姉妹
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姉妹が、再会する。
あらかじめ、落ち合う場所に決めていたというアジトに、田島とエイナが待っていたからだ。
しかし、姉妹は抱き合って再会を喜んだりしなかった。
エイナは妹を見ていたし、アーシャの魂は、まだ戻ってきていなかったのだ。
「そう…死んだのね」
椅子に身体を預けたまま、エイナはそれだけを言った。
父親のことを、アーシャの様子から察したのだ。
「とりあえず、海外へ出ましょう」
ワンが、エイナの言葉に反応しないように、これからのことを切り出す。
しかし。
その場にいた全員が――エイナの笑みに氷づけにされた。
「いいえ、ワン。まだやっていないことがあるわ」
車を出して。
細すぎる身体で、エイナは立ち上がる。
反射的に、田島が彼女を支えた。
「エイナ様…どこへ?」
外に向かおうとする彼女を、ワンが立ちふさがって止める。
「いいから、車を出して…アーシャも乗せなさい」
これ以上、彼女の声には逆らえないと思うほどの凄味。
正確な意図は、大樹にはわからない。
ただ。
相当の覚悟だけは、そこに感じた。
「他は、ゆっくりしていて…助けをありがとう」
結局――田島も大樹も、日本ヤクザも、みんなおいてけぼりだった。
ワンと、もう一人の元々の部下。そして姉妹だけで行ってしまったのだ。
「さて、何をしでかす気か」
田島の視線が、心配げに閉ざされたドアを見送った。
「わかりません…ただ、もう僕達の立ち入りは拒否されました」
気にはなるが、エイナという人間に短時間でも触れた大樹は、彼女が無謀なことをするとは思えなかった。
その答えは、ほんの一時間後に明らかになる。
彼女らが住んでいた本宅が――原型をとどめないほど、吹っ飛んだのだ。