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これで終わり
秋になり修学旅行の時期がやって来た。
来年からは大学受験勉強などの事柄に追われ、ゆっくりできるのはこれが最後の行事になるだろう。
「だからってサービスエリアで買いすぎじゃないか?」
「これは家族の、これは恵子の家族の分」
「私も拓郎さんの家族の分も買いました」
現在義人とカップルである拓郎と恵子の三人で、高速道路移動中に立ち寄ったサービスエリアで買い物をしていた。
テレビなどで紹介されるほど人気な場所とあり、平日にもかかわらず人であふれている。
「あっちの食べ物、食べてみたいな」
「私もです、あのソフトクリームとか、他にもあの食べ物」
「食べ過ぎて大変な事になりそう」
「俺は二人のイチャイチャぷりに目が肥えてるよ」
SAにある食堂や食品を売っている売店の誘惑が所々から誘ってくる。
丸一日でも居られると思うほどの所であった。
「お前らこれから修学旅行なのに、そんな買って大丈夫なのかよ」
「腐らないものだし、それに旅館に着いたら送る予定」
「なら俺に荷物持たせるのやめないか?」
「俺達親友だろ?」
「こんな親友嫌だ」
「美味いの奢ってあげるから」
「ぐっ、そんな餌に俺が釣られ…、あ、あれ食いたい」
簡単に釣られる義人を見て、カップルは義人の為に食べたい物を注文する事にした。
テーブルに付き、だべりながら注文しているのものを待ち、それを食事する。
修学旅行に来た様な雰囲気ではなく、ただ遊びに来たかのようであった。
「ふう、食った食った」
「俺達も話し込んでしまったな」
「でも、楽しかったぁ」
三人は満足して立ち上がり、荷物を持ってゆっくりとバスへと戻ろうとするが。
「…バス忘れてた」
「あっ」
カップルは話すのに夢中で集合時間の事を忘れて居た。
青ざめる二人を見て義人は不気味に微笑む。
「クックック、かかったな」
「な、なに!?」
「貴様らが時間を気にせずイチャイチャするというのは分かっていた。
特に夏休み明けからなぁ!! だから俺はわざとゆっくり食べて貴様らのラブラブぷりに耐えてきたんだ! フハハハハ! 俺と一緒に怒られるがいい!!」
義人はそんなイチャイチャする二人に嫌がらせをしたかった。
だからこんな面倒な作戦を思いついたのだ。
こっそり抜け出して自分だけ帰還すれば怒られないというのは頭には無かった。
しかし。
「えへへ、ラブラブだって」
「なんか認められてるようで嬉しいな」
「…クッソたれっ!!」
本人たちは計画よりも、二人の様子をラブラブとカップルのようにしているとみられた事の方が嬉しかった。
「つうか夏からなんなの? ひと夏のアバンチュールなの!? 一線超えたの!?」
「え、あー、その、なんていうか」
「あぅ、…うー」
「なんなのその反応!? ねぇなんなの!? ねぇ!?」
義人の言葉に、しどろもどろしながら答えれずに顔を赤くしていた。
その様子は誰が見ても一線を越えたと返事をしているとしか見えない。
「そのだな、恵子の両親公認になってな…」
「私も拓郎さんの家族公認で…」
「だからなんだよ!? ねぇ!? 俺の目を見て話そうよ!? 本当にエッチしちゃったの!?」
「お、大声で話すなよ…、恥ずかしいだろ…」
「…あ、恥ずかしいよぅ」
「あああああああああ!?」
カップルは一線を越えていた。
脱童貞脱処女のカップルという事があまりにも衝撃的すぎて、義人は発狂しそうになった。
知りたくない、目を背けたい事実であった。
親友がもう遥か高みへ遠い場所に行った様な気分だ。
「うわああああああん!!」
「あ、おい」
「佐々木君!?」
義人は一人駆け出しバスの所へと向かった。
その後を慌てて追いかけるカップル、しかし思いもよらず早く義人の元に追いついた。
義人はぼーっと駐車場を見詰めて佇んでいる。
「そんな落ち込んで嫉妬するなよ、彼女探し手伝うからさ」
「わ、私も友達に話聞いてみるから」
励まそうとする二人だが、義人は反応を示さない。
