118話 お盆の終わりと新たな脅威
前回のあらすじ「水着回」
60話~最新話まで追記と修正を行いました。
*75話でのトランシーバーを使った会話部分の変更
*100話のダイラタンシーから液状化への変更
上記が物語の設定上不都合だったり意味が合っていない部分があったので修正しました。
それ以外は特に大きな変更はありません。
―「ビシャータテア王国・野外プール」水着の紐を解くプロの視点―
「おうおう……いいね」
今度の胸はおわん型のいい巨乳だな。先ほどの小さいながらもキレイな形をした美乳……。う~~ん!!どっちもグッッッド!!!!俺はこの季節の為に生きている!!
「さてと、次のターゲットは……って!!あれは!!」
俺が見た方向。先ほどから上着を着て泳いでいたので不可能と思われたあの女性が……脱いでいるだと!!イケる!イケるぞ!!
「よし……」
俺は魔石を手に取り、準備をする。これで水を使って紐を解く……かなり使うのが難しく、そして実用性の無い魔石扱いだが……俺にとっては最高の魔石だ!さあ、さあさあさあ!早く水の中へ……!!そして俺の熱意が伝わったみたいでプールの中に入っていった。周りにも彼女を見ている人がいるが……あちらからは覗けまい!羨ましいだろう!!
「(いまだーーーー!!!!)」
俺はその一瞬が見える位置からあの女の紐を解き……お、おおおお~~~~!!!!貧乳!しかし、それがこの美貌にグット!!パーフェクトプロポーション!!!!おお!興奮しすぎて鼻血が…………。
バタッ……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
―「ビシャータテア王国・野外プール」―
「っと!」
僕は直ぐに水の中に入って体を隠す。
「薫兄。はいこれ」
「……」
先ほどまで着ていたビキニトップスが泉から渡される。それをジト目で見つめ返す。
「ジョーダンだって!……はい」
一瞬の間を置いてからパーカーが渡される。僕はそれを着てプールから上がる。
「おーーい!大丈夫か!?」
屈強な監視員さんが、倒れた……恐らく犯人だろう人物に呼び掛けている。
「ああ。なるほどね。この魔石を使って水を操って脱がしてた訳ね……」
カシーさんが魔石を持って、プールの水を動かしている。かなりの極小規模だが。
「セイレーンの触手みたいな物ッスか?」
「あれとこれでは危険度が全く違うがな」
「あんな物と比較しないでくれ……」
「それより……犯人は大丈夫なのです?」
さっきから継続して呼び掛けているが鼻血を流しながら体は痙攣させている。
「おーーーい!お前が見た奴、男だからな!!勘違いするなよ!!」
「はっ!男!そんな訳が!!」
マーバの声に反応して男が一瞬にして目覚める。
「僕は男だよ!失礼だよ!!」
「え?嘘?」
男は自分を囲んでいるカーターとシーエさんの残念そうな表情を見る。
「嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だーーーーーー!!!!!!」
二人の表情から真実だと悟り、大声を上げ、そして今度は口と耳からも血を吹き出して倒れた。
「ご臨終……デス!」
「マーバ!そんな冗談を言ってる場合じゃないと思うよ!?」
いくら何でも耳からの出血はヤバイような……すると屈強な男性がアイテムボックスからポーションを出して男にかける。
「ありがとうございました。後はこちらでやっておきます」
「よろしくお願いします」
いやいや?これでいいの!?
「あ、後こちらを……」
すると、屈強な男性から何かを渡される。
「お礼にどうぞ。この施設から出た所に最近できたフローズンドリンク屋となる店の無料券です。喉を潤すのにちょうどいいドリンクを売ってるそうですよ。プール帰りにどうぞ」
「ありがとうございます」
「いえいえ。それでは」
そう言って、屈強な男性は初めて見た時のように男の顔を鷲掴みにして引き摺っていくのだった。
「早く終わってよかったですね」
「そうだな」
「ねえ?」
「よし!遊ぶぞ!!」
「だな!私達の夏はこれからだ!!」
僕の言葉を気にかけずに、全員が一斉にその場を後にした。
「……いつも通り…か」
しかたがないので、僕はその後をトボトボと歩くのだった。その後、気を取り直してたっぷり遊んだ僕たちはフローズンドリンクを片手に後にするのだった。……ちなみに、倒れた男はその後、半年間程、医療所で生死を彷徨ったとかどうか。
―クエスト「水着をはぎ取る変態野郎を捕まえろ!」クリア!―
報酬:フローズンドリンクの無料チケット、薫のビキニ姿の写真(当の本人は知らない)
―称号「プ―ルサイドのビーナス(偽)」を手に入れた!―
内容:見た男共、全てを虜にし時には意識不明の重体にさせる男性に送られる称号。歩く認識阻害ということを自覚しましょう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
―夜「ビシャータテア王国・王宮の庭」―
