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第百十六話 『王様は、なかなか良い目をお持ちなようだ』

 「失礼します」

 「あ、レイジさんですよね? この度は……とんだご迷惑を……ん?」


 俺が部屋へと入ると、フィルスたちはまだ先ほど座らせたソファーで眠っており、王様とランデルさんが出迎えてくれた……のだが、なんだか王様の様子がおかしい。

 俺を見るなり、なんだかいぶかし気な視線を向けてくる。

 視線の先は……胸?

 胸なんかに何が……いや、まさか……魔核か?

 俺が試しに体内の魔核をずらしてみると、王様は一瞬驚き、それを視線で追った後、慌てて俺の顔に視線を戻す。

 これは……間違いないな。

 ってことは、最悪この人には、古龍のことがばれたと考えて良いかもしれないな。

 しかし、なぜわかったのだろうか……何か特別な能力でも持ってるのか?

 でも、ヒト族に固有スキルは無かったはずなのだが……


 「ああいや、失礼。えっと……ランデル伯爵。申し訳ないが、少し席を外していただいてもよろしいでしょうか?」

 「? ええ、わかりました」


 王様の言葉に、何も気づいていないランデルさんは首を捻りながらも、大人しく部屋を出て行く。

 さて、まあこの後の会話はだいたい予想がつくが……まあ、誤魔化すのは無理だろうなぁ……


 「あの……レイジさん? 一つだけ、お聞きしたいことがあるのですが……」

 「ええ、どうぞ。といっても、だいたい予想はできているのですが」

 「では……こほん。あの……あなたは古龍様なのでしょうか?」


 あ、やっぱりそこまでちゃんとわかっちゃってるのね。


 「…………ええ、まあ。そうです」


 俺は困った笑みを浮かべながら、正直に返事をする。


 「ちなみに、どうしてわかったかお聞きしても?」

 「え? あ、はい。私は、ギフト持ちなんですよ。それで、その能力が――――」

 「あ、ストップ。ストップです。あの……ギフト持ち、というのは?」

 「? あ、ご存じなかったのですね。申し訳ない。ギフト持ちというのは、生まれつき特異なスキル――『ギフト』をその身に宿して生まれてくる人間のことです。この現象は現在、ヒト族にしか確認されていないことから、おそらくはヒト族が固有スキルを保有していないことに関係があるのではということで、わが国でも研究が――――っと、今はそれはどうでもいいですね。まあ、そんな感じです」


 は~、そんなのがあるのか。

 でも、今までそんな話聞いたこともないし、結構レアなのかな?


 「で、その私の能力が、魔獣の魔石の位置と色がわかる、というものなのです」

 「色、ですか?」

 「はい。今までの経験からして、おそらくこの魔石の色は、その魔石の属性と深い関係があるのだと思います。そして、古龍様の魔石は、今までに見たことないほどに真っ白で力強く輝いておりましたので、直ぐに同じものだとわかった、というわけです」

 「ふむ……それならまぁ、納得です。でも、一応内緒で人間として旅をしているので、秘密にしていただけるとありがたいです。まあ、ランデルさんを部屋の外に出してから話し始めたあたり、わかっていただけているのだとは思いますが」

 「あはは……はい、もちろんです。私はクリスフェデーレというわけではありませんが、それでも古龍様に対しての一定の信仰心や敬意は持っておりますので。それに、そうでなくとも、人の隠しておいて欲しい秘密を、むやみに言いふらす趣味などございません。あ、いえ、貴方は"人"ではありませんでしたね。ははっ」

 「ふふふ……いえ、人として扱っていただけた方が、こちらとしては嬉しいです。というわけで今後も、この姿の時は基本的に、"冒険者のレイジ"として接していただけると幸いです」

 「……わかりました。完璧にそうできる自信はありませんが、善処させていただきます」


 そうして俺たちは、握手を交わす。

 この王様は、なんだか王様っぽくなくて話しやすいし、いい人っぽいから結構好きかもしれない。

 この国大丈夫か? とか思ってたけど、学院長や王様みたいな人がいるなら、まだ大丈夫かな?

 あ、ちなみに学院長は、結構国に対して発言力があるらしい。

 学院が国にとって重要な場所であるというだけではなく、この国で一番長く生きていて頭も良いからなんだとか。

 王の相談役って感じのポジションみたいだ。


 「それで、古龍さ――――レイジ様は、今後どうするおつもりなのでしょうか? こちらとしては残っていただければとは思いますが、こんなことがあった手前、無理に残れとは言いません」

 「ふむ……まあ、とりあえず、国へ提出する研究への協力は、この国の上が信頼できる人間であるとわかるまでは、申し訳ないですが自重させていただきます。ですが、ランデルさん個人との約束は果たすつもりですから、アーティファクトの解析はさせていただきます。ですので、すぐに出て行くという事はありません」


 俺のその言葉に、国王はホッと胸を撫で下ろす。

 だが、安心するのはまだ早いぞ王様よ。本題はこの後だ。


 「それから――――仲間も学院に通いたいと言っていましてね。私も学院の様子はしばらく見ていましたが、まあたぶん大丈夫でしょう。ですので、もしそちらが学費などを融通して下さるのでしたら、それへの対価としての研究協力やら私個人の製作物を提供するくらいは……してもいいかな~と――「よろしくお願いします!!」――あ、はい」


 俺が言い切る前に、目を輝かせて食いついて来た王様。

 ……どんだけ協力して欲しかったんだよ。いや、いいんだけどさ。


 「ただし! それも一応、信頼できる者の手に託したいので、今度この国のお偉方が集まる場などに、招待していただけると助かります。そこできちんと、見極めたいと思いますので」

 「畏まりました。では、こちらでそういったイベントを企画させていただきます。皆予定もあるので、全員参加は難しいと思いますが、なるべく早いうちに、より多くの者が集まるようなものを考えておきます」

 「よろしくお願いします」


 それから俺は、フィルスたちが起きるまでの間、もうしばらく国王と話をした。

 そうして皆が起きて、異常が無いことを確認すると、ずっと別室で待機させてしまっていたランデルさんと共に、彼の屋敷に帰るのであった――――


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