反転
暗転。
次の瞬間。
「……またか」
同じ場所。
同じ道路。
同じ時間。
でも。
「……違う」
空気が、少しだけ軽い。
「れん」
結衣。
隣。
「さっきと同じじゃない」
「ああ」
うなずく。
黒板が浮かぶ。
『対象数:5』
『制限:同時操作不可』
『観測者:介入可能』
同じ条件。
でも。
「……分かってる」
前回とは違う。
“知ってる”。
⸻
キィィィィィッ――!!
音が来る。
車が滑る。
「動くな」
結衣に言う。
短く。
強く。
「今回は、位置じゃない」
「……え?」
時間がない。
でも。
思考は止まらない。
「ズラしても、結果が修正される」
前回で分かった。
「因果が補正される」
つまり。
「“当たる結果”が先にある」
結衣の目が変わる。
理解していく。
「……じゃあ」
「ああ」
言い切る。
「結果ごと潰す」
⸻
走る。
人に向かわない。
車へ。
「……れん!?」
結衣の声。
無視する。
距離を詰める。
「軌道じゃない」
見る。
タイヤ。
地面。
滑り。
「ここだ」
足を踏み込む。
地面を蹴る。
石を拾う。
投げる。
タイヤの前。
バンッ!!
小さな衝撃。
でも。
十分。
軌道が、ズレる。
ほんの数センチ。
でも。
それでいい。
「止まれ」
その一言。
車が、止まる。
ギリギリで。
接触、なし。
「……は」
呼吸が戻る。
全員、立ってる。
誰も倒れていない。
「……いけた」
初めて。
“完全に回避した”。
黒板が出る。
『判定――』
止まる。
一瞬。
「……来いよ」
睨む。
黒板。
観測者。
全部。
『同時成立』
空気が、変わる。
軽くなる。
「……通った」
呟く。
初めて。
“削除なし”。
⸻
静寂。
その中で。
拍手。
パチ、パチ。
観測者。
あいつ。
笑っている。
「やるじゃん」
少しだけ、本気の声。
「初クリア、おめでとう」
軽く言う。
でも。
目が違う。
遊びじゃない。
「……どうだ」
低く言う。
「お前のルール、いらねえだろ」
観測者は肩をすくめる。
「うーん」
一拍。
「惜しい」
その一言。
嫌な予感。
黒板が、もう一度出る。
『評価:不完全』
「……は?」
空気が、冷える。
下に、続く。
『観測者未満足』
「ふざけんな」
即座に言う。
「条件は満たしただろ」
観測者は笑う。
楽しそうに。
「満たしたよ」
あっさり。
「でもさ」
少しだけ、近づく。
「それ、“面白くない”」
背筋が冷える。
「……何言ってんだ」
理解したくない。
でも。
分かる。
こいつらは――
「ゲームじゃねえ」
言い切る。
怒りで。
「現実だ」
観測者は一瞬だけ止まる。
それから。
少しだけ笑う。
「そう思うなら」
軽く。
「もっと見せてよ」
黒板に、新しい行。
『次試行:条件変動』
さらに。
『観測者直接介入:許可』
空気が、変わる。
前より、悪い。
完全に。
“触ってくる”。
「……次は俺も動くね」
観測者が言う。
笑っている。
でも。
目は冷たい。
「……上等だ」
即答。
逃げない。
「何してきても関係ねえ」
言い切る。
「全部、残す」
結衣が隣に立つ。
距離が近い。
「うん」
短く。
それだけ。
でも。
揺れない。
観測者が笑う。
楽しそうに。
「いいね」
小さく。
「壊しがいがある」
その瞬間。
世界が、また落ちる。




