表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
202/502

201話 レッドドラゴン戦

前回のあらすじ「ベビードラゴンで癒される」

―「イスペリアル国・ニトリル山脈 グリフォン仮拠点」―


「グッオオオオーーーー!!!!」


「グルル……」


 巣から仮拠点へ戻ってくると、空の上で二匹のドラゴンが睨みあっていた。仮拠点周辺は二匹が暴れたせいで、森のあっちこっちから火と煙が立ち上っている。


「グッオオオオーーーー!!!!」


 すると、お父さんドラゴンより一際大きいレッドドラゴンが口元から大きな火炎弾を放つ。標的のお父さんドラゴンは避けるが、その火炎弾が、下の森にぶつかって火災を発生させる。


「怪獣映画だね……これ」


「同感だよ……」


「クェーー!!」


 ドラゴン同士の戦いを見て、唖然としている僕たちの所に、仮拠点で待機していたグリフォンたちがやってきた。中にはケガをしている者や、子供を口で加えて運んでいる親グリフォンもいる。


「グリフォンの長は仲間たちを自分たちの巣へ避難させて下さい!」


(いや。ここは多くの戦力が必要になるだろう……それに逃げ遅れた者もいる。それだから我はここに残る。皆の者!巣穴を占拠したドラゴンとは話が付いている!そこへ今すぐ避難せよ!戦える者は我に続け!レッドドラゴンをここで止めるぞ!!)


「「「「「クェエエエエーーーー!!!!」」」」」


 長の指示に従って、巣穴に避難する集団と戦う集団で別れる。それを見たレッドドラゴンがこちらに首を向けて、口元に先ほどの火炎弾を作っている。


「カーター!!来るわよ!!」


「分かってる!おい!防御魔法を張るから少し前に出ろ!」


「クェ!!」


 カーターが乗っているグリフォンに指示して、レッドドラゴンの方へ前に出る。


「僕たちもいくよ!!」


 カーターたちに後れを取らないように、僕たちも前に出る。


「ファイヤー・シールド!」


「ウォーター・シールド!!」


 カーターたちと泉たちがそれぞれ防御魔法を放つ。


「……私達はどうするのです?」


「ここは雷壁だね……」


 黒剣にした鵺を前に出して雷壁を発動させる。中心に核を発生させて、そこから円形状に電気を放射して攻撃を防ぐ防御魔法である。


 雷属性の防御魔法雷壁。これは空中戦を想定した防御魔法である。鵺の城壁、水属性の氷壁、そして防御にもなる蝗災。その3つとも、それぞれの理由で空中では発動できないという欠点があったりする。氷壁は地面に置くタイプであり、蝗災は上空まで飛ばすことが出来ない。そして鵺だが、これは一応発動できる。しかし、それは大盾サイズである。しかも僕がそれ構えないといけないので、レッドドラゴンの放つ火炎弾の衝撃を真正面から受けきらないといけない。当然だがあの大きな火炎弾を受けきる自身は無い。


―雷属性魔法「雷壁」を覚えた!―

効果:術の発生させると、雷の力が籠った核を前に出現。そこから円形状に電気を発生させて、相手の攻撃魔法を相殺させます。また物理的な攻撃に対しては相手を麻痺させて攻撃を中断させる仕様になっています。


 防御魔法を張った所で、レッドドラゴンがこちらへと赤い大玉を打ち出す。それは3つの防御魔法にぶつかって……。


「鵺。大盾」


 弱まった所で僕が大盾で受ける。すっかり威力が下がっていたので容易に防げたが……まさか、3重の防御魔法を打ち破れるとは……。


「グォオ!!」


 レッドドラゴンが魔法を防がれて怒っている。すると、その隙を付いてお父さんドラゴンがレッドドラゴンの首を噛む。噛まれたレッドドラゴンはそれを引き剝がそうと首を必死に動かす。僕はレイスに声をかけて続けて攻撃を仕掛ける。


「雷連撃!!」


 上空からレッドドラゴンに向けて雷が直撃する。効果があったらしく悲鳴を上げている。


「スパイラル・フレイム・ランス!!」


 続けざまに、カーターたちがグリモアを使った炎の回転槍を撃ち出す。それはレッドドラゴンに直撃し怯ませる。


「貫けなかったか……」


 もはやドリルと言っても過言ではない回転する槍は、レッドドラゴンの胴体にしっかり当たったが怯ませた程度で終わってしまった。これだけでドラゴンの鱗がどれほどの硬さかが分かってしまう。今も暴れ続けるレッドドラゴン、その勢いに耐え切れずにお父さんドラゴンはその口を離してしまった。すると、レッドドラゴンはその一瞬のスキを狙って、自信の持つ尻尾でお父さんドラゴンの胴体を強打する。強打されたお父さんドラゴンはその威力で墜落はしなかったが吹き飛ばされてしまった。さらにレッドドラゴンは間髪を容れず、今度は尖った大きな氷を口からいくつも吐き出す。


「ウィンド・ハイバースト!!」


 それを泉たちがグリモアで強化した風の塊で吹き飛ばした。その間にお父さんドラゴンが体勢を整えてレッドドラゴンを見据える。


(激しいな……過去にここまでの戦は無かったな……)


 僕たちの横にグリフォンの長が現れる。


「避難は完了したんですか?」


(ああ。ここには戦いを決めた者しかいないぞ)


