよね、うん。というか、私もなんで今まで気が付かなかったのか……一緒に結構仕事もしてたんだけどなぁ……」

 「……何を小声でぶつぶつ言っているのかわからんが、そんなに落ち込まんでも、気になるなら見に行けばいいんじゃないか? ここはそこそこの規模の村だし、たぶん教会くらいあるだろ」


 学院で軽く聞いた話だと、教会の人間はどんな相手にも差別なく平等に接するらしい。

 魔法に関係なかったのであまり詳しい話は聞かなかったが、まあたぶん大丈夫だろう。

 そのせいで、権力を笠に着て威張り散らしたい貴族なんかからは、ずいぶんと嫌われていたりもするらしいが。


 「……いやまあ、そうなんだけどね……ああもうわかったよ! そうですその通りです!! 見に行きますよ!! そうと決まったら場所の確認だね!! ちょっと聞いてくるからここで待ってて!!」


 なぜかキレ気味でまくし立てて、冒険者協会の建物内へと再び入って行く香奈。何をそんなに怒っているのか……

 そういやどうでもいいけど、協会と教会って、略称一緒でマジでわかりにくいよな~……どうにかならんのかね?


 そうして俺は、背中に注がれる梨華ちゃんの呆れ気味な視線に気付くことも無く、そんなどうでもいいことを考えながら香奈が出て来るのを呑気に待つのであった。

土曜に誕生日をぱーっと祝ってたら、執筆時間がその分減ったので投稿遅れるかもです←

スンマソン

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