40.5話 共有と実行
これは、ネクスが獣人たちを救う少し前、
念話により、頼み事を伝えた後、
クロとイサキの話である。
クロとイサキはネクスと別れた後、2匹とも宿屋の中で休んでいた。
これは、ネクスが獣人の子たちと接触し、彼らから得た情報をクロとイサキに念話で伝えた後の出来事である。
---クロ視点
「とりあえず、クロは事情は後で話すが、地下にいる俺の上で待機してくれ、で近くに城壁があると思うからその外である程度の影を展開して待っててくれないか?」
「うん。分かったけど、どうして、私の影を?」
念話でのやり取りと言うこともあり、ネクスの意図が読めなかったクロは問いかけていた。
「まあ、簡単に言うと、俺が今使えるスキルは元々クロのスキルだ。その関係性を活かして簡易的な移動を可能にしようと思ってな。」
説明を聞くが、クロは疑問しかなかった。しかし、今は緊急時ということもあったため、追求はしなかった。
「な、なるほどね。で、あと1つはどうするの?」
「残りの1つだけど、さっき話した獣人の子たちが3人いるんだが、その子たちと合流するように場所を指定した。そこで落ち合って欲しい。」
ネクスは、クロと念話する前、獣人の子たちにはあることを伝えていた。
ネクスが小屋に突入したら、すぐにその場から離れること。
クロのいる方向に向かうように伝え、シャドウウルフがいたら、仲間だから合流すること。の2点を伝えていた。
「うん。分かった。じゃあ、影を展開しつつ、その獣人の子たちと合流したらいいんだね!」
クロは再確認を行っていく。
間違いがないと判断したクロは、「じゃあ今から動くね」を一言伝え、念話を切る。
そうして、クロがまず向かったのは、影の中に入り、目的地から近い影を使ってその場に現れる。
「ここでいいかな?見た感じこの下あたりにネクス様はいるみたいだし、」
クロは目を凝らし、周囲に残るネクスのAOを確認した。
確認を終えたクロは、獣人の3人を待つため、屋根の上に登って辺りを見回しながら待っていた。
それからすぐのこと、
「おーい」
建っている家の屋根を走り抜けてこちらに向かってくる影があった、その影は3つあり、その姿を見たクロはすぐにネクスの言っていた獣人たちだと判断する。
「君たちが、ネクス様の言ってた獣人たち...だよね?」
クロは初対面だったこともあり、ふと心配になる。
「うん。その獣人で合ってるよ!」
返答を聞き安心する。
「じゃあ、今からこの城壁超えるけど行けそう?」
「うん。これくらいなら飛び越えられるから大丈夫だね」
ネクスに言われた2つ目の目的地へと、獣人たちを連れて向かうのであった。
そうして、獣人たちを連れて目的地へと到着すると、影を展開し維持を行う。
やがて、ネクスがスキルを行使し、自身とクロの影を繋げワープと同じ原理で移動してくるのであった。
---イサキ視点
クロとネクスが念話での話を終えると、次にイサキに対して話をもちかけるネクス。
イサキも自身に向けて話しているのだと、聞こうとするが、なんて言っているのか、分からない。
しばらくして、話を終えたであろうネクスは、急いでいたのかすぐに念話を切った。
「キュゥ〜〜」
話が終わったと同時に、イサキは悩んでいた。
言葉が分からない。ネクスの力になりたいけど言ってることが分からなければ力になれない。
その愛らしい人形のような見た目で両手の平を顎に乗せて、考えていた。
すると、あることを思い出す。
それは、イサキが進化をした直後のこと...
「Kスキルが早熟になりました。」
AIが語りかけてくるような声が、頭の中に響いた。意味は分からないけど、理解はできた。
“早熟”
イサキは目を瞑って頭をフル回転させる。
ネクスの元へ向かうと決めたあの時からの数日、人々とのやり取りを思い出し、言葉を切り取っていく。
単語、挨拶、簡単な受け答え。了承と拒否。そして、状況に応じた言葉の使い方。
そうして、刻一刻と時間が経っていく中、約30分前後過ぎた頃、イサキは目を開け整理する。
「イサ〇は、こ〇〇ら都〇の門へ向かってその〇〇山を2つ超えて〇〇い。そこ〇周り〇魔物〇気付かれな〇〇〇にAO〇ある〇〇強め〇待機して〇〇い。」
「〇〇たら、その〇〇俺の住む村が〇る。その近くで待機してくれると〇〇る。任せた〇。」
先程の念話で言われた言葉を思い返す。
イサキは、目を瞑っていた間、自身の“早熟”のスキルを利用して、言葉を学んでいた。
そうして、僅か30分ほどの学びだけで、ある程度の言葉を聞き取れるようになっていた。
「キュゥ!!」
ネクスの頼みをほぼ理解できたイサキは、宿を飛び出し、門へと向かい、山を超える事を実行した。
この時、既にネクスは捕まった獣人たちを助け出し、クロと合流するという所であり、その間、イサキは門を抜けた所で今から目的地へ向かうタイミングであった。
しかし、移動する時のイサキの速さは異常であった。
イサキは山を抜けるため走る。
走り続けるうちに、速度が上がっていく。数秒前の自分の2倍、3倍。それでも加速は止まらなかった。
体力も無尽蔵なのか、消耗している感覚がイサキには無く、むしろ、加速していく中、視点が少し高くなり、身体も軽く感じられる。
言葉を学ぶという環境。
急いで向かわないといけないという現状。
スキルにより身体への負担を受ける状態。
それらを全て学びとして受け入れたイサキは、常人を遥かに超える適応能力で進化し続けていた。
そして、山を超え、村の近くにある山に到着する頃には、イサキの見た目は宿にいた頃とは別物になっていた。
四足歩行から二足歩行へ、
身長もネクスの胸あたりまで伸び、
少し、毛が丸っこくふわふわな状態になる。
「うん。到着。」
イサキが一言呟くと、当時の目的を果たすため、AOを少し強める。
そして、イサキの異常な変わり様に、後に合流したネクスが驚いたのは、言うまでもない。
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