どうしたのだろうと不思議に二人が思っていると、ゆっくりと振り返り二人を見詰める。
その表情は無感情で、感情を感じ取れない。
様子のおかしいく不気味な義人に二人は少し後退りして距離を取る、何をされるか分からないからだ。
「……バスが居ない」
「は?」
「え?」
振り絞って出た声は小さく、そして疑ってしまうほどの事であった。
慌てて聞き返すよりも先に周りを見回しバスを探すが、何処にも乗って来たバスがない。
「置いて行かれた?」
「ど、どうしよう」
心配になるカップル二人、だが何故自分達を探しに来ず、置いて行ったのか疑問に思った。
普通なら居ない事に気づいて、誰かが連絡の一つでも寄越すはずなのだが、それが一切ないのだ。
拓郎と恵子はスマホを取り出し、クラスメイトに連絡をしてみる。
「あれ? スマホにも出ないよ」
「どうしたんだろ? ま、まさか虐め?」
「拒否とかじゃないよ、電源か電波が届かないってなってるし、…トンネルかな?」
「しばらく待ってみようぜ、あーくそ、わり食った、もっとおごってもらうからな!」
「…変な計画してたじゃないか、はぁ、まあいいか」
三人はこの場に居ても仕方ないと思い、渋々と建物へ引き返していく、そしてイートインコーナーで時間をつぶしながら連絡を試みるが。
「おかしくね? 誰も出ないぞ」
「他のクラスの子達も出ないよ」
「お前ら友人関係広くね?」
義人はかけられる番号すべてにかけて、20分が経過していた。
それに引き換え拓郎と恵子はやっとかけ終わった様だ、しかしその全員から連絡は取れなくなっていた。
「これは異世界に転移したな」
「ねぇよ、…トンネルで事故って立ち往生とかの方が可能性高いだろ」
義人の言葉にツッコミを入れつつも、拓郎はまさかと嫌な予感が胸を締め付ける。
「俺、話聞いて来る、バスが何時出て、どっかでバスを見てるか人が居るもしれんし」
「否定しといてか」
「私も聞いて来る、行こう拓郎さん」
「ああ」
「…俺は一人で動けってかい」
二人一緒に人に尋ねていくのを見て、義人は重い腰を上げため息を吐き、聞き込みを開始した。
聞き込みをしていると、バスはすでに発射したという情報と、事故などは発生していないという事も分かった。
「学校に連絡してみたけど、連絡ないって」
「マジで異世界に行ったんじゃないだろうな…」
「マジかよ…」
「最初に言ったお前がなんでそんな驚いているんだよ…」
「俺も乗っておけばよかった」
「…さよか」
義人に呆れつつも、学校や家族に連絡をする拓郎と恵子。
その傍らで、義人は行政の人間に連絡を入れていた。
「…政府の人がここに来るって」
「俺達も先生が来るって言ってたけど、ここは政府関係の人優先だな」
「うぅどうなるんだろ…」
「恵子、大丈夫だよ、心配する事は無い、俺達はここに居るんだから」
「拓郎さん」
「ああー、こんな時でもイチャイチャと、本当に彼女作ろうかな、…そもそも出来るのか俺に」
まったく違う事で落ち込んでいる二組と一人であった。
その後到着した先生を待たせ、政府のの人がやって来たところに説明をした。
今回の事は大事になるはずだ、一クラス所か一学年に数台の車が失踪したのだ、世間は少し混乱が起きるだろうことは予想ができていた。
「そういうわけで、少しやばいと思うんだよ」
「なにがだ?」
「いやいや、俺等三回目、いや正確に言えば俺達に近しいのが三回転移してるんだぞ、めっちゃ怪しまれるだろ?」
「今回は俺達関係ないじゃんか。それに近しいならお前の彼女が飛ぶだろ?」
「それもそうだが…」
拓郎は世間からの目を気にし始めた。
自分一人なら慣れているが、恵子に関しては今回が初めてで、これから大変と分かっているので、少しでもそれを軽減してやりたかったのだ。
「それに距離的にもかなり離れてるみたいだし、別に問題ないだろ。
むしろ俺達置いて出た責任もある」
「…まあそうかな」
「そうだそうだ、というかどうせ悪だくみしている奴らが居て、それに騙されて出発したんだろ。
お前の隣わりと不良じゃないか」
「お前んところと別なクラスの恵子はどう説明するんだよ」
