17話 予期せぬ来訪
〇前回のあらすじ
冒険者との約束を結び、時が来るのを待つネクス。
村の発展や新たな出会いを糧に成長していく中、
裏では、異種族の村を嗅ぎつけた“ある存在”が、静かに動き出していた―――
---とある森にて
「そうだな、お前が良さそうだ。」
そう呟くと、鈍い音と共に、
目の前にいた狼型の魔物を瞬時に倒す。
「グァァ・・・・」
魔物が倒れ、ピクリとも動かなくなった様子を見て、その存在は、懐から赤色の石のようなものを取り出す。
すると、目の前にある魔物の亡骸に当てて何かを唱える。
眩い光が包まれるのと同時に、
先程倒されていた魔物が起き上がっていた。
先程までとは異なり、
異質なオーラを身にまとい、
鋭い爪や牙が伸びて元の姿からは想像できない姿と化していた。
「よし、これでいい、さて、あなた方がどのような対応をするか、見せてもらいましょうか」
そうして魔物に何か指示をした後にその影は暗闇へと消えていく。
---同時刻、村にて
「ねぇ〜ネクス様〜、眠くないのぉ?」
ハイスライムのスムがネクスと作業をしている中、問いかける。
「え?まぁ、やり始めたばかりだし、まだ眠くないけど、」
俺はスムを横目に見て答える。
(え?というか、スムさん、進んで作業やってくれてるけど、目を閉じていて、手が全く動いてませんが!?)
俺たちは村の拡張のため、
ゴブリンたちから教えてもらったやり方で
木の加工を行っていた。
木を真っ二つに切られた物の細かい枝や棘などを処理している。そんな地味な作業だ。
そんな中、スムが進んで俺との作業に名乗り出たのだが、手を止めて、のらりくらりと進めている。
しかし、その表情は完全に寝ている顔だ。
「あの〜スムさん?もしかしなくても寝てません?」
ため息混じりにスムに確認を行う。
「えぇ〜?起きてるよ〜心配しないで〜」
寝ているのに、口だけ動いている。
(ある意味凄いな、深く関われば俺まで眠くなりそう、そっとしておくか)
俺は諦めて作業を続けた。
「お〜い、ネクス様〜頑張ってやってる?センさんが様子見てきてって言われたから見に来たよ〜」
近付きながら話しかける影がある。
「どう?進捗の方は?」
クロが覗き込んで、俺たちの作業を見に来ていた。
「あ〜スムちゃん、いつも通り寝ちゃってるね、通りで比較的簡単な作業に行くと思ったよ。」
スムの様子を見たクロもため息混じりに答える。
「あ〜、ところでクロ?進捗の方だけど、ある程度作業も終わってるし、戻ろうか?」
(作業のほとんどが俺一人でやったものだ)
「ん〜そうだね!1度、一緒に戻ろっか!」
クロがウキウキで答える。
(そういえば、こうして二人でいるのも最初にこの村に来た時以来か)
クロと2人きりになる機会も少なくなり、ふと思い返していた。
「ねぇねぇ、ネクス様、アレ、なんだと思う?」
急にクロが話しかけたかと思うと、その見つめる先に違和感を感じ同じ方向を見る。
しかし、そこには“なにも”なかった。
「え?何も無いけど、クロには何か見えてるのか?」
クロがう〜ん、と難しい顔になりながらも頑張って伝えようと考えていた。
「見えないかな〜、ほら、あそこ、木と木の間にさ、こっちの様子を見ている魔物がいる」
(付与したスキルに反応がない。なのに、クロには見えている。それだけ潜伏が上手いということなのか)
「ネクス様のスキルに反応しないなら、あの魔物強いってことだね。私から見た感じ、私と同じくらい強いかも」
その言葉を聞き、俺は目を点にしていた。
(え?そんなに強いのか?クロは相手の力量を見る目は俺より上だし、ここは、慎重にならないとな。)
こちらの様子を伺っている以上無理に攻めてこないことを前提に、相手に感ずかれないよう行動をする。
(しかし、まずいな、クロと同等の力となると、他の魔物たちだと、太刀打ち出来ない。)
考えを巡らせ、最悪の事態にならないように動く。
(もし、やるなら、俺が・・・)
自然と手が拳となり力が入る。