一度、王宮に寄ってから帰ろうとしたら、母さんが花火を用意していて、こっちで花火しよう!!となって、王様も、やるぞー!!とメチャクチャ乗り気だったので、こちらで花火大会をすることになった。
ちなみに、事前にこちらで花火をすることを聞いていた泉が全員分の浴衣を用意していた。
「キレイですね!」
浴衣を着て、髪を簪で束ねたユノが手に持った線香花火を見て素直な感想を述べる。その、いつもと雰囲気の違う姿に僕の心がドキッとする。
「これが日本の夏っていうやつなのか?」
あっちから持ってきていたスイカを食べながら甚平がよく似合っている王様が訊いてくる。
「まあ、そうだね。最近は色々とうるさくなって、昔ほど気軽に花火が出来ないけどね」
「ね!ね!カーター君!泉ちゃんの浴衣姿はどう?」
「え?」
母さんがこっちで静かに線香花火を見ていたカーターに、あっちでシーエさんにカシーさん、そして精霊組と一緒にパラシュート花火をしている泉たちにいきなりの質問を投げつける。
「少しシックな色合いで大人の女性を意識したコーディネート……どうなの?」
「それは……」
そう言って、カーターが泉を見る。確かにいつもなら明るい色合いの浴衣を好むのに、今回は紺色の地味な色合いの物を着ている。ただし、帯や下駄、そしてイヤリング、あとはブレスレットなど装飾品が明るめの物を使ってる事で、落ち着いた雰囲気になっている。
「いい……です」
「ほうほう……なら、直ぐに行け!プロポーズにはまだ早いが親密になるには絶好のチャンスだぞ!」
「そうね……主人の言う通りです。カーター副隊長。行きなさい」
王様夫妻の命令……カーターは、どうしろと!!というような表情を見せつつ、しぶしぶ泉の元に近寄り話始める。
「ぎこちないわね~」
「泉さんは冷静ですわね」
「ありゃあ……カーター絶対に嫁に尻を引かれるな」
「そうなんですか?」
「分かる。何故なら俺がああだった……」
「あら。懐かしいですわね……あの時は……」
そのまま、王様たちと母さんたちの話が盛り上がる。僕は……。
「この花火は?」
「渦巻だな」
ユノが持っているねずみ花火を持っていて、その形状に兄妹そろって不思議がっている。
「……僕はこっちだな」
そう思って、その後ユノたちと一緒に様々な花火を試していく。
「よ~~し!!最後に打ち上げ花火をするよ!!」
その泉の言葉にそっちへとユノと一緒に顔を向ける。見るとフィーロがそれらに着火して、しばらくすると花火が打ち上がる。市販品とはいえなかなか見ごたえのある花火だな……。
「キレイですね……」
そのユノの言葉に思わず、ある名言が頭の中に浮かんでしまう。
「……ユノもね」
「え!!」
僕の言葉にユノが顔を赤らめながら振り向く。
「ゴメン。あっちの、キレイですね。っていう言葉に返す言葉として今のがあって……」
「そ、それじゃあ……私はキレイじゃないと……?」
ユノが残念そうな表情を浮かべてしまう。
「いや!?そう言う訳じゃなくてね!?その返す言葉の代表格として……!」
「冗談です♪」
そう言って、ユノが少しだけベロをチロッと見せる。……ああ、小悪魔ってこういう感じなんだな。
「私も恋人を……」
王子様が寂しそうに花火を見ている……すいません。いや、なんか……。僕も少し前までは王子様の立場なので、なんとなく分かる。
「へへ……!!」
王子様が彼女のいない寂しい奴状態で落ち込んでるのに、それにお構いなくユノが腕に抱き着く。
「……」
王子様が無言でチラッとこっちを見て、またまた花火を寂しそうに見るのだった。
こうして、僕の短い……それでいて充実したお盆休みが過ぎていくのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
―「???」シェムル視点―
「まさか。お前にケガを負わせるとはな」
「何?嫌味?」
「いや……召喚魔法というのは思った以上に厄介だなと」
そう言ってネルが深刻に考え出す素振りを見せる。フードを深く被っていて俺自身素顔を知らない……すなわち表情も分からないので、腕の動きや口調で判断している。というより俺以外の四天王そして魔王様は何故かフードを深く被り素顔が見えにくくしてるけど、どうしてかは知らない。
「それにあの大型魔獣達……それを殲滅とはな……」
「それでネル……なんで戻らせたの?ケガしたけどすぐにポーションで回復する程度だったし、戦闘も問題無いけど?」
「ああ。状況が変わった。お前にはそちらを任せたい」
「変わった?」
「アクヌムがしくじった……」
「あの筋肉バカ……また?」
あいつ頭の中も筋肉で出来てるんじゃないの?せっかくあんな楽しい玩具と遊んでたのに……。
「ということで……だ。お前はそちらを。アイツに薫という奴を始末させる」
「……アイツが?」
「確かに薫という奴には不確定要素がある。が、アクヌムには神霊魔法は効かないだろうし、仮にあっちがアクヌムから逃げ続けてもらっても、こちらとしては問題無い」
「そう……」
確かにアイツのあれは落雷を弾いたということで有名だけど……。
「ムリだろうね」
「うん?何か言ったか?」
「なーーんでも」
……あんな雑魚に負けないでよね薫?