「同じ感じだろ? 彼氏できて少し弄りたくなったとか、冗談のつもりだったんだろうけど」
三人は知らないが、義人の推測した通りである。
偶然が重なった結果、今の事態になったともいえる。
「お前友達そんな多くないのにクラス人なりなんでわかるんだよ」
「貶してるのか…、まあいい、答えてやる、俺は異世界行きを見越してクラスの性格などを一通り調べてある。
これで異世界に行って暴れそうなやつとか、そういうのを警戒して行動できる。
性格いい奴は仲良くしてある程度助け合おうって算段だ」
「良い性格してるな」
「こういう努力こそが生き抜く術なんだぜ」
「そういう努力を別に向ければわりとリア充になってたと思うが…」
「うるせぇ!」
不安そうにしていた恵子は二人のやり取りを見てクスクスと笑い、少し明るくなった。
それを見て思わず笑みをこぼす拓郎に、二人はクスクスと笑い合い始める。
「隙あればイチャイチャしよってからに…。
はあ〜あ、俺も異世界行きてー!」
それがフラグになったんだろうか。
この瞬間義人、拓郎、恵子の姿がその場から掻き消えた。
それを見ていた政府の人間は驚愕し目を見開いた。
周りを見回しても三人の姿は無く、まるで最初から居なかったかの様に痕跡がなかった。
「夢でも見ているのか?」
「いや、あれはフラグってやつだな。
しかし…まさかこんな目の前で…」
「こんな光景が…」
取り残された者は転移と言う『災害』になす術ないという事を身をもって実感するしかなかった。
「謎の白い空間キタコレ!」
「嘘だろ…」
「え? 何ここ?」
以前最初に来た事のある様な空間が広がっていた。
そこには三人の人間しか居ない。
義人は早速何かできないかとステータスオープンなど様々な事を試し順々に実験していく。
「佐々木君は何をしているの?」
「魔法が使えないかとか、ゲームみたいにステータス出ないか確認しているんだよ」
初めて見る光景に恵子は少し引いた。
義人は見慣れていたので、何も感じる事は無かった。
そうこうしていると、凛とした女性の声が聞こえてくる。
全員聞き覚えのない声であった。
『数奇な運命の子らよ』
声は聞いているだけで威圧感が伝わってきて、三人の体を強張ってしまう。ただ恐怖と言う様なものは感じず、不思議と心が落ち着いた。
「すごい力を持っているか、本物の神か」
ぽつりとつぶやく義人だったが、その表情に余裕は無い。
拓郎と恵子はその声を聞いている事しかできない。
『汝らと話をしてみたくなった』
「なら目の前に現れて話をして欲しいものだ」
堂々と喋る義人を二人は止めたかった。
話の腰を折って、得体の知れない相手に波風は立てなくなかったのだ。
「よかろう」
声の主が三人の前に現れる。
その姿は女神と言えるほどの美しさと神々しさを兼ね揃えた30〜40代の美女であった。
シースルーのキトンを着込み、透けて見える肌だが、エロスを感じさせる。しかしその清浄さから不思議と興奮を覚える事は無かった。
「質問があるのだがいいだろうか?」
「かまわぬ、我の知っている事ならいくらでも答えよう」
「ありがとう、なら、まず俺達が最初に転移した時に現れたあれは、世界の精霊か神、そんなものか?」
「然り、アレはとある国の女神、その力は小さく、国と自身を維持するために人々を導き存在である、国と同時にその信仰心から生まれた小童である」
「ふむ、…推測とほぼ同じか」
義人はアーネストを大成し、成り上がり神になった者と思っていた、しかし国と同時に産まれた神ないしは精霊と分かり、長年の疑問を解消する事ができた。
続いて義人はこれまで疑問を取り除くように質問をしていく。
「次は俺達が二回目の、転移魔方陣が現れて俺達だけ転移しなかったときの事なんだが」
「あれは同じ世界にある別な国が召喚魔法を実行したものだ。
汝らにパスが、繋がりがあり、それを辿り魔法を実行したが、小童が施した魔法により逸れ、別な者が選ばれたのだ」
「やっぱりか、あの幼女が俺達に異世界に行けないように何か細工していたのか。
