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異世界冒険記  作者: 九重九十九
ペルウィーン国編
27/69

他人の家にふてぶてしく上り込むのは、勇者の特権

 鈴木は南の街を後に、次は東の街に移動していた。この頃になると、流石に日も暮れて、辺りは暗くなり始めていた。


「南の街の感想、つまらん」

「本当に、冒険者の家があるだけでしたね」


 ついでに、聞き込みの方もこれといった収穫は無かった。冒険者は何でも知っている、と思っていた鈴木のアテが外れたようだ。


(ギルドを間に挟まなければ、ちゃんとした情報すら手に入らないということなのか?)

 鈴木は役に立たなかった冒険者たちに、心の中で悪態をつく。


「あるじ、このまま東の街に行くつもりですか?」

 心の中で悪態をついていると、隣のアイリスが質問してくる。


「え? うん、そのつもりだけど?」

「その、こういうことを言うのはアレですけど、スラム街で夜を過ごすとか『バカ』のすることだと思います」


「ん、ちょっと今バカのところ、力入ってなかった?」

「気のせいだと思います」


「そう」

「とにかく、一度適当な民家にでも泊めてもらって、翌朝スラム街を見に行ってはどうでしょう」


「そうは言ってもな、俺、実は枕が変わると眠れなくなる体質なんだよ。どこでも寝られる逞しいアイリスちゃんとは違って俺は繊細なんだ」

「そういう問題ではないです! あるじは夜のスラムの怖さを知っていますかっ!?」


「知ってたらこうしてふざけてないだろ」

「ですよね! あとふざけているっていう自覚はあったんですね!」


「自分が何をしているのか、それくらいは分かっているつもりだ」

「つまり自覚してるのにあえてふざけているんですねそうなんですね!」


「そーなんです! なーんつって」

「……死ねばいいのに」

 ボソッと、聞こえてはいけないような声が聞こえたような気がするけど、きっと幻聴だろうそうだろう。


「まあ、アレだよ。今まで俺は相当無茶やってきたんだけどさ、でも不思議とこうして生き残っている訳だよ」

「……だから何なんですか」


「つまりだ、これは俺だけじゃなく天汰たちもなんだろうけど、どう足掻いても死ぬことは無い何かしらの加護が働いているとみていいはずだ」

「そんな都合のいいこと、ある訳がないじゃないですか」


「そう」

 鈴木はふう、と溜息をつく。そして、おもむろに腰の拳銃を引き抜き自分の頭に――


 ガツン! ぶん殴られたんだと気が付いたのは、夜景と共にアイリスが鈴木を見下ろしていたのを確認できた後だった。


「バカなんですか! 本当にあるじは何を考えているんですか!!」

「――アイリスちゃんちょっとは手加減してよ、割と痛くて起き上がれない」


「何言ってるんですか! アナタ自分が何をしようとしたのか分かってます!?」

「拳銃で自分の頭ぶち抜こうとしてた」


「ですよね! あるじのことですからきっと私が止めなかったら本当にやってますよね!」

「でもこれで分かったでしょ、俺はまた死ななかった。俺の加護説、これで証明できた」

 鈴木はまだ残る痛みをこらえながら起き上がる。


「銃は……あった」

 拳銃もちゃんと回収する。


「――あるじ、あるじは頭がおかしい人なんですか」

「それは割と今更な事を聞くね」


「聞いたわたしがバカでした」

「まあ何かあっても加護あるし、アイリスちゃんが守ってくれるし」

 過去、幼女に守ってもらおうなどと考えた人はどれほどいるのだろうか。


「もういいです。好きにしてください」

「そう? なら、このまま東のスラムに突撃しよう」


「――わたしがここまで言っても考えを変えないんですね、もういいですけど、どこまでも付いて行きますよ」

 アイリスは深い深い溜息をついた。


 ・ ・ ・


 スラム街。

 クラリアと天汰はここで息をひそめていた。

 手ごろな家を強襲して、『一晩泊めてくれますか?』の質問に『イエス』と答えさせたりしたのだが、そこは割愛する。

「とりあえず宿も手に入った事ですし、状況をひとまず整理しましょうか」

 と、ソファーに足を組んで座るのはクラリアだ。

「そうですね。ちょっと俺も状況を整理したいと思ってたところでした。あ、晩ご飯もついでにお願いしますね」

 家主の男(顔にアザあり、つい先ほどできたかのようだ)にそうお願いをして、クラリアの向かい側の床に腰を下ろす天汰。家主の男は「ただいま準備します!」と走って部屋から出て行った。

