50
パンドラが魔王城に戻ると、皆が十畳間で本を広げていた。
「お帰りなさい主様。今、皆に何処を見て回ったら良いか聞いてた所なの」
「パンドラさんのお勧めとかありますか?僕的にはその国の歴史を感じる様な場所を見て回りたいんですけど」
「ん~ヨーロッパの街並みなんかは向こうと似てるからアジア中心で回ろうかと思ってたんだが、行くだけ行ってみるか。まぁ何にしても明日からだな。それじゃ魔王さん邪魔したな」
「いえ、こちらこそ本当に助かりました。と言うか、神達がどう為ったか聞いて無いんですけど・・・・・」
「ん?ああ、もう二度とちょっかい掛けられない様にして来たから大丈夫だ。二人共、お暇するぞ」
「「は~い、お邪魔しました」」
軽いな~、軽過ぎるよこの人。なんかもう如何でも良い感が半端ないよ。
三人を玄関まで見送って部屋へと戻り、一息ついてほんの数時間前の出来事を思い出し、全てが終わったのだと言う事が未だに信じられなかった。
「・・・・・なぁ・・・本当に終ったんだよな?・・・・・呆気なさ過ぎて夢だったんじゃないか・・・って思ってさ。実際何も変わった様に見えないし・・・俺達、戦ってもいないんだぜ」
「では、外に出てみては如何でしょう?パンドラ殿の言う通りであれば、陛下も城から出られる筈ですし、我等同様迷宮内転移も使えるやも知れません」
ギービルに言われて思い出した。そう言えば確かに彼は俺自身が魔力を生み出し、迷宮と皆に魔力を供給してるから外に出られると。
外に出る事を意識した瞬間、頭の中に迷宮の各階層が浮かび上がり、転移出来る事を自覚した。
「・・・リトラ・・・少し散歩に行こうか」
俺はリトラの手を取り地下10階へと転移して出口の魔法陣へと向かい、少し手前で足を止めてリトラと顔を見合わせ微笑み合い共に魔法陣へ乗った。
あっさりと外に出た俺達は他愛ない話をしながら迷宮の外周をのんびりと歩て回り、日が落ちる頃に皆が待つ城へと戻った。
「・・・何だろうな・・・終った事は理解したけど、実感は湧かなかったよ。でも、俺が・・・俺達が望んだ日常が続くんだし、それで良いか」
その日の夕食は少し豪華にしてそのまま宴会に突入した。
意外と酒に弱いティゲルが早々に潰れ、酔っ払ったマサトがデミスに飛び掛って返り討ちに遭い、ニクスがマサトを、ギービルがティゲルを担いで部屋へと先に戻り、デミスが片づけを手伝ってから帰った。
二人きりになって、ふとあの三人組の事を思い出した。
「・・・・・そうだ・・・リトラ、俺達も新婚旅行に行かないか?迷宮の事はアクアに任せておけば問題ないだろ」
そうと決まれば善は急げと翌日に日程などを話し合っていると玄関のチャイムが鳴った。
「あ・・・聖女の事忘れてたわ。旅行の前に政府やマスコミにも連絡しておかないと!」
未だに終わったと言う実感が無かったせいか、他にも忘れている事が無いかとか、政府やマスコミ、取引先の企業との対応をしている内に月日は流れ、旅行の日程を決めてホテルの予約をとり、出発出来る様になったのは二ヵ月後だった。
あ、聖女は政府に引き取って貰いました。操られていたとは言え俺を殺そうとしたりしてここに住むのは気まずいだろうし、実際やたら謝られてこっちが却って気を使った位だし。
そして迎えた出発当日。
「それじゃ行って来るけど、本当に良かったのか?お前等留守番で」
俺はどうせなら全員でと言ったのだが、マサトは兎も角ギービル達の見た目が受け入れられているのは迷宮内だからだと固辞されてしまったので俺が折れた。彼等がそんな事を気にしている訳はなく、俺に気を使っての事だと解っているからだ。
「我等の事はお気に為さらず楽しんで来て下さい。何か有ればアクアを通して連絡いたしますから」
迷宮内には相変わらず携帯等は繋がらない。そこで連絡用にペットボトルにアクアの分体を入れて持ち運ぶ事にしたのだ。アクア曰く『行く先々の池や湖等の水場に私を置いて頂ければ世界征服も夢ではありません』だそうだが、そんな事をする気は無い。実感は無いが漸く平和になったのだ、もう争う必要なんて無いのだから。
俺はリトラの手を取り、駅へと続く道を歩き始めた。
今回にて本編終了となります。
最後まで読んで頂き有り難う御座いました。