三回目は、大体察しがつくからいいか」
「然り、汝の思っている事で相違ない」
心を読んでいるのか、記憶を除いているのか分からないが、義人が言わなくても二人は会話をしている。
その光景に拓郎は少し不満があった。
自分の中で完結し、黙って聞いている二人には意味の分からない会話になっていた。
「なら今回のもか」
「先ほどのはあちらの小童共の暴走が招いた結果だ、汝らは偶然それから脱がれたに過ぎない。
小童の魔法ももうない」
「…なるほど」
義人は長年の悩みが消えたような、そんな晴れた表情になった。
「つまりあなた様はこちらの世界の神で、眺めていたと。
今回の事で何か手をうった、違いますか?」
「然り、それ故に世界は改革される」
「ああ、ついて現実ファンタジー化するのね」
「然り」
流石に二人よがりで話し、意味が理解できなくなり、拓郎は声を出して突っ込んだ。
我慢の限界だった。
「いやいや、俺達にまったく通じてないよ、義人説明プリーズ」
「ん? ああ、すまない、舞い上がっていた。
つまりこのお方はこちらの世界の神の一人で、異世界からの転移関連をするためにあっちにお灸をすえつつ、こちらの世界を改革するっていう話さ。
その改革ってのが、人間に魔力を持たせたり、例えばダンジョンみたいなのを現して人間を鍛えさせたり、世界各地にモンスターを出現させたりと。
ひょっとしたら人間自身も進化して姿が変わるかもしれないって話だよ」
「いやいや、そんな短い会話に…、まあもいいや、ファンタジーとか神だからで説明つきそうだ…」
「え? それでいいの?」
「そう思った方が気が楽なんだよ」
「そっか…」
拓郎は説明を聞き、深く考えるのをやめた、聞いても理解できる自信はは無い。
これから地球に色々大変な事が起こるという話だけは理解できた。
恵子はそれでいいのかと疑問に思ったが、考えるだけ無駄と拓郎に言われ恵子も深く考えるのをやめた。何か言った所で変わるとは思えなかったのだ。
「そうだ、俺達ってひょっとして何度か知らないうちに転移されようとしてましたか?」
「然り、幾度か転移に巻き込まれそうになっていた」
「え!?」
「彼女を含め幾度も」
「わ、私も!?」
「その都度に失敗していた」
「…うーん。あの幼女のか? でも彼女は」
「その二人は強い絆で結ばれ繋がれている、その影響で転移がされなかったのであろう」
知らなうちに一悶着あった事に二人は絶句した。
そして異世界に飛べないようにしたアーネストに感謝もした。
「幼女の仕掛けが今まで働いてたのか、けど今回ので解けたって事は、危ないじゃん」
「え? 何言ってんだ? ついに呪いから解放されたんだぞ」
「俺も恵子も危ない事とかしたくないって言ってるじゃん」
「うん…」
「故に汝らを呼んだのだ、力を与える為に」
そこで女神が口を開く。
その言葉に驚き困惑した。
拓郎と恵子は、この流れだと異世界に送られるのではないかと思い。
義人はチートかな? とあまり期待せず尋ねる。ただ簡単に力が手に入るとは思ってもいなかった。
訝しんでいる三人に女神は手をかざす、すると光が輝き、三人の体が光りに包目れた。
光のまぶしさに目が眩み目を閉じるが、ものの数秒で光りは収まる。
「なん、とも、ない?」
「少し体がぽかぽかします」
「魔力を得たという事か?」
「汝らは力を得た、確認してみるがよい」
それだけ言うと女神の姿がその場から消えた。
周りを見渡しても存在が確認できない。
「え、おーい、…えー」
取り残され困惑する拓郎であったが、その横で義人がとても嬉しそうに小躍りしていた。
何があったのか二人が義人を見る、狂っているのかと思うほどであった。
「お前らステータス調べられるぞ、念じればでるぞ、おほーっ!」
「…んなまさか、…なんか出た」
「本当に出た…」
三人の目前には日本語で文字が浮かんで見えていた。
そこには自身の名前や年齢に種族などが表示されていた、他にもステータスが表示されている、さらには特殊な能力、スキルがあるようだ。
