やっぱり『機体』ってこう、かっこいいじゃない?
島の内部には試作兵器であるVPSのデッキ兼発進カタパルトがある。
パイロットである若い軍人の目の前には大きなモニター。両手にあるレバーにはなんのボタンなのか四つほどのボタンが付けられており、このレバーとボタンで基本的な動きをするようだ。
『ヴェネジェクット炉、出力安定。各部異常なし、発進準備OK』
通信をよこすオペレーターはこのVPSが万全の状態で、いつでも発進できるということを伝えてくれる。またそれはオペレーターが伝えなくても、横にあるサブモニターに映る機体の状態で確認することができた。
パイロットは自分でもサブモニターで機体に異常個所がないか調べてから返事を返す。
「通信良好、いつでも行けます」
するとすかさずオペレーターが発信準備を進めてくれる。
『カウントいきます。さん、にい、いち、ヴェネジェクト試作機、発進!』
オペレーターの言葉に合わせて、カタパルトが動いた。
パイロットである若い軍人の体には、瞬間的に強い力で押さえつけられる。Gというやつだ。
「う、ぐぐぐ、ぐう!」
体にかかる強烈なGだが、パイロットに選ばれただけはあるようで耐えきってみせた。前方方向上り坂にひかれてあるカタパルトから、一気に島上空に投げ出された。
パイロットの若い軍人は、レバーとレバーについているボタンでバランスを取る。
「飛行ユニット性能テスト始めます」
背部に付けてある飛行ユニットが勢いよく轟く。
左右に分かれた飛行ユニットは、翼の様であり、地上から見る戦士たちはアレを悪魔みたいだと言う。
「ユニットブースターだけではやはり完全に飛ぶことはできないが、背部や脚部のスラスターを合わせれば……よし、高度安定。推進剤使用料は、この分だと5分ギリギリ持つくらいかな?」
ざっくりとした計算をして、パイロットは満足そうに頷く。
『どう? 飛行ユニットの性能は』
オペレーターからの通信が入ってくる。
「うーん、やっぱり推進力不足が否めませんかねえ」
『これでも技術部は頑張っているのよ? まあ最悪IAI積んでIOSで機体を軽くするなり考えるけど』
「機械にIOSさせるのって相当コストかかりません?」
『それを言うならアナタが今乗ってるそれのほうが金食い虫よ。もう上はとことんやってそれを完成させる気よ、いまさらIAIくらいポンと作るでしょう』
オペレーター兼、現場指揮官はやや呆れたように言う。
「へえ、すっごいっすね」
『それだけの機能を持つ兵器ということよ。それこそ「舞姫」が霞んでしまうほどのね』
「俺は今時代の移り変わる瞬間を体験しているんですね」
『じゃあアナタはそのまま回収ポイントまで飛んで行ってね。いける?』
「ええと、ああ。あそこですね何とか燃料も足りそうです」
『オーケイ、じゃあまた後でね』
オペレーターは通信を切った。
・ ・ ・
鈴木と天汰は空を見上げて、悠々と空を飛んでいるVPSを眺めていた。
「やっぱりかっこいいな、人型ロボットは」
天汰が目を輝かせる。
「でもさ天汰、俺らアレと戦わなければいけないんだぜ? 目下、まず戦力不足が目立つ俺らがアレを倒すためにはどうすればいいのか考えてくれよ」
「考えるのはすーさんの仕事。俺の仕事はみんなを守ること、攻撃は対象外」
「くそ、防御あるのに攻撃力ポンコツめ」
「そもそも普通の平均以下の戦力のすーさんには言われたくない。俺は防御が特別際立っているけど、異世界補正があるから素手でも人間相手には不自由しないよ」
「人間じゃなくて人型ロボット相手に戦力になりますか?」
「……アレはちょっと厳しいんじゃないかな……」
「チッ、クソの役にもたたねぇ」
鈴木は聞こえるように舌打ちをする。
(せめてアイリスがいてくれれば状況は変わったのかもしれんが。天汰の防具でこれだからアイリスの腕輪足輪はあの装甲貫いてくれるだろう。多分)
そこまで考えた時点で、所詮ないものねだりなのだと気が付く。
(つーか、ソーマのクソ野郎も最初からVPS壊せって言えばいいのに何が『それは君たちが自分で調べてくれ』だ、気取ってんじゃねーぞ)
結局鈴木は三時間によるメールのやり取りでうまくソーマを騙してこの世界での目的を聞き出したのが昨日の夜のこと。
(思い出すとかなり面倒だったな。まあ、この世界で機械(VPS)壊したら黒石たちと合流させてくれるって言うし、頑張るけどさ)
この世界での鈴木と天汰の目的、それはVPSの破壊だった。
ソーマ曰く、『VPSは実はこの世界の技術ではないんだ。それなのにこの世界にVPSがあるってことは誰かが技術を流したってことだね。こうなるとこの世界の流れが間違った方向に向かっちゃう。だから二人はVPSを壊してくれ』だそうだ。
そういうことで二人は弱点でも探そうとこうしてやってきているのだが、いかんせん並の人間以下の鈴木と、異世界補正を受けているとはいえ攻撃力の乏しい天汰ではVPSに対抗する戦力がなく、頭を悩ませている所だった。
(だからこその、最初にソーマは『舞姫』を探せだの言っていた訳か)
二人に足りない攻撃力を『舞姫』エイラに頼る寸法。しかし、これは鈴木はあまり乗り気ではなかった。
(可愛い年下の女の子の思想を曲げてまでそれは成し遂げる必要があるのだろうか、いやない(反語)。はあ、エイラちゃん可愛かったな。個人的に水色の長髪の女の子ってツボなんだろうな)
なんてどうでもいいことを考えていた。
結局この日、VPSに対抗する何かも思いつかないまま一日が過ぎてしまうのだった。




