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転生したら推しのラスボスキャラに!? 推しを救うためにストーリー改変します!  作者: 妙原奇天


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第6話 公爵の財布を断て――影の金脈戦

 評判戦の第一幕は終わった。

 だがレーベン公爵は倒れていない。むしろ、噂の根を暴かれたことで、次はより深い“資金戦”へ移行するのは明らかだった。


 ――金は声を買う。

 声は噂を生み、噂は人を動かす。


 それを止めるには、財布の底を切らねばならない。


クロエの報告


 夜更けの執務室。

 机の上には蝋燭が三本。地図の上に、クロエが並べた小さな石が光と影を落とす。


 「殿下。レーベン公爵の資金は三つに分かれています」

 「言え」

 「ひとつは、鉱山。銀を産する山を押さえており、王都の鋳貨の三割は彼の手を通ります」

 「なるほど……」

 「ふたつ目は、交易税の抜け道。港湾で“荷札の書き換え”をして、密輸に近い利益を得ている」

 「三つ目は?」

 「祈祷所の寄進金。信徒の財布を吸い上げ、それを“正義の戦”のために使っている」


 私は地図を睨む。

 「鉱山と港湾は力で押さえねばならん。祈祷所は、声で潰せる」


 クロエの唇が楽しげに歪んだ。

 「殿下の好物、“声の戦”ですね」


推しとの作戦会議


 翌朝。訓練場にアレンを呼び出した。

 彼はすでに木剣を振っていたが、私を見ると息を切らしながら駆け寄ってくる。


 「殿下、もう動くんですね」

 「ああ。レーベンの財布を断つ」


 私は彼に木炭で書いた紙を渡した。

 「鉱山の管理は粗雑だ。坑夫たちは酷使され、賃金は遅れがち。だからこそ“声”を奪われやすい。だが君が行けば違う。庶民の生まれである君の言葉は、坑夫たちの耳に届く」


 アレンの目が大きく開く。

 「俺が……坑夫たちに?」

 「そうだ。彼らを味方につけろ。剣より強い盾になる」


 アレンはしばし黙り、やがて力強く頷いた。

 「わかりました。命をかけます」


 彼の眼差しが、昨日よりさらに強い光を帯びていた。

 ――推しが、味方として成長していく姿。

 この瞬間を見られるなんて、前世のオタクとしては涙が出そうだ。


リリアナの決意


 午後。王宮の回廊にて。

 リリアナが私を呼び止めた。


 「殿下、わたくしもお供します」

 「君が?」

 「祈祷所に残された“古い寄進の記録”を洗いたいのです。公爵派が嘘を仕込むなら、必ず隙がある。声を封じられてきた女たちの証言も集めます」


 その表情は、数日前の怯えた少女とはまるで別人だった。

 私は微笑みを返す。

 「君の声が、祈祷所の嘘を焼くだろう。任せた」


鉱山の現場へ


 数日後。

 アレンは騎士見習い数名とともに、北の鉱山へ赴いた。

 坑夫たちの顔は煤にまみれ、目には諦めが濃い。

 「どうせ俺たちの声は届かねえ」と吐き捨てるように言う老人。


 アレンは彼の前に立った。

 「俺も庶民の生まれだ。父は鍛冶師で、毎日炉の前に立っていた。汗を流して得る金が、どれだけ大事か知っている」


 坑夫たちの視線が集まる。

 「王子殿下は、皆さんの賃金を保障する仕組みを作ろうとしています。俺はそのために来た。信じてくれなくてもいい。けど、声を出すのは今だ」


 沈黙。

 だがやがて、若い坑夫が拳を突き上げた。

 「言ってやろうじゃねえか! もう黙るのはごめんだ!」


 声が連鎖する。坑道に響く怒声が、山の空気を震わせた。

 アレンは笑みを浮かべた。

 ――彼は本当に、推しであり、光だ。


世界の修正力の逆襲


 同じ夜。

 王都の空に、再び“ひび”が走った。

 今度は白ではなく、赤い稲光を孕んでいた。


 「……また来るか」


 部屋の中に、ねじれた影が現れた。

 人の形を模しながらも、顔は存在せず、口だけが開いている。


 《悪役は悪役に戻れ》


 声が頭の中に直接響く。

 私は剣を構えた。


 「私は戻らない。推しを救う。それだけだ!」


 影が襲いかかる。

 そこへアレンが駆け込み、リリアナが祈祷の歌を放つ。

 三人の力が重なり、影を押し返す。


 しかし、今回は容易ではなかった。

 影は分裂し、壁や床に広がっていく。

 「殿下! このままでは……!」


 クロエが飛び込んできた。

 「殿下! 影の根を“財布”に結びつけてる! 資金の流れを断てば、修正力も弱まる!」


 「つまり、財布を切ることが――世界への反撃にもなるのか」


 私は深く息を吸い、宣言した。

 「ならば次は、港を押さえる。金を断ち、修正を止める!」


決意


 戦いの後、アレンとリリアナ、クロエと共に月下に立つ。

 「殿下……世界は、本当に敵なんですね」リリアナが呟く。

 「そうだ。だが味方はいる。君たちがいる」


 アレンが剣を掲げる。

 「なら、俺は殿下の剣だ。――何度でも共に戦います」


 クロエが口元を吊り上げる。

 「退屈しない日々が続きそうですね」


 私は夜空の赤いひびを見上げ、拳を握った。

 ――推しを救うため、次は港湾の金脈を叩き潰す。

 評判戦から、資金戦へ。

 物語はさらに狂い、そして進んでいく。

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