約二か月後
あの「有利が小物のくせに大物でもなかなかないくらいの長時間の巻き戻りを発生させたディストーション」の一日から約二か月後、連休明けの十一月四日から、有利は株式会社ヒュージ・ナレッジ・ジャパンに入社し、総務部総務課で事務担当として勤務する事となった。勿論、それは表向きの肩書きで、本当はヒストリー・キーパーズのエージェント、つまり、簡単に表現すると「現場担当」だ。
例のクソテキトーな採用試験では好成績を収めたらしい。ただし、クソテキトーな上に通常とは大分違う内容だったので、
(本当にいいのかな?)
以前に津幡が提示した内容とほぼ変わりない条件での入社に戸惑っていた。
この約二か月の間、有利は前に勤めていた会社の余っていた有休を消化していたが、既にヒストリー・キーパーズの方にもアルバイト扱いで出勤していた。呼ばれれば総務部へ行き、何らかの仕事かと思いきや食事会だったり、食事会だと思いきや何らかの仕事だったりする日々を送っていた。だから、初出勤とは言え、有利はもうすっかり職場に慣れていた。
(ああ、これ、いわゆる「アットホームな職場です」ってやつだな。体育会系の横暴なやつだな。気をつけないと、雰囲気に飲まれて俺までブラックになる)
慣れてはいたが、警戒もしていた。
警戒しつつも他のエージェントやそうでない人員と過ごすうちに、有利は自分自身の中身は変わらないのに、外側が段々と薄く変化していくのを感じていた。ごくごく薄く薄く、皮膚までにも到達しない程の薄さだ。それはマヨの乗ったピザを食べた事が関係しているかもしれない。好みではなかったし、マルゲリータの方が好きだと感じた。もしかすると、みんなでカラオケに行った事も原因かもしれない。前日に突然知らされ、石川から出された「これとこれとこれとこれとこれとこれ歌ってねー」というブラックな宿題を必死にこなし、集合時間直前に何とか全て覚え切ったというのに、結局は時間が足りずに「これとこれとこれ」しか歌わなかった。他にもあるかもしれないが、きっとあるのだろうが、その全部が有利をほんの少しだけ変化させた。
ディストーションは毎日発生する訳ではない。時間の歪みがそんなにポンポン発生しても困る。全人類、いや、生きとし生けるもの全てが困り果てる。そして、日本、しかも有利たちの担当の関東周辺のみとなると、数か月の間が空く事すらある。
そこで、エージェントたちは普段は名刺に書かれている肩書き通りの仕事をしたり、学校や別の職場に通いつつ、呼び出された時にだけ活動したりしている。有利のような内勤組は「下痢なんで」と嘘をついて休みを取る必要がないので、遠い場所へ行かされる事もある。
「ヘリで移動する事もあるんだ」
表向きは総務部長である加賀が、難しい顔で愚痴っていた。
有利がその加賀と解決した事件については、機会があれば語られる事だろう。
稚拙な文章でわかりにくい内容にも関わらず、
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
ちなみに、有利が紹介しているライフハック的なものは
正しい知識によるものではないこともあるので、
マネをなさる場合は自己責任でお願いします。
続編「ヒストリー・キーパーズ2」もあります!
そちらは若干空気が軽いので、読みやすいかもしれません。