「これ【解析】ってチートじゃあ、検索エンジン付きであっちの知識もこっちの知識も見放題じゃん、うおほほほ、鑑定の上位互換、しかもゲームも出来るとかPCとかスマホいらず〜♪」
義人は謎の音調に乗せて解説する。
スキルを使用して確認様々な事を確認している様であった。
二人にも同じく【解析】があるので使ってみると、義人と同じ様に様々な事を調べられる様だ。
「えー、ネットに繋がってる?」
「異世界の知識もあるから違うよ〜」
二人不気味なものを感じつつも、そこに他人の詳細まで調べられる事を知ってさらに驚いた。
物や人物、歴史まで事細かく調べられる、特殊能力を身についていた。
「魔法のつかいかた〜」
「お前ノリノリすぎるだろ、これ【解析】持ってる奴は個人情報見放題なんだぞ、やばいだろ」
「うぅ、私の情報も載ってる、えぇ、そんな事まで!?」
二人をプライバシーすらない事に投げ聞いてるが、それを無視して、義人は魔法の使い方を探る。
「おー、帰還も異世界に行く事もできるやん」
「…聞いちゃいねぇ」
「た、拓郎さん」
「ん?」
裾を引っ張られ、恐る恐る尋ねて来る恵子に向かい合うと、顔を真っ赤にしていた。
小首をかしげていると、手招きして耳打ちをしようとジェスチャーをする。
「わ、私達のスキル…」
「ん?」
言われて確認すると、そこには【解析】以外にいくつかスキルが存在している事があった。
【エンゲージリンク】【淫乱】【性長】拓郎と恵子に同じスキルがあった。さらに言うなら【絶倫】というスキルが拓郎にはついている。
「…」
「わ、私拓郎君だから、その、みだれ、乱れられるの…、嫌わないで」
「俺は乱れるのが好き」
とても恥ずかしそうに言う恵子の姿を見て、拓郎はとても愛おしくなる。
思わず勢いで抱きしめてしまい、そして頭を撫でる。
恵子は拒否するわけでもなく、幸せそうにしていた。
「またイチャイチャしよってからに。
ふふふ、俺の【解析】の餌食になるがいい、ぬふふ〜」
愛の波動を感じて正気に戻る義人は二人に【解析】スキルを使用する。
ノリノリで人の情報を見る義人だったが、情報を見るにつれて、先ほどまでのテンションが嘘のように落ちて行った。
「え? 俺よりステータス高いんですけど、しかもなんだそのスキル!? 嫌がらせか!! 俺だけの【解析】じゃなかったのかよ!?」
どうやら義人は二人の話を一切聞いていなかった様だ。【解析】が二人にもあると分かりショックを受けていた。
さらに二人のスキルを見て驚愕する。
【エンゲージリンク】それは深い仲で結ばれた者だけが得られるスキルで、互いに一定の距離なら会話でき、スマホいらずである。
【淫乱】は性行為の疲れなどの負担をほぼ無くす効果などがある。【絶倫】に至っては言わずもがな。
さらに【性長】というスキルが、二人にはあまりにも似合うスキルであった。
「なんだその【性長】って!! 一人でしなければどんな行為でも強くなるってか!? はぁこのバカップル共は!!
俺への当てつけ気持ちいいか! ちくしょおおおおおおおおおおお!!」
自身の恥ずかしい秘密を暴露されて睨む二人。
【性長】の効果は、一人での自慰などの行為以外、二人でする性行為などで自身の身体などを強化していくというスキルだった。
それを悔しそうにして睨むように説明を読む義人、独り身には辛い情報であった。
「人の情報覗き見るなよ」
「うるせぇ! 俺なんか、俺なんかなぁ! お前の敵を倒して強化するタイプだぞ! ただの経験値倍増とかステータス伸びよくするだけみたいなもんだぞ!」
「…別にそれでいいじゃん」
「独り身馬鹿にすんな!!」
とても面倒な義人であった。
そんな義人を放っておいて、拓郎は一つ疑問が浮かんだ。
ステータスやスキルに気を取られていたので忘れて居たが、最大の問題があった。
「ところでさ、ここからどうやって出るの?」
「知らん…」
「見渡しても出口無いよ…」
何もない空間で、三人は途方に暮れる。
転移魔法をしようしようと思うにも魔力が足りず発動しなかった。
「なんだこのオチ」
その言葉が虚しく空間に響き渡るのみだった。
ここまで読んでくれた方に感謝を。