第18章 — 記憶が拒んだその瞳
夜の肉体の中に、幾時間もの時が溶け去ったあと、ズリカは目を覚ました。
世界は、恐怖に先立つあの深い呼吸の中に吊り下げられていた――すべてが、あまりにも静かすぎて、真実とは思えない瞬間。月は青白い前兆のように昇り、カエリラは微動だにせず、ただ一匹の子を、まるで自らの胸から引き裂かれた心臓そのものを守るかのように、見張っていた。
そのとき、ズリカは感じた。
音でもない。匂いでもない。
――確信だった。
金属の壁の向こう、森の闇の奥で、二つの青い瞳が脈打っていた。動かず、注意深く。普通の目のようには瞬きもしない――考えているかのようだった。彼女の一挙手一投足を、古く、ほとんど神聖とすら言える忍耐で見つめていた。遠くはない。恐怖が形を持つほどに、近かった。
彼女は目を細め、空気が薄くなったかのように感じた。
「……あなたは、何者?」
その問いは答えを求めていなかった。
対峙を、求めていた。
勇気というより本能に突き動かされ、ズリカは立ち上がり、木から跳んだ。原初の者たちの野性の軽やかさで空を切り、金属の壁を越え、別の幹に着地すると、すでに走り出していた。枝が足元で軋み、影が砕け散る。彼女は木から木へと進み、ぶら下がり、投げ出され、森を生きた矢のように滑っていった。
「……私を見ているのが誰なのか、確かめたい」
だが、彼女の背後には、もう一つの存在があった。
カエリラが、追っていた。
音もなく、ためらいもなく。
彼女の瞳――一つは赤く、もう一つは青く――は、古き戦争の熾火のように夜を焦がしていた。唇から漏れた声はあまりに低く、音の世界に属していないかのようだった。
「あなたは、私に残されたすべて。誰にも触れさせはしない」
数分後――あるいは、恐怖によって引き延ばされた数秒後――ズリカは、その青い瞳へと一直線に跳び、目の前に着地した。
立ち上がる。
そして、見た。
――あるいは、見たと思った。
闇から現れたその姿は、実体を持たないかのようだった。生きた煙のように濃い黒いオーラに包まれ、顔を覆うフードに似た形を成している。表情はない。人間性もない。
あるのは、欠如――周囲の空間を喰らうほどの欠如だけだった。
ズリカは一歩退いた。心臓が、檻に閉じ込められた獣のように肋骨を打つ。
「あなたは誰? どうして私を見ているの?」
影はわずかに首を傾けた。まるで、希少なものを研究するかのように。
その瞬間、背後で――小さな音がした。
ズリカは、ゆっくりと振り返った。
カエリラが、そこにいた。
巨大で、静かで。
異色の瞳は、愛を超えた本能で輝いていた――もっと荒々しく、もっと古いもの。トラウマから生まれる保護。すでに失いすぎた者だけが持つ、あの守り。
影は、カエリラを見据えた。
「……随分、変わったな」
その言葉は、刃のように落ちた。
ズリカの背筋を、冷たいものが這い上がる。
「お母さん……あいつ、何を言ったの?」
だが、カエリラは答えなかった。
やがて発せられた声は、喉そのものを裂くかのようだった。
「……お前は、誰だ?」
影は、微笑んだように見えた――唇ではなく、沈黙で。
「……本当に、私を覚えていないのか……娘よ?」
カエリラの爪が伸び、皮膚を拒む骨のように長く鋭くなる。赤と青のオーラが暴力的な波となって広がり、足元の地面が震えた。
「私が覚えているのは――」
彼女は唸った。
「――最初の子が、消えたということだけだ」
森が、静止した。
一瞬、世界そのものが、影がズリカを見つめるのと同じ残酷な好奇心で、その光景を観察しているかのようだった。
「……気まずいな」
存在は低く呟いた。
「最も強き我が娘が、これほど恐ろしいオーラを纏っているとは……懐かしい。だが――その母は、今でも私を恐れさせる」
カエリラは、踏み出した。
だが、影はすでに、そこにはなかった。
物質であったことなど一度もないかのように、思考として霧散した。
残された沈黙は、いかなる脅威よりも酷かった。
ズリカは虚空を見つめ、己の目が何を目撃したのか理解しようとした。彼は誰なのか。どうして母を知っているのか。そして、なぜあの言葉――「娘」――は、これほど謎めいて響いたのか。
カエリラは、動かなかった。
その表情には、何かが壊れていた。記憶に走る、見えない亀裂。長子の失踪以来、彼女の心は二度と完全ではなかった。ある部分が引き裂かれ、霧で置き換えられたかのように。
「……ママ。あの人、誰だったの?」
カエリラはすぐには答えなかった。近づき、ズリカの腕を強く掴む――乱暴ではない、だが必死だった。
「関係ない。帰るわ」
彼女は娘を背に向けさせ、本能と支配が混ざり合った動きで口を開き、首元に噛みついた。傷つけない、刻印するだけの計算された力で。
そのまま、子を運ぶ雌狼のように持ち上げた。
ズリカは、歯が触れた場所で血が脈打つのを感じた。
どうして、こんなことを?
私は、ただの獣じゃないのに……
――でも、そうなのかもしれない。
――皆、そうなのかもしれない。
カエリラは跳躍し、ほとんど人に近い姿と混血の身体を持ちながら、歯に娘を咥えたまま運んだ。原初の者たちは、あまりにも強靭だった。
身長一四〇センチのズリカは、一八九センチのカエリラの前では小さく見えた――その差は、この瞬間、肉体よりも感情のものだった。
村に着くと、他の狼男たちは見なかったふりをした。理屈に合わない光景だったが、誰もカエリラに問いただすことはしない。彼女には、沈黙を強いる何かがあった。
彼女は洞窟の入口まで歩き、ズリカを下ろした。
若い娘は石の地面に落ち、振り返る。
「……ママ。あの人、誰だったの?」
カエリラは低く唸った。それは脅しではなく、押し殺された恐怖の音だった。
「……覚えていない。いいから、入れ」
ズリカは永遠にも思える一秒、ためらい、それから洞窟へと入った。
外では、カエリラが闇を見つめ続けていた。
そして、ほんの一瞬――ただの一瞬――その瞳が揺らいだ。
まるで、否定し続ける記憶の深淵で、二つの青い瞳が、今なお彼女を見つめているかのように。
次章へ続く




