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ゴルフのそのき  作者: 園木まさ


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21/21

第21話 いざ!U-6世界ジュニア日本代表決定戦へ①

マサ(父) 35歳

カズ(息子) 4歳11か月


 いよいよ、目標とする「世界ジュニア日本代表選抜大会」が明日へと迫った。今日は移動日だ。大会が開催されるのは、千葉県市原市にある「ムーンレイクカントリークラブ鶴舞コース」だ。今日はまず新幹線と電車で空港に行き、飛行機で羽田空港に飛び、羽田空港付近からレンタカーで試合会場近くのホテルに移動する。そして、一泊してから翌日の試合に臨み、試合後、羽田空港近くに戻って一泊してから九州に帰る、という行程だ。


「おお!しんかんせん!」

「うん。新幹線だね。かっこいいね」

「そういえば、私も新幹線に乗るのなんて、久しぶりね」

 カズは小さいころから車や電車の本が大好きだ。「ガタンゴトン」と音がなる本をよく見て遊んでいた。明日に控えた試合のことなんかより、夢にまで見た新幹線との初対面に興奮している。

 興奮するカズの近くで、熱心に新幹線の写真を撮っている人がいる。いわゆる「鉄オタ」というやつだろうか。世間では、「オタク」というと少々煙たがられるフシがある。しかし、自分も「そっち寄り」な傾向があるからか、自分ではそうは思わない。三つ子の魂百までということわざもある。子どもの頃、純粋に好きだったものを大人になっても好きでいられるということなのだから、それはすごく幸せなことなように思う。私自身は、車や電車といった乗り物系への興味関心はほとんどなくなってしまったが、一方で、小さいころから好きだった戦隊モノやら仮面ライダーなんかを見ると、未だに「カッコいい」と思ってしまう。最近は各地に「ご当地ヒーロー」を名乗る中身はおじさんたちがたくさんいるのだが、思わず応援したくなってしまう。カズの乗り物好きは、いつまで続くのだろうか。そして、ゴルフという競技との付き合いも、いつまで続くのだろうか。いずれにせよ、好きなことを好きなまま生きてほしいと思うし、何らかの「オタク」になるのであれば、思い切ってなればいいと思う。「ゴルフオタク」を公言しているプロゴルファーだって、いるじゃないか。

 

「ああ!みてみて!とんでる!とんでるよ!!」

「飛んでるね。かっこいいね。なんであれで飛べるんだろうね」


 続いて、飛行機だ。そういえば、自分も確かに生まれて初めて飛行機を見た時は興奮したものだ。物心ついて記憶に残っているのは、小学校低学年のころだろうか。初めて乗ったJALの飛行機。飛行機内でおもちゃの飛行機をもらったのを覚えている。どこで何をしに向かったのかは覚えていないのに、飛行機に乗ったことと、もらったおもちゃを覚えている。不思議なものだ。遠目に見た飛行機の機体を思い出しながら、手に持った飛行機のおもちゃを空想の大空へと飛び立たせていた。 今回はJALの赤い模様じゃなくて、青い模様の描かれたANAの飛行機に乗る。飛行機に乗ってからも興奮冷めやらぬ様子のカズ。窓の外を見つめながら、目がキラキラと輝いている。

 いよいよ離陸だ。


「おおお!とんだぁ」

「シーッ。静かにね」


 ゆっくりと旋回し、雲を突き抜けていく。あっという間に雲の上だ。


「たっかーい。くものうえ」

「もう雲の上だね」


 離陸すると、カズは静かになった。騒ぎ立てて周囲に迷惑になったら注意しないといけないかとも思っていたが、意外にも、じっと窓の外を見つめている。しばらくすると……やっぱり寝ていた。乗り物に乗るとすぐ寝てしまうのは、どうやら父親の私譲りらしい。私もすぐに眠くなってきたので、眠った。


「もうついちゃった」

「寝ている間に着いちゃったね」

 カズが寝ている間に、飛行機はいつの間にか羽田空港に到着した。着陸の瞬間に起きたカズは、楽しみにしていた飛行機の旅があっという間に終わってしまったことに少しがっかりしている様子だ。

「帰りも飛行機だから、楽しみだね」

「うん!」

「よし、次はレンタカー屋さんに行こう」


 さて、新幹線と飛行機で、順調にここまでやってきたが、実はここからひとつの重大なミッションがある。羽田空港からは、レンタカーの行程となる。運転するのは当然私なのだが、正直、車の運転はそんなに好きではない。羽田空港付近のようなごちゃごちゃしたところを運転するのは、できれば避けたいところなのだが、ここから電車で子どもを連れ、さらに加えてキャディバッグと旅の荷物を運びながら電車で移動するのは極めて困難と判断した。

「いやー、車多いなぁ」

「気を付けて運転してね」

 普段は九州の田舎道しか通っていないので、ほとんど渋滞すらしない。それに比べると、ずいぶんとごみごみしているし、慣れないレンタカーなので、運転しにくいと感じる。カーナビの言うとおりのルートしか進めないが、そのルートを保持することすら難儀に感じてしまう。東京の道を運転するのは、それこそ10年ぶりくらいだろうか。車線変更のタイミングが難しい。

「後ろの方、見ていてね」

妻に車線変更のタイミングで左後方を注視するようお願いする。

「くるまいっぱい!」

 カズはたくさん車を見ることができるので、かえっていつもの道よりも楽しそうだ。


「ふう、アクアラインに乗ったから、もう大丈夫かな」 

 ごみごみしたルートを抜けて、アクアラインに乗った。

「ほら、海の上だよ。カズ」

「おおお!!」

 カズにとっては、初めての東京湾と、大きな橋だ。今日は飛行機に乗ってから、色々と初めての経験ばかりで楽しそうだ。目的はゴルフの試合だけれど、何だかんだでそれ抜きでも楽しい旅になっている。

 アクアラインを進んで木更津当たりを通り過ぎると、だんだん交通量も減ってきて、九州自動車道と変わらない感覚になってくる。高速道路を降りれば、もうそんなに交通量も多くない。ゴルフ場の近くは、案外何もないものだ。レンタカー店から出発して、約1時間ちょっとの運転を経て、本日宿泊するホテルまでたどり着いた。何とか選手を無事に送り届けるというミッションを達成した。


 ホテルに到着すると、まだ日が暮れるまで少し時間があった。本日宿泊する予定のベルセルバホテルは、ゴルフ場に併設されたホテルだ。通常のホテルでよかったのだが、意外にも、ゴルフ場併設のホテルでも宿泊代はそう変わりなく、こちらを予約した。ゴルフ場併設のホテルに泊まるというのは、初めてのことだ。

「すみません。ホテルに宿泊するだけなんですけど、パター練習だけ少しさせてもらえますか。明日、近くのゴルフ場で子どもの試合なもので」

 断られるかもしれないが、一応尋ねてみた。

「はい。大丈夫ですよ。どうぞ」

「あ、ありがとうございます」

 カズとパターとボールだけを持って、パッティンググリーンに行く。先日のBSカントリークラブでの最後のラウンド。パターがもう少し上手になれば、もう少しスコアを縮められそうだった。付け焼刃かもしれないが、最後までやれることはやっておきたかった。

 日が暮れるまでのわずかな時間のパター練習を終え、夕食を済ませると、早めに就寝することにした。明日はカズの5歳の誕生日。新幹線に始まり、初めてづくしの一日を終えた。明日、いよいよ、人生初めての試合へとティーオフする。

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