奪還:時間
世界が壊されていく。
ゆっくり。
でも確実に。
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時間が、戻る。
進む。
止まる。
全部が混ざる。
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「……これ、持たない」
結衣が言う。
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レンは膝をついたまま。
意識が揺れている。
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観測者が静かに言う。
「まずは一つだね」
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一拍。
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「どれを取り返す?」
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答えは決まっている。
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「時間だ」
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即答。
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時間がなければ、何も固定できない。
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「どうやるの?」
結衣が聞く。
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一瞬、考える。
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でもすぐに分かる。
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「上書きする」
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観測者が少し笑う。
「できると思う?」
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「やるしかない」
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一歩前に出る。
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歪んだ時間の中で。
動きがズレる。
感覚が狂う。
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でも――
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「定義し直す」
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声に出す。
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世界がわずかに反応する。
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「時間は、一方向に進む」
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一瞬。
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ぶつかる。
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見えない“何か”と。
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「拒否」
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冷たい声。
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押し返される。
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「っ……!」
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重い。
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さっきまでとは違う。
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これは“抵抗”だ。
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結衣が叫ぶ。
「足りてない!」
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「分かってる!」
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ただの再定義じゃダメだ。
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“向こうより強い理由”がいる。
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一瞬。
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考える。
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そして気づく。
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「……そうか」
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観測者が少しだけ目を細める。
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「気づいた?」
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うなずく。
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「これは“世界”だ」
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一拍。
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「人間がいる世界だ」
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結衣を見る。
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レンを見る。
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「人間は時間の中でしか存在できない」
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その瞬間。
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世界が強く反応する。
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「だから」
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「時間は、消せない」
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言い切る。
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ぶつかる。
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「再定義」
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声が重なる。
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押し合い。
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でも今回は違う。
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“意味”がある。
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“理由”がある。
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空間が震える。
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時間が、一本に戻ろうとする。
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「……いける!」
結衣が言う。
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さらに押す。
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「時間は一定速度で進む」
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固定。
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「干渉は禁止」
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強制。
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「起点は今」
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確定。
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一瞬。
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完全な静寂。
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それから。
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時間が――
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“戻る”。
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正しく。
前へ。
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「……戻った」
結衣が呟く。
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レンがゆっくり顔を上げる。
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意識が戻っている。
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観測者が小さく笑う。
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「やるじゃん」
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でも。
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まだ終わってない。
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声がまた響く。
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「部分的修正:許容」
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一拍。
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「全体適合:未達」
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冷たいまま。
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結衣がこちらを見る。
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「まだ来るね」
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うなずく。
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「次は空間だ」
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時間は取り返した。
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でも――
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戦いは、まだ続く。




