↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乙女ゲームのラスボスですが、勇者と結婚することになりました。  作者: 一番星キラリ@商業ノベル&漫画化進行中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
35/60

止めるのは難しい

 予想通り、布で仕切られたもう一つの部屋は寝室だ。

 かなり大きめのちゃんとした天蓋付きのベッドが用意されている。

 レッドドラゴンを相手にするような戦いをしているのだから、しっかり体を休める必要があるのだろう。


 チラッと部屋の様子を確認した後は、シリルがマントを外すのを手伝い、軍服の上衣を預かった。

 用意されている木製のラックにマントをかけ、ハンガーに上衣をかける。ブラシで汚れを落とそうとしたが、さっきレウェリンが魔法を使っていたから、新品状態。ブラシでの汚れ落としは不要だ。


 振り返るとシリルは軍服のズボンを脱ぎ、既に濃紺のズボンに履き替えている。手早いなぁと思わず関心。軍服の上衣の下に着ていた白シャツはそのままのようだ。ズボンを受け取り、こちらは上衣とセットにしてかける。


「そのベストを取ってもらえるか?」

「こちらですね」


 シリルはロングブーツからショートブーツに履き替え、私はズボンと同色のベストをシリルに着せると、くるみボタンを留めていく。


「ありがとう、オデット。……君と二人きりになりたくて、着替えを手伝わせてしまった」


 不意にシリルの声が甘くなり、ボタンを留め終えた手が、彼の両手に包まれている。

 ドキッとして顔をあげると、シリルの顔が近い。

 ……キスをされる……!


 体の芯がキュッと震え、慌てて目を閉じたその時。


「シリル卿、オデット、みんな揃ったぞ」


 キルの声に、シリルの動きが止まる。

 もう唇は触れる直前だったのに!

 キルの間の悪さを恨みたくなったその瞬間。


 私はもうキスを諦めていた。


 だがふわりとシリルの唇が触れている。

 でもほんの一瞬のことだ。


「分かった。今、行く」


 え、今のは幻?


 シリルはすぐに返事をしているし、あまりにも短い時間の出来事。本当にキスをされたのか、分からなくなる。しかもシリルは何事もなかったかのように、私へ手を差し出す。


 夢を見ていたの……?


 再びエスコートされ、隣室へ移動すると、目の前にはシリルのパーティのメンバー、キルやマーシャルソンに加え、初めましての二人の指揮官もいる。キスのことは吹き飛び、彼らと挨拶するところからスタートとなった。


 その後はセインの件を話すことになったが……。

 もう、何十回と話しているので、まさに要点を押さえ、明瞭簡潔に事態を伝えることができた。


 さらにキルが今後のセインがとるであろう行動について話し、決闘の件が話題に上ると……。


「しかしそれは決闘というより、私闘に思えますね。シリル総司令官は三万五千もの軍を率いているのです。魔族との私闘で何かあっては困ります」


 ハビエット指揮官がそう言えば、ブラウン指揮官も同意する。


「勿論、我が軍にはレウェリン様やミルトン様、それに国王陛下が遣わせてくれた聖女もいらっしゃいます。よって怪我をしても対処できるでしょうが……。魔族との私闘なんて、ルールを決めても破られそうです。例えば、一対一で武器は剣のみ、としても魔術を使ったり、仲間の魔族が加勢しそうです」


「じゃがセインは、単独行動なのじゃろう?」


 レウェリンがそう言うが、ブラウン指揮官は……。


「目の前に魔族の軍がいるのですよ? そこに魔族にとってはカリスマと言われる騎士団長だったセインが現れたら、加勢して当然でしょう」


「僭越ながら、ブラウン指揮官、ハビエット指揮官。セインは高潔な志を持つ騎士団長です。私闘であろうと、決闘であろうと、決めたルールに反する行動はとりません」


 ハビエット指揮官とブラウン指揮官は顔を見合わせ、ため息をつく。


「……オデット様は亡き魔王の娘ですから、どうしたって騎士団長であるセインの」「ハビエット指揮官」


 シリルの凛とした声に、ハビエット指揮官は黙り込み、ブラウン指揮官の背筋がピンと伸びる。


「オデットは私の妻だ。それに彼女は魔族と人間の平和的な共生を望んでいる。発言には気を付けて欲しい。……そして自分は決闘であろうと私闘であろうと、セインから挑まれれば、受けるつもりだ。そこで決着をつける。セインの騎士道精神を、自分も勇者であり同じ騎士として信じたい。他に本件について意見があるものは?」


 円卓のテーブルに座る面々の顔を、シリルは順番に見る。

 私としてはそもそも決闘だろうと私闘であろうと、受けて欲しくないと思っていた。

 だがそれを止めるのは難しいだろうと、今のシリルの言葉で実感してしまった。

 自身の結婚に対し、妻に対して他者から横槍を入れられた時。

 黙っておくことは、この世界では負けを認めるも同然なのだ。


 私ができることは、決闘であろうと私闘であろうと。

 そこでセインが暴走しないよう、見守り、もしもの時には止めに入るだけだ。


 ということで私はシリルに今、意見するつもりはない。

 そして他のみんなも……意見はないようだ。


 その代わりでハビエット指揮官とブラウン指揮官は、順番に私へお詫びの言葉を伝えてくれる。


 これで会議は終了となった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一番星キラリの作品を紹介】
作品数が多いため、最新作を中心にバナーを並べています(2025年12月の大掃除で・笑)。 バナーがない作品は、作者マイページやタイトルで検索でご覧くださいませ☆彡

●新連載●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄された悪役令嬢は王太子直属の護衛騎士に~溺愛付きのジョブチェンなんて聞いていません~
『婚約破棄された悪役令嬢は王太子直属の護衛騎士に~溺愛付きのジョブチェンなんて聞いていません~』

●9/2発売●
バナークリックORタップで書報ページ
悪役令嬢はやられる前にやることにした
『悪役令嬢はやられる前にやることにした』

●商業化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
やらかしてしまったモブ令嬢です
『やらかしてしまったモブ令嬢です 』

●溺愛は求めていませんよ?●
バナークリックORタップで目次ページ
平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!
『平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!』

●紙書籍&電子のコミカライズ化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~ 』

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
250万PV突破『悪役令嬢は死ぬことにした』

●出版社特設サイトはコチラ●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!
80ページが試し読みできる特設サイトへ
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!』


●出版社特設サイト●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!②
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!② 』

●もふもふも登場!●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪の場で自ら婚約破棄シリーズ
『断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた』は
日間恋愛異世界転ランキング3位!

●壮大なざまぁを仕掛けます!●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした
『婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした』

●章ごとに読み切り!●
バナークリックORタップで目次ページ
ドアマット悪役令嬢~ドン底まで落ちたらハピエンでした!~
『ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~』

●宿敵の皇太子をベッドに押し倒し――●
バナークリックORタップで目次ページ
宿敵の純潔を奪いました
『宿敵の純潔を奪いました』

●コミカライズ化も決定●
バナークリックORタップで書報ページへ
断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない
ノベライズは発売中!電子書籍限定書き下ろし付き
『断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない』


●妹の代わりに嫁いだ私は……●
バナークリックORタップで目次ページ
私の白い結婚
『私の白い結婚』

●[四半期]推理(文芸)2位●
バナークリックORタップで目次ページ
悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~
『悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~』

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。