どちらも可愛らしい。
フェンリルの子どもを追いかけ、森の奥深くを進んだところ……。
黄金の髪の少年がいた。
そしてただの碧眼ではない。
空を映し込んだような天色の瞳をしている。
なんて綺麗なんだろう。
魔族ではない。
人間の少年だ。
その少年にフェンリルが抱きついていた。
まさか人間がフェンリルを飼っているのか……?
「少年。そのフェンリルは、君が飼っているのか?」
尋ねられた少年は、驚いて私を見た。
私の瞳を見て、次に髪色を見て、混乱した顔をしている。
それはそうだろう。
魔族の女と言えば、髪は銀髪。
私のような黒髪は珍しい。だが人間では黒髪の女もいると聞いている。
それでいて私の瞳はルビー色。
人間なのか、魔族なのか。
少年は判別できないようだ。
まあ、魔族と言えば、怖がるかもしれない。
そこでこんなことを言ってしまう。
「こんな瞳の色をしているが、私は人間だ」
私の言葉に、少年はホッとした顔になり、甘えているフェンリルの頭を撫でた。
よく見るとそのフェンリルの頭には、ダイヤの形で白い毛が生えている。あんな白い毛が生えているなんて珍しい。
「この子は、自分が飼っているわけではないんだ。自分が所属している騎士団で、魔獣との戦闘があり……。戦闘の後、この子が残されていた。魔獣……だろう? こんなに可愛いけど。先輩は殺す必要があると言ったけど、別の先輩が『もしどうしてもというなら、魔獣が住む森がある。そこへ捨てて来い』って言われて……」
「なるほど。今はこんなに小さく可愛いが、フェンリルはとても大きくなる。成獣で馬よりも大きいのが普通だ。君の手には負えなくなるだろう。この森であれば、きっと問題なく成長できる」
「君は……魔獣に詳しいんだな。そうか。フェンリル、って言うのか。こんなに可愛いのに、馬より大きなサイズになるなんて……」
少年はフェンリルと見つめ合っている。
どちらも可愛らしい。
まだ完全に肉体は成長しきっていないと思うが、日々、訓練していることは伝わってくる。数年で立派な騎士になるだろう。騎士として戦場に出れば、魔獣だって倒す必要がある。魔獣に対して愛着なんて、持たない方がいいだろうに。
それにわざわざフェンリルを捨てるために、森までやってくるなんて。
きっと心の優しい人間なのだろう。
「しかし、君に懐いているな」
「そこが困っていて……。森に放って、自分は帰るつもりなのに、気づくと戻って来てしまい……」
「帰るに帰れないなのか?」
少年はコクリと頷く。
頷いた少年の頬を、フェンリルが嬉しそうにペロッとなめている。
「……仕方ないな。私が預かろう」
「え」
「私がそのフェンリルを抱っこしておく。君はその間に、森から出るといい。多少、暴れるかもしれないが、そこは私がなんとかする」
この提案に少年は驚き、不思議そうに尋ねる。
「……君はこの森で何をしていたの?」
「わ、私か。私は……その……珍しい花が咲いていると聞いて、摘みに来た」
「この森、魔獣も出るし、魔族も住んでいると噂を聞いたことがある。一人でこの森に?」
あどけない少年かと思いきや。
騎士見習いとして訓練を積んでいただけあるな。
ちゃんと観察している。
「まだ明るいし、この時間は魔獣や魔族は少ない」
「なるほど。……女性に頼むなんて、騎士の端くれとして、不甲斐ないな」
「そんなこと関係ない。懐いている魔獣との別れを一人でする方が無謀だ。ほら、預かるから」
そう言って私は両腕を広げるが、フェンリルは少年から離れがたいようだ。
「クゥ~ン」なんて可愛い声で鳴いて、ますます少年にすがりつく。
仕方ないので首根っこをつまむようにして、受け取ることにした。
「ありがとう。君のおかげで助かったよ。……良ければ名前を聞いても? ぼくはシリル・ウィリアム・モンド。今は騎士団に所属しているけど、いつか勇者になって、自分のパーティを持つつもりなんだ」
魔王討伐パーティを立ち上げるつもりか。
では私を狙う敵になってしまうな。
これには苦笑するしかない。
それに本名を明かすわけにもいかないだろう。だがミドルネームなら……。
「私はルネだ。平民だからこの名前しかない。ではシリル、この子は預かった。森を出るとい」
そこで私は固まることになる。
シリルの顔も青ざめていた。
低い、怒りのこもった唸り声が聞こえてきたのだ。























































