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連載3作品目に為ります。

拙い作品ですが気に入って頂けたら幸いです。

「そろそろ来る頃かな・・・・・」


俺は部屋の片付けをしながら腕時計で時間を確認した。

今日はエアコンの設置に電気屋が来るのだ。


俺は駅から徒歩20分程の所に有る6階建てのマンションの最上階に二日前に越して来た。十畳と八畳の二部屋とキッチンにトイレと風呂場はやや広めで、各部屋と玄関横には収納も付いている。しかも近所にはコンビニやスーパーにホームセンター等も有りかなり便利だ。


このマンションの6階は三部屋あるのだが(他のフロアは五部屋)今は俺が住んでいる603号室以外の入居者は居ない、家賃は月7万円と格安にもかかわらずだ。


この建物は所謂『事故物件』と言う奴で、昼夜問わず変な呻き声の様な音が聞こえるらしく、今までの入居者は半年も経たず出て行ったそうで、他のフロアも住んでいるのは一人か二人だそうだ。


正直、俺はそう言った霊的な存在はまったく信じていない。仕事(グラフィックデザイナー権イラストレーター)の資料集めと言う理由でその手の怪奇スポットや自殺の名所などの撮影に車であちこち回ったが、一度も怪奇現象に遭った事も無ければ写真に写った事も無いからだ。


散らかったダンボール等を纏めていると呼び鈴が鳴り、玄関から業者を迎え入れてエアコンの取り付けをして貰う。一台目の取り付けが終わり、二台目に取り掛かり、暫くすると部屋が薄暗くなって来たので窓から外を見ると真っ黒な雲が空に広がりつつあった。


暫くして設置工事も終わり、業者が帰る頃にはポツリポツリと雨が降り始めていた。


「あ~買い物に行きたかったんだが・・・・・明日にするか・・・食料はレトルトがあるし・・・・・・・・」


そんなことを呟きながら窓の外を暫く眺めていると、遠くの雲の中がチカチカと光っているのが見えた。雲の中の光は徐々に数を増やしながら近づいて来てゴロゴロと音を鳴らし始めた。


俺はこんな光景なかなか見られる物じゃないと、ビデオカメラを取りに行こうと振り返った直後、カッ!と雷光が部屋を白く染め、雷鳴が大音量で響いた。


「ッ~・・・あ~耳いてぇ・・・・・こりゃ相当近くに落ちたな」


キーンと痛む耳を押さえながら振り向き、窓の外を見て愕然とした。


「・・・す、すげぇ・・・・・」


真っ黒な空から雷が何本も地上に落ち続けていたのだ。轟音を伴う幾条もの光が天から降り注ぐ様はまるで映画でも見ているかの様に現実味が無く、世界の終焉を容易に連想させた。


暫く呆けていた俺は、緊急車両のサイレンの音で現実に引き戻され、停電に備え懐中電灯を探そうと振り返ると、部屋の中央に黒い靄の様な物が浮かんでいた。


「・・・な・・・なんだよ・・・これ・・・・・・・・」


俺が息を呑み動けなくなっていると、靄が揺らいでドクンと脈打ち一回り大きくなり、金色の目の様な物が二つ浮かんで頭の中に声が響いてきた。


《フハハハハ!・・・・・ようやく見つけたぞ!・・・我が肉体足りえる受容体を!!》


「うわあああぁぁぁ・・・・・・・・!!」


次の瞬間、靄に飲み込まれた俺は目の前が暗転し意識を失った。






《ぅ・・・あ・・・・・なん・・・だ・・・・・身体が勝手に動いて・・・・・・・》


「ほう、まだ意識が残っていたとはな・・・・・尤も・・・それも後少しの事だ・・・ククククク・・・此れからはそなたに替わって我がこの身体を有効に遣う故、安心して消えるが良い。フハハハハハ!」


俺の身体から俺で無い者の声がした。


《お、俺が消えるだと・・・・・なんだそりゃ!返せ!これは俺の身体だ!・・・・・この!・・・出て行け!・・・・・俺は霊とか信じてねぇんだよ!》


「ぬぅ!無駄な足掻きを!・・・貴様等人間如きが・・・・・グアッ!・・・このっ!大人しくせんか!」


《諦められるか!独立して三年掛かってやっと狭いアパートから引っ越せたんだ!てめぇなんぞに乗っ取られてたまるかああああぁぁぁ・・・・・!!》


何をどうしたのかは解らないが、プツンと糸が切れる様な音が聞こえた様な気がした後、徐々に身体の感覚が戻って来た。そして体内に残る悪霊?を押さえ込むイメージで覆い被さる様にして捕らえた。


「・・・・・はぁ・・・はぁ・・・あ~きっつ・・・・・だが取り返したぜ!・・・後はこいつをどうするかか・・・・・・・」


《・・・ぬぅ・・・まさか奪い返されるとは・・・・・この様な事は初めてだ・・・・・・・しかしこのままでは・・・・・・・・どうなるのだ?》


「知るか!どうもこうもねぇよ。てめえが消えるか出て行くまで押さえ込んでやるだけだ」


《それは・・・おそらく無い・・・な・・・・・本来なら『吸収』と『同化』が始まる筈なのだが・・・我は動く事も侭ならんし・・・・・・・》


「は?なんだそりゃ?・・・うぁ・・・ガハッ!・・・ぐあああぁぁぁぁ・・・・・!!」


《・・・・・始まったか・・・が・・・やはり何時もとは違う・・・か・・・・・》


激しい頭痛と目眩に襲われた俺はその場に倒れ込み再び意識を失った。

ここまで読んで頂き有難う御座いました。

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