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乙女ゲームのラスボスですが、勇者と結婚することになりました。  作者: 一番星キラリ@9/2やられる前に発売:商業ノベル&漫画化進行中


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彼の戦略

 シリルとセインの決闘。


 その勝敗はすぐになんてつかない。

 最初は両者の睨み合いから始まる。


 お互いの力量は、過去の戦歴で分かっていた。


 一瞬の隙が、命取りになると分かっている。


 何より、剣と剣が触れあえば、そこからはノンストップにも近い戦闘になると、互いが理解していた。


 キル、レウェリン、そして私は息を呑み、その本当の始まりを待っていたが――。


 先に動いたのはシリル。


 その動きは機敏!


 大剣ではないのだ。素早く動けて当然と言えば、当然。

 そうだとしても早過ぎる!

 魔法のサポートはないのに。


 セインの銀色の瞳が、その人間離れしたスピードに、警戒の色を強めている。


「……!」


 間合いに入ったシリルが、攻撃を開始した。


 セインは、突きの攻撃で踏み込んできたシリルの剣を、冷静に避けてかわした上で、自身の剣で払う。さらにシリルの手から剣を叩き落そうと、自身の剣を振るう。


 シリルはいわゆる細マッチョ。その腕は筋骨隆々というわけではないが、剣と剣がぶつかる衝撃にも動じない。しかもセインから剣を払われ、動きを止められたのかと思いきや! 次の瞬間にシリルは、またも攻撃をしかけている。


 一方のセインは、しばらくシリルの攻撃を受け流していたが――。


 身長はわずかにセインの方が高く、リーチが長い。まさかのその間合いで、“瞬砕の一撃”改め風の魔術を伴わない“断命の一撃”を繰り出した。


「ああっ」と思わず、悲鳴が漏れてしまう。


 あれを避けたシリルの身体能力は、奇跡に思えた。しかも避けた後、バランスを崩したと思ったら、脇腹を狙うかのような低い位置からの斬りの攻撃。


 最初から突きの攻撃を続けていたシリルから、突然斬り込みの攻撃を、しかも低い位置から、さらにはバランスを崩したと思っていたら受けたのだ。今度はセインがあわやとなり、私はまたも悲鳴を上げてしまう。


 これにはセインも驚いたようで、素早く後退し、間合いをとる。


 だがシリルはその間合いをつめ、踏み込んでいく。


 セインは押され、どんどん後退していた。


 突きによる攻撃が続き、その時。


 驚いた。


 シリルが繰り出した一撃は、まさに“断命の一撃”。


 これを見せられたセインの顔色が変わる。


 それはそうだろう。自身の渾身の一撃を、シリルが繰り出したのだ。しかもシリルは、斬り込みの攻撃を得意としているのに。それだけシリルの剣技が優れているということだが……。


「……!」


 手首を巧みに動かし、左右、上下、次にどこを突くか分からないというスピードで、セインがシリルに迫る。前進するセインに対し、後退しながらこの猛スピードの突きの攻撃を受けるシリルは、どう考えても不利だ。


 できれば剣で受けるのではなく、受け流したいが、セインは直前で手首をひねり、それをさせない。


 さっきとは一気に形成逆転で、シリルが押されている状態になった。


 だが。


 驚いた。


 ここでシリルがもう一本、剣を抜いたのだ。

 伏兵のように、左手の剣がセインの腹部に切り込む。

 ここでようやく、セインの動きが止まることになった。


 シリルが左右の二本の剣でどう戦うのか。


 セインはそれを見極めることになる。

 だがシリルはその暇を与えない。


 左の剣は盾のように防御として、右の剣で突き、斬り込みと攻撃を加えると思ったら。いきなり左の剣で突きの攻撃を行ったのだ。セインが大きく後退する。


 これだけでも分かってしまう。

 シリルは左右、両方の剣を同じように扱えるのだと。

 利き手ではないので、左の剣の動きが鈍い……なんてことはない。

 しかも左右の剣で、違う動きができる。


「これは一長一短だ。二本の剣を扱うということは、セインを混乱させ、より攻撃が通りやすくなる。だがシリル自身にかかる負担も大きい。これは短期決戦で、終わらせるしかなくなる」


 キルが冷静に言うと、レウェリンもこんなことを言う。


「シリルが二本の剣を出す時は、多くの魔族を一人で相手にする時だ。その時は電光石火の勢いで殲滅する。どこかで起点ができたら……嵐が舞うぞ」


 レウェリンがまさにそう言った時だった。シリルが動いた。

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