「……ずいぶん、怯えていましたね。流石にやりすぎましたかね」

「ちょっと罪悪感感じないでもないけど、状況が状況だし、仕方がないと割り切りましょう」


「そうですね」

「さて、話を戻しましょうか。ジルさんがどうしてあんな行動にでたのか。クラリアさんの十手を欲しがってましたけど、何か心当たりは?」


「それはおそらく、この十手の能力が欲しかったんだと思います」

 クラリアは、実際に腰ベルトから十手を引き抜く。


「能力、ですか?」

 天汰はよくわかっていないようだ。


「この世界に、『月下魔滅』という魔法の類を一切無効化するナイフがあるんですが、私の十手は、その能力をコピーしてもらっているのです」

「つまり、その十手は対魔法の能力があるってこと?」


「そうですね。某、異能ブレイカーの右手と同じような認識で間違いないかと。元々、私がクナスナイルに入れたのもこの十手の能力を買われたものなので」

「そういうことだったんですか」


「ジルさんは、きっとこの国で何かやろうと企んでいるはず。十手欲しさに仕掛けてきた理由としては辻褄が合います」

「なるほど」


「問題は、何をしようとしているのか。目的は何なのか。私達はこれからどう動けばいいのか」

「ジルさん達の目的はまだ分からない。けど、もう俺達があそこに戻れる雰囲気ではなさそうだ。大和を残してきたけど、アイツがどうなったかも心配だ」


「もし、ジルさんがこの国でなにか事をなそうとするなら、私達が敵対したと知らない大和さんはきっとそのままうまく使われることになると思います。あの人の性格からしてきっとそうするかと」

「なら、大和には今のとこと危険はない、か。黒石とすーさんはどうだろうか」


「鈴木さんは、まあ、どうせ大人しくしているような方でもないですし、多分今も勝手にふらついているのではないでしょうか。問題は黒石さんですが、スイマセン、黒石さんに付いては使えるようになった魔法というのを見ていないので、ジルさんが運用するのかしないのか、どういった判断をするのかわからないです。滅多なことが無い限り危害は加えられないとは思うのですが……」

 クラリアにしては、珍しく歯切れの悪い言い方になってしまった。


 コンコン。


「晩飯の方、準備させていただきました」

 先ほど走って出て行った家主の男が入ってきた。手にはお盆にパンが二つ乗っている。

「まじ、冗談で言ったつもりだったんだけど」


 天汰は立ち上がって、とりあえずお盆を受け取る。

(けどまあ、普通に考えてこれ食べれないなぁ)

 と、内心苦笑する。


「あ、そうだ、ちょっといいかな」

「へい、何か」

 家主の男は少し怯えた表情をしながらも、逃げ出したりはしない。


「最近、この辺りというか、この国で何かおかしなことというか、変わった事は無かった? なんでもいい」

 この際、ついでなので情報収集をしておこうという魂胆である。クラリアのいう、街の雰囲気がおかしいというのも気になっていた。


 クラリアも、天汰の意図を理解する。

「そうです。例えば、大きな争いの準備が進められているとか、どこかの組織が戦力増強しているとか、そういう些細なことでもいいです。なにか知りませんか?」

(些細ってなんだっけ?)

 天汰は、クラリアのいう『些細なこと』について少し考えを巡らせる必要があると思った、けど早急に考えなければならないという訳ではないので、今はこっちに集中する。


「――シラネェ。何の話かさっぱりですじゃ」

「……そうですか」

 クラリアは目を瞑る。

(まあ、そうそううまく情報を持っている人に出会える訳もないですからね)


「いーや、コイツは何か知っている。これは嘘をついている時の声だ」

 当然に、堂々と部屋に入ってきたのは鈴木とアイリスだった。


「すーさん!? それにアイリスちゃんまで、どうしてここに?」

「うん? 不法侵入」

「なるほど」


 納得した。納得されてしまった。


「他の家からある程度離れていて、尚且つ一人暮らしの家を狙って押しかけてみれば……君たち、駆け落ちでもしたの?」

「すーさん、実は冗談にならないくらい今ヤバい感じなんだ」

「ほう?」

 鈴木たちは、天汰たちと合流できた。

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