 グリフォンの長が後ろを向くので、釣られて後ろを見ると、そこには10体程のグリフォンが。


(数匹は避難組の護衛に就かせた。それに逃げ遅れた者もいるようだからな……実際には半分が戦いに専念できると思ってくれ)


「グギャアオオオオーーー―!!!!」


 レッドドラゴンがやられ続けたことに怒っているのか、首を持ち上げ、空に向かって雄たけびを上げる。


(ふん。子育てというくだらない理由で逃げた貴様らに制裁を加える前の暇つぶしにグリフォン狩りに興じていただけなのに邪魔しおって……。か、ふざけたやつだ)


「でも、お陰で情けをかけるとかしなくていいのは吉報かな」


 子育ての大切さを愚弄して、かつ暇つぶしでグリフォンをハントするレッドドラゴンを討伐しても、文句を言う奴はこの場にはいないだろう。


(私もやるから。こんな奴、子供の教育に悪いから!)


 シエルもレッドドラゴンの態度に怒っているようで、やる気満々になっている。


(総員!一斉攻撃!!)


「「「「クェエエエエーーーー!!!!」」」」


 グリフォンたちが一斉に魔法を放つ。グリフォンたちは風属性の魔法を使う聖獣。その攻撃も泉の魔法名を使わせてもらうとウィンド・カッターに先ほどのウィンド・バースト、中には羽を飛ばすような攻撃とかもあったりする。その威力もなかなかでレッドドラゴンを少しだけ怯ませる……が、それも鱗を破壊するまでには至らず、しかも反撃として火炎弾をこちらに放ってきた。


(回避!!)


 グリフォンたちが一斉に避ける。先ほどは一つにまとまっていたが今度は3つのグループに分かれて、レッドドラゴンの攻撃を戸惑わせようとする。


「鱗の防御……厄介だね」


 僕たちとは逆にいるカーターたちを見ると、様々な魔法で攻撃を仕掛け続けている。けれど、見た感じ、最初に撃ったスパイラル・フレイム・ランス以外の攻撃は効果が無さそうである。


「グッオオ!!」


 お父さんドラゴンも反撃と言わんばかりに羽を羽ばたかせて巨大な2つのウィンド・カッターで攻撃。泉たちもグリモアによって強化された黒いウィンド・カッターで攻撃を仕掛けている。


「ギャオオ!!」


 ダメージをくらっていないが、全員からの魔法の集中砲火で反撃が出来ないレッドドラゴン。すると、レッドドラゴンは集中砲火を避けるためにさらに高く飛び上がり、そして頭を後ろに逸らす……その口元から火を零しながら。


「ブレスだ!!皆、避けろ!!」


 それを聞いた僕たちは咄嗟に雷撃を放ちレッドドラゴンを短時間だけ膠着させる。その口の火は零れたままなので、攻撃のキャンセルとはいかなかったが、避難する時間稼ぎには十分である。ブレス攻撃の射線上にいた泉たちとお父さんドラゴンがそこ離れた直後にブレス攻撃が放たれる。その威力は強烈で直撃した木々は炭化、仮に直撃を免れても、その熱で木々が発火して辺り一面が火の海になってしまった。


「ギャオ!!」


 すると、猛スピードで執拗にお父さんドラゴンを狙い、再び尾で今度は下へと叩きつける。お父さんドラゴンはそのまま火の海に落ちていく。


「泉!!」


 そして、その落ちていく方向に泉たちがいた。距離があったために助けることが出来ずに、泉たちがお父さんドラゴンの落下に巻き込まれて一緒に火の海に落ちていくのが見えてしまった。


「泉!!」


「助けに行くのです!」


「そう……!!シエル!」


(分かってる!!)


 シエルの名前を呼んで、すぐ上に逃げてもらいレッドドラゴンの攻撃を避ける。


「ギャオオ!!」


(気を付けろ!奴の今度の狙いは貴殿達だ!どうやら先ほどからの貴殿達の魔法にイラついているようだ!)


「イラつく……か。上等だよ」


「薫。落ち着くのです」


「分かってる。大丈夫だよ……さっきカーターが向かったのが見えたからさ」


 さっきの攻撃を避ける際に、カーターたちが見えた。泉たちの方はカーターたちに、今は任せるしかない。


「ギャオオ!!」


「五月蠅い……」


 僕はグリモアを発動させて、雷属性の強化版を実戦としては初めて使う。


「黒雷」


 上空から黒い雷がレッドドラゴンに落ちて、背中に直撃、そのままレッドドラゴンの表面を黒い雷が伝って攻撃をし続ける。


「ギャアア!?」


 先ほどとは違う。雷に対して戸惑うレッドドラゴン。


「アクヌムの時には効果が薄いから使わなかったけど……君なら問題無くダメージを与えられそうだね……」


「ギャ……オ……!?」


 僕の方を見たレッドドラゴンが何かを叫ぼうとして、黙ってしまった。今の僕の顔はそんなに酷い物なのだろうか?僕は昨日のグリフォンたちに見せた笑顔とは違う、演技無しの醜悪な笑顔でそれに睨みつける。


「薫……」


「いくよレイス……さあ、懺悔の時間だ」


 僕を本気で怒らせたんだ……楽に逝けるとは思わないでよね?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