護衛──8
「痛ぇ……」
頭を抱えるようにしてうずくまったままの弓の男を置いて、ローザたちは歩き続ける。一度だけ振り返ったが、「気にするな」というギースの言葉に従って前に向き直った。
彼らの間では、いつものことなのだろう。
森へと入ると、ルラは冒険者の中で一人、馬車の御者台に乗せられた。歩くのが遅かったわけではない。これは、まだ体力がないだろうと判断されたがための配慮である。
ついでにと、御者をしていた行商人が、馬の御し方を教えてくれた。これで馬車を操ることができるようになった。一人旅になっても、困らないだろう。
木漏れ日がちらちらと踊り、涼しい風が吹き抜ける。小鳥の囀りは煩いほどで、獣の鳴き声は伸びやかに響いていた。
野うさぎ(大きな牙付の肉食魔物)を狩って血抜きをしてギースたち『竜鱗』のメンバーに差し出したところ、すごく誉められた。昼飯は野うさぎ肉の入ったスープを作ることになった。
乾いた木の枝を集め、そこに弓の男──ガロンというらしい──が、火属性魔法で点火をした。
「魔法っ!」
ルラが声をあげると、ガロンは大きな手で頭を撫でてくれる。……撫で方が乱雑すぎて首が痛くなったが。
「魔法ちゃんと見たのは初めてか?」
髭もじゃの顔に浮かべられた笑みは壮絶で、…………いっては悪いが恐ろしい。しかし、その澄んだ碧の瞳は優しく、ルラをとって食おうとしているわけではないことがわかる。
「僕も魔法は一応使えますけど、火属性魔法は使えませんし、さっきはよく見る余裕はなかったので……」
咄嗟に口をついてでたのは、そんな言葉。さっき、とは『荒れ狂う一角獣』の男が魔法を使った時のことである。
本当のことは口が裂けてもいえない。まさか、初っぱなにためにし使ってみた魔法で草原を炎の海にしかけてしまったとはいえない。