そうして、村の中心へと着き、ネクス、クロの2人はセン達と合流をする。
「ネクス様、お疲れ様でした。今回の作業のほとんどが終わったので、この後休憩にしましょう。」
合流した直後、ネクスを見た瞬間、休憩の話を持ちかける。
そうして、俺の耳元で、センが語りかける。
「主様の様子を見ている者がおります。現状は手を出すつもりは無いみたいです。」
「殺気を感じさせないように、自然に紛れ込ませている。隙を見て手を出すかと、気をつけてくださいね。」
早口で伝え終えると、普段通りの様子に戻り、他の現場へと向かった。
(センも感じているのか、他の魔物たちはそんな素振りは見せなかった。なにより、クロよりも細かい部分に気付いていた。センが特別なのかもしれない。)
色々と考えることがある中、考えを1本に絞る。
「よし、難しいことは一旦無しだなぁ。とりあえず、用があるのは俺だってことは分かった。なら、相手になるしかないよねぇ。」
背伸びをして、体を脱力させ、再び力を入れる。
そうして気合いを入れ、ネクスは門を通り、森へと向かう。
「さぁて、どうするか、クロと同じくらい強いらしい上に、狙いが俺。話し合いが出来ればいいけど、殺気を放っている以上、スキルから産まれた魔物ではなさそうだし、無理っぽいな。」
この世界は生き物が命を絶った後、処置をしないとスキルが魔物化し、通常の魔物より強い。
なにより、意志のない暴走する兵器になる。
「今回は殺気を俺だけに放っていた以上それはないし、やる事は1つか、」
ネクスは日に照らされる森の中影の奥へと歩を進める。
俺は歩みを止めて、胸に手を当て自信に意識を集中させる。
「回答、個体名ネクスの申請により、現在の付与されているスキル3つを上書きして......」
「.......完了、スキルの付与を終えました。」
(よし、これが今考えられる最高の組み合わせだ)
考えられる策を考えたネクスは、スキルの上書きを行い変更をしていた。
再び森の中を進む中、体の周りをそよ風が纏う。
「なんだ?視線を感じる。」
視線の感じる先へ目線を送る。
狼の様な見た目。
銀色の瞳に毛が特徴、
人間大の大きさ、
明らかに目が獲物を見つけたソレだ。
(クロの毛並みの真逆の色だなぁ、狼型だし、やりずらいな)
「さて、今の俺がどこまでやれるのか、俺を狙うなら代わりにお前で試させてもらおうかな。」
---風が強まっていく。
(体に纏うイメージで、魔法を想像する。)
ネクスは目を閉じ、イメージした魔法を出す。
「風の戯れ(ウィンドモア)」
刹那、ネクスの体の周りを風が強く覆う。
時間が経つと、風は落ち着きを取り戻し自然と馴染む。
その様子を見ていた目の前の魔物は
何が起きたか分からなかった。
風の勢いが完全に無くなったのを感じたその魔物は、ネクスに向かって攻撃を行う。
(あぁ、なるほど、確かにこれはクロの言った通りだな、たしかに強い。)
目を閉じ、クロの言った私と同じくらい強い、それを感じるには十分すぎた。
移動を感じさせない程の速さ、
攻撃を繰り出すタイミング、
それらが、クロとの戦闘を思い出す。
「まぁ、前までの俺なら根を上げていただろうな。」
目を開け、ふと口角を上げる。
攻撃を仕掛けた魔物は、
ネクスに触れたと同時に、
弾き返され、
森の奥へ飛ばされる。
「ん?」
ふと違和感に気付く、飛ばされた瞬間。
ほんの一瞬、狼の視線がネクスではなく――森の奥へ逸れた気がした。
「いや、気のせい、だよな」
ネクスは自身の違和感より、まず目の前の相手から目を離さないことに注視することにする。
「さて、まだまだ、ここから本気を出すからな、行くぞ。」
ネクスは目を細め、さらに、イメージする。
「重なる力」
頭から顔、胸、お腹、足へと続き、
力が圧縮、強くなっていくのを感じる。
「さて、やろうか。話し合いを。」
ネクスは魔物の方へと向かった。
目的と狙い、それを胸に宿して---
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