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「・・・・・っ・・・あ~酷でぇめに遭ったぜ・・・おい・・・『魔王』どう言う事だ、俺はどれだけ眠ってた」
《・・・この様な事態は我も初めてだと言ったであろう『伊竹秀雄』よ・・・・・ふむ、『吸収』されずに『同化』はしたが情報の共有は殆んど出来なかった様だな・・・・・眠って居ったのは一日半と言った所か》
「・・・はぁ・・・聞きたい事は有るが先ずは・・・飯だな・・・食材無いしカップ麺で良いか・・・・・」
キッチンでカップ麺にお湯を入れて仕事部屋の八畳間へ入り、仕事道具のPCのセッティングや資料を本棚へと入れつつ出来上がったカップ麺を啜った。
《ほぅ・・・これは中々旨いな・・・・・いやいや、先程から何をしているのか解らんが、そろそろ拠点の設営場所を決めて部下を迎える準備をせんと・・・・・》
「五月蝿せぇ黙ってろ、お前の指図は受けねぇ。それに引っ越したばかりの此処を離れる気もねぇ」
《ふむ・・・確かにこの身体の主導権はそなたに有るが、同化した以上は我等が魔王で或る事に変わりは無いのだ。だが、そなたに魔王としての知識が無い以上、我はそれを補わねばならん》
「俺は魔王なんぞに為る気はねぇから必要ねぇ。そんな事より三日後の締め切りの方が大事だ」
空に為った容器を水で軽く流してゴミ箱に放り込み、PCと周辺機器のセッティングの続きをした。
深夜になり近くのコンビニで食糧を買い込み、セッティングの済んだPCで仕事を始めたのだが、魔王が物珍しさからやたらと質問して来てウザイ。
《むぅ・・・・・どれもこれも見た事の無い物ばかりで興味深いな・・・・・先程の商店・・・こんびにと言ったか?休み無く開いていると言うのも信じ難い事だが、素晴らしい品揃えだった・・・・・ほう、その道具は絵を描く為の物か?我も試してみたいぞ!少し身体を貸せ!》
「・・・・・・・・・・五月蝿えって言ってんだろ!!仕事の邪魔すんな!明日中には終るからそれまで大人しくしてろ!!」
魔王を黙らせて仕事を進め、明け方近くにカロリーバーを食べながらコーヒーを飲んでいると、途切れ途切れの声の様な音が聞こえてきた。
「・・・・・おい魔王、これってお前絡み・・・じゃねぇよな・・・・・」
《ああ、我とは関係ないが・・・・・精霊の様だな・・・かなり弱っているが。我等の魔力で少し回復した様だが・・・・・これは時間の問題だな、直に消えるだろう》
「・・・・・はぁ・・・ったく次から次へと・・・・・え~っと・・・風呂場・・・かな・・・・・」
仕事部屋を出て風呂場に入ると、バスタブの奥の壁際に陽炎の様に揺らめく薄い水色の影の様な者がいた。
「・・・・・ァ・・・ゥ・・・・・ミ・・・ミズヲ・・・・・タ・・・タスケ・・・テ・・・・・・・・・・」
「はぁ・・・・・あ~はいはい、水ね。出してやるから元気になったら出て行く様に。騒いだりして仕事の邪魔だけはすんなよ」
こいつが事故物件の元凶かと思いながら蛇口を捻り、バスタブに水を張ってやると、叙々に色が濃くなり人型になって行った。
「・・・・・・・・ああ・・・・・有難う御座います...私は『あ、そう言うの良いんで、さっきも言ったけど元気になったら出て行って下さい。それじゃ仕事をするんで邪魔しない様に』え・・・あ・・・はい・・・・・」
精霊?の言葉を遮り仕事部屋へと戻ると仕事を再開した。
仕事は締め切り前日迄に上げるのが俺の慣わしだ。こうしてクライアントからの信用を勝ち取り独立出来たのだ、もし有名になったとしてもこのスタンスを変える気は無かった。
「・・・・・・・・よし!・・・送信っと・・・・・あぁ~・・・何とか間に合った・・・・・・・」
《おお!漸く終ったか!それでは拠点を設営に行こうぞ。その後はそなたに足らぬ知識を共有せねばな》
「引っ越す気はねぇって言ったろ・・・・・知識の方は後で頼むわ・・・・・流石に寝不足の頭で理解出来ると思えないしな・・・・・あ~・・・取り敢えず寝るからもう暫く大人しくしとけ」
《むぅ・・・・・仕方ないか・・・受肉した際の睡眠の重要性は我も理解しておる故な》
ふらふらと仕事部屋から出て十畳間へと向かい、ベッドに倒れ込む様に眠った。
・・・カタン・・・・・
・・・カタン・・・・・カタ・・・カタ・・・カタカタカタカタ・・・・・・・・・・
《む・・・これは・・・まさか?!・・・・・おい!起きるのだ伊竹秀雄よ!拙い事になったぞ!!》
「・・・・・うっ・・・おあぁっ!な、何だこりゃあ?!地震か!くっ・・・・・で、でけぇ・・・・・え?!・・・えええええぇぇぇぇぇぇ・・・・・・・・・・!」
《まさかこれも想定外とは・・・・・今回は一筋縄では行かん様だ・・・・・・・・》
「おい!これもお前関係か!うわっ!一体何が起こってんだ!」
《だから言ったであろう・・・拠点場所を決めろと・・・・・始まったのだ・・・拠点・・・・・迷宮の創造が・・・・・何、心配は要らん。それ、見てみよ家具が倒れたりしておらんだろう》
「えっ・・・・・ほ、本当だ・・・これ程の揺れなのに・・・・・そ、それで迷宮の創造ってどう言う事だ」
《・・・・・始まるのだ・・・人類の命運・・・地上を賭けた天界と魔界の代理戦争がな・・・・・それ、外を見てみよ》
轟音と激しい揺れで気が付かなかったが、窓の外の景色が物凄い勢いで下へと流れて行き、直ぐに空と雲以外見えなくなってしまった。
「なっ!・・・・・う、上に上がってるのか?・・・・・まさか、この下が迷宮になって・・・・・・・」
《うむ・・・・・我らの居城の地下に迷宮が作られるのだ・・・・・・・・・・終った様だな・・・・・にしても、此度の迷宮は今だ嘗て無い程の大きさの様だ・・・・・》
「と、止まった・・・・・あっ!ま、街は!街はどうなった!」
慌ててベッドから転げ落ちる様に下りて窓を開け、ベランダに出て外を見ると、そこに有った筈の街は無くなっていて、見渡す限りの森が広がっているだけだった。
ここまで読んで頂き有難う御座いました。




