気持ちが乱れまくる
剣撃の嵐。
まさにその言葉がピッタリだった。
剣と剣がぶつかり合う音が絶え間なく響き、セインは押される一方。
しかもシリルの左右の剣の動きが読めない。
後退するために、足だって素早く動かさないといけなかった。
もう見ている方はハラハラドキドキを通り越し、気持ちが乱れまくる。
シリルが優勢なのは嬉しい。
でもそうなるとセインを応援したくなる。
ではセインに勝って欲しいのかというと、そうではない。
「!」
もはやシリル勝利かと思ったのに!
セインは左腕を斬りつけられながらも、シリルの右手の剣を奪ったのだ。
つまり左腕を斬りつけたことで、シリルの気持ちが一瞬緩んだ隙をつき、右手の剣を打ち落とした。
これにはシリルが二重の意味で衝撃を受ける。
まず、剣を落とす事態に。しかも利き手の右手の剣を落としたのだから。
だが。
ここがシリルの底力なのだろう。すぐに気持ちを切り替え、左手の剣を持ちかえるのかと思ったら……。
左手の剣で斬り込みをかけ、その直後に右手で短剣を取り出し、投擲したのだ! あのナイフ投げの要領で!
セインはシリルの左手の剣を受けていた。
飛んでくる短剣を避けようとしたが間に合わず、それは左の肩を深くかすった。
セインの左手は既に斬りつけられていた。その上で肩も負傷することで、剣を両手で構えているが、左手には力が入っていない。
シリルが両手で剣を構え、何度も前に出て振り下ろす。
その打撃の威力はすさまじく、セインの剣を持つ両手が荒地へと下がる。
もう勝負が決すると思ったその時。
黒い火成岩に亀裂が走り、そこから飛び出してきたのは、黒のワームと言われる巨大な魔獣!
その姿は翼のないドラゴンとも、大蛇とも言われるが、全身を鋼鉄のような鱗で覆われ、口から猛毒を吐く。それが何体も這い出てきた。
さらに。
黒のギガースと呼ばれる太古の巨人族が、何体も出現したのだ。
「まさかこれは」と絶句したキルが叫ぶ。
「カイテリアだな。アイツ、敗北を悟り、そしてここで決闘が行われると知り、魂を売り払った」
「どういうことだ、叔父上!」
「魔力の強さは、その魂に反映されると言われている。そこでカイテリア自身の魂、カイテリアと同格の魔力を持つ魔族の魂。それと引き換えに、これらの魔獣や巨人族を召喚したということだ」
それはつまり、既にカイテリアと彼を祭り上げた幹部クラスの魔族は、もうこの世にいないことを意味する。自身の魂と等価交換で、今ここに現れた魔獣と巨人族を召喚するなんて。とんでもない自爆攻撃だ。
「後先見ない戦法をとる奴だ。しかしどうしたものか。ここには私達四人しかいない。……この数と、このクラスの魔獣は、さすがに私達だけでは倒しきれないぞ……」
キルがそんな諦めの言葉を口にするが。
そう言いたくなるのもよく分かる。
全部で何体いるのか、それすらも分からない。
「レウェリン、防御!」
シリルの叫びにハッと顔をあげると、黒のワームが一斉に毒を噴射した。
もしも。
レウェリンの防御魔法が間に合っていなかったら。
あの黒紫の毒を浴び、全身が溶け、骨だけになっていたはずだ。
心臓が信じられない程、ドキドキしていた。
「レウェリン、回復してくれ。キル、戦えるか!?」
「……シリル卿、さすがにこの数を相手にするのは……」
腰が引けているキルに反し、声を上げたのは……。
「……わたしのことを回復してください。ワームは一度毒を噴射すると、十分間は毒を使えません。数は多いですが、毒を溜め込む腹と首を切断できれば、脅威ではなくなります」
セインの言葉に、一瞬沈黙ができた。だがすぐにシリルが反応した。
「セイン、助かる。数えたところ、三十体だ。まずは黒のワームの殲滅と行こう」
「ああ」
まさかシリルとセインがタッグを組むなんて!
レウェリンは二人に回復を魔法をかけた。
そしてキルには「ほれ、この剣を使え」とずしりとした大剣を渡している。
「ではレウェリン、魔法でサポートを頼む。セイン、君は風の魔術があるからサポートは……」
「魔法のサポートは不要です。魔法使い殿には、シリル、君のサポート、そしてオデット様の防御をお願いしたい」
そう言うと、セインはキルを見てこんなことを告げた。
「……キル殿、あなたは風と炎と水……三大元素魔術、そのすべてを使えますよね? ちゃんと戦ってください」
「そうなのか、叔父上!?」
私は思わずキルをガン見してしまう。
三大元素魔術が使え、さらに地を操り、空を飛べるのが魔王だ。
魔王の弟だが「自分は大したことがない」とキルはいつも口癖のように言っていたが……。
実はすごい逸材なのでは……?
「まあ、年寄りだからな。無駄にいろいろとできるようだ。……仕方ないな」
そう言いながらもキルは、再び上着を脱いだ。




















