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ギービルが総理を迎えに行っている間、俺達は部屋の片づけをしていた。
「お前等散らかし過ぎだろ・・・仕方ない、取り合えず仕事部屋へ纏めて放り込んでおくしかないか・・・・・」
四天王達が持ち込んだゲーム機にソフト、DVDに漫画や小説等々を隣の部屋に運び出し、リトラが掃除機をかけて行く。
総理を迎えると言うのに、これは散らかっている以前の問題な気がする。
「あっ!陛下、謁見に相応しい服とか用意しないのか?!」
「む、確かにスエット上下と言うのは魔王としての威厳が無さ過ぎますな。せめてスーツ位は用意した方が良いのでは?」
デミスとニクスの提案に少し考えたが、敢えてこのままで行く事にした。
「ん~・・・いや、俺に対して〝悪の象徴〟的なイメージを持たれたく無いからこのままで行く。有りの侭の俺を見て感じて貰った方が良いと思うんだ。それに服だけ取り繕ってもこの部屋じゃなぁ・・・・・」
「ふむ・・・いっその事、謁見の間と玉座を用意すると言うのはどうです?」
「ワンフロアぶち抜けばそれっぽく出来るだろうけどさ、お前等の内の誰かは引っ越す事になるけど良いのか?」
「あ、それなら言い出したニクスの部屋が有る4階にして下さい」
「うっ・・・・・いや・・・その・・・・・今からでは間に合わぬだろうし・・・あれだ、謁見の度に陛下に4階まで移動して貰うと言うのもな・・・うむ、無かった事に」
「ははは・・・まぁ、引っ越すの面倒だもんな」
「い、いえ、別にそう言う訳では・・・ハハハハハ」
等と遣り取りをしている間に総理を連れたギービルが帰って来た。
俺は部屋の奥でニクスとデミスを後ろに控えさせ、リトラに出迎えて貰う事にした。
そして部屋の扉が開き、リトラとギービルの後ろに付いて総理が入って来たので、一歩前に出て挨拶をした。
「始めまして、ようこそ御出で下さいました総理。魔王をやらせて貰っている伊竹秀雄と申します。以後お見知り置きを」
「・・・・・いえ・・・此方こそ急な来訪と言うのに御会い戴き感謝いたします。内閣総理大臣の倉里大人です・・・・・」
「まぁ立ち話もなんですから、そちらにお座り下さい。リトラはお茶を、残りの連中は自室で待機しててくれ」
「へ、陛下!何を考えているのです!そのような真似出来る訳が・・・・・」
「何言ってんだ、総理が一人で乗り込んで来てんのに、こっちが大人数で囲んで威圧して如何するよ。ここは総理の覚悟に応える所だ、違うか?」
渋る四天王達を説き伏せて部屋から追い出して総理と向かい合って座った。
総理を敢えて下座にしたのは、ここが俺の城で俺は魔王だから相手が誰であろうと上位に置く事は出来ないと思ったからだ。
リトラが入れてくれた紅茶を一口のみ、軽く目を伏せて息を吐き、改めて総理を見る。
お互い目を逸らさず、暫し沈黙が流れ、総理がフッと笑みを溢して切り出した。
「・・・・・正直、驚きました・・・貴方がネットに流した情報で知ってはいましたが、本当に普通の青年なんですね。迎に来たギービルさんを見た時は『これを従える魔王はどれ程恐ろしい姿をしているのか』とか『謁見の間で玉座から罵声を浴びせられる』のではと戦々恐々でしたよ」
デミスとニクスの提案に乗らなくて良かったと、心底胸を撫で下ろした。
「ま、まぁ、取り繕ってボロが出るより、有りの侭を見てもらった方が良いかなと思いましてね。ハハハ・・・それよりも、よく一人で来る事をSPが許しましたね」
その台詞が取り繕っている上に、ボロが出ていた気がするのは気のせいでは無いだろう。
「本当ならばもっと早く来たかった・・・いえ、来るべきだったと思っています。今日、この機会を逃したら次は何時になるか解りませんから、少々無理を言いましたよ。さて、それでは余り時間が無いので本題に入らせて貰います」
そう言って姿勢を正した後テーブルに両手を付けて目を伏せ、頭を下げた総理を俺は唯呆然と見ている事しか出来なかった。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




