君と自分だけの秘密だ
「オデット様、お目覚めになったのですね!」
「オデット様、気分はどうですか!?」
ペルとシアがのぞき込んでいる。
状況を理解しようとすると……。
「今、シリル様を呼んできます!」とシアがそばを離れ、残ったペルが「起き上がりますか?」と聞かれ、頷いて上体を起こす。自分が白い寝間着姿であることに気づく。そういえばペルとシアも、メイドのように、黒のワンピースに白いエプロン姿だ。
ここはどこなのだろう……?
私が上体を起こし、枕に背を預けると、ペルが話し出した。
「オデット様はキル様と共に、黒のワームと黒のギガースを殲滅したことになっています。倒したのはキル様で、オデット様は逃げ遅れたということになっていますから。魔力の件はバレていません!」
そう言うとペルが、グラスに注いだ水を差し出してくれる。
それを受け取り、水を一口飲む。
喉が渇いていたのか、ごくごくと残りも飲んでしまう。
「コロン原生林の一部は、火山噴火後のような状態でした。それが収まってから、シリル様とレウェリン様、それにセイン様も。再びコロン原生林へお戻りになり、倒れているオデット様とキル様を発見。ヴィレンドレーへ連れ帰ったのです。ここはヴィレンドレー城の客間。裏門に陣取っていた魔族は殲滅され、逃走した魔族も捕えられました。すべて、終わりましたよ」
すべてが終わった。
いや、でも私はキルのことを……。
血の気が引く思いになった時。ドアがノックされるのと同時に開き、シリルが飛び込んできた。
空色のシャツに白のズボンと、眩しいほどの爽やかなシリルを見て、ついさっきまで見ていた夢の中の少年シリルの姿が重なる。十五歳のシリルと私は、確かに会っていた。それを夢の中で思い出していたのだ。
「オデット!」
ふわりと抱き寄せられ、そしてギュッと全身でシリルを感じると、涙が自然とこぼれ落ちる。
「ちゃんと約束を守ってくれてありがとう、オデット。生きて自分の元へ戻って来てくれた」
「シリル……。だが私は叔父上を……」
「……ああ、キル殿か」となぜかシリルがため息をつく。
命を落としたキルに対する反応としては、随分とよそよそしく感じてしまう。
「シリル、叔父上は」「オデット。生きている」
これには驚き、言葉が出ない。
私は……とんでもない炎の魔術を何度もキルにぶつけている。
そしてキルは、魔力を抑えるためのチョーカーを私の首につけ、目の前で果てたと思ったのに!
「これはオデット。君と自分だけの秘密だ」
シリルの黄金の髪がサラリと揺れる。
二人だけの秘密なんて言われると、急にドキドキしてしまう。
「キルは魔王だ」「え?」
ぽかんとする私を見て、シリルがふわっとキスをする。
そちらに意識を持っていかれそうになるが、今とんでもない情報がもたらされたと思った。
「シリル、叔父上は……」
「叔父、などではない。ご先祖様だよ。初代魔王。諸悪の根源と言ってもいい。長きにわたる人間と魔族の戦いの原因を作ったのだから……。でも本人は猛省している。今回、戦争の終結にも手を貸してくれた。よって目をつむるが……。まったく。魔王だったらあれぐらいの黒のワームも黒のギガースも一人で殲滅できただろうに。オデットを巻き込むなんて、信じられないな」
「初代魔王は死んだのではなかったのか……?」
茫然とする私に、シリルは教えてくれる。
「不死身なんだそうだ。天に戻ることもできず、この地上で生きていくしかないが、魔族はすっかり嫌われ者だ。そこで戦争を終結させようと、キルは自分達に協力すると申し出た。まあ、それはそれでいい。今回、オデットの魔力を解放したのは『ガス抜き』だと言っていたよ」
なるほど。あの飄々とした性格と世渡り術は、長きに渡る経験の賜物ということか。
それにしても……。
「ガス抜き……」
つまりは私は魔力を溜め込んだ状態であり、シリルという伴侶を得たものの。シリルがどれだけ頑張っても足りないぐらい、魔力が強まっていた。今回、いい機会だったので、放出させたというのだ。
「今回の魔力暴走で、オデットの中の魔力は、半分は減ったというのがキルの見立てだ。あとは自分に対し、『頑張るように』と言われた」
ひょんなことで魔力暴走が起これば、大変なことになっていたと思う。よって今回、溜まっていた魔力を解放できたのは、ある意味良かった。そうしてそれをできたのは……キルのおかげだ。その点はキルには感謝だろう。
だがしかし!
シリルに「頑張るように」って。それはシリルも知ったということでは!?
つまりは私の魔力の特殊なメカニズムを……。
全身が羞恥で赤くなったところで、セイン、レウェリン、ミルトン、レダ、マーシャルソンを連れ、シアが部屋に入って来た。























































