22 全ては神の思し召し
あれから3年が経った。
私は学んだことを一旦書き留めて整理し、王宮で行なっている治世なども学ばせてもらい、その上でヴァイス殿下や陛下に進言する権利を特権として与えられた。
民の生活を経験したことで……本来ならば知らなくていいことだったのかもしれないが、余りにも心ない政策は改善案を出せるように、必死に勉強をした。
本来ならば行き遅れと言われる年齢になってしまった。身を固めるよりも、私は今の立場に充足感を覚えている。
陛下と意見がぶつかることもある。私の勉強不足も経験不足も確かなこと、時には民の心を無視してもやらなければならない政策もある。
恨まれながら敬われる。それが上に立つ者だと。
民に一時恨まれない政策をしたとして、その後に起こる防げた災害を防がなかったら、結局損をするのは民だ。
恨まれてもいいから、やらなければならないことがある。
そういう意味では、シュヴァルツ殿下はとても王族らしく、それでいながら人心を理解していた方だろう。
ヴァイス殿下は生真面目にすぎる。けれど、私の言葉にも、陛下の言葉にも素直に耳を傾けて考える方だ。
そして、ちょっと私に優しい気がする。なぜヴァイス殿下は婚約なさらないのかしら?
真面目で、優しくて、包容力と決断力があり、頭は柔軟。うん、いい王様になりそうな方だ。
私はこのまま独り身で、官僚の真似事のような人生を歩むのもいいかと思っている。女が侯爵家を継いではいけないという法律も無い。遠縁から養子をとって、その子に私の次の代は継がせればいい。
「リディア」
「ヴァイス殿下」
「すこし、お茶にしないか?」
「かまいませんよ。お話ししたいことが、たくさんあるんですの」
「君、また街へいったね?」
「えぇ、聞いてください。今、市井では……」
ヴァイス殿下と過ごす、この何気ない時間も、私には幸せだ。
一緒にいてとても落ち着ける。良くも悪くも裏表のない方。私が支えていきたい、次期国王陛下。
今はまだ、この心地よい生活に身を委ねたい。
大丈夫、私には生命神様の加護があるもの。
——そう、神様は運命の道筋を知っていて、必要な者に加護を与える。
私は今、23歳。あと10年は、健康で元気な子供が産めるだろう。その時は、その時という事で。
お読みいただきありがとうございました!
明日からの新連載『王太子殿下に真実の愛だと見染められましたが、殿下に婚約者がいるのは周知の事実です』も、よろしくお願いします!




