37 鑑定依頼を受けたけど……疲れた。
こんばんは、こんにちは。
いつもありがとうございます。
お忘れかもしれませんが、ナギは子供です!
今日もよろしくお願いします!
「待たせたな。今からお前たちの実力を審査する。ただし、実力だけじゃなく、人となりも見させてもらうからな。当然鑑定する。拒否権はない。嫌なら今すぐ出て行け」
こういうときのギルマスはとっても怖いんだよ。
誰か出ていくかなと思ってたんだけど、幸いにも誰も立たなかった。まあ、今の間だけかもね。
「一人ずつ面接になる。他のやつは隣の部屋で待っててくれ。じゃあ、お前からだ」
ガタガタと椅子を鳴らして他の人が出ていった。
名前、ランク、歳を答えろと言われる。
かなり緊張してるけど、かわいそうだね。
ギルマスからの視線を受けて鑑定する。
別に問題ない冒険者だけど、迷宮の経験はないね。
鑑定結果のチェックリストが置かれている。名前は記入されてるんだ。
チェック箇所はいくつかあるよ。
・迷宮経験があるかどうか、回数は
・冒険者ランクに対しての実力
・得意攻撃
・人となり 気になること・偽り・犯罪性・犯罪歴
・良い点
・悪い点
・推薦人
・その他気づいたこと
これだけかいてあるけど、俺がチェックしてもいいのかな。
この人は問題外でしょ、迷宮経験がないから。
この紙はギルマスに横流しする。
その間、買取カウンターのおじさんとギルマスがいろいろ質問するんだよ。
じゃあ、次だね。
えっと、この人は誰?
名前が違う。ランクも違う。というか、誰のギルドカードかな。
何しに来たんだろう。
あ、ダメだよ。
この人、犯罪歴がある。それも裏の仕事ですよ。
殺人はお手の物ってか。
どうやら、俺を殺すように依頼されたらしい。例の男爵の執事からの依頼ですよ~
紙を横流しすればその場で拘束される。
冒険者につかまった所へ、フラットが近寄るんだから、これほど怖いことはないでしょ。
ギルマスが下に連絡すれば、騎士団長が上がってきたんだけど! まあ、こんな時の為に来てたんでしょう。
領主様からの依頼になるから、慎重だよね。
じゃあ、次に行きましょう。
うん、この人は問題なさそうだね。
ランクも適正だし、今までの経験値も申し分ないでしょう。隣国の近くで生まれて、冒険者になってからは、迷宮三昧だったみたいだね。適正ですよ。
人となりも良さそうです~
ギルマスにスライドさせれば、サッと眼を通して、合格だと言った。
ふんふん、こんな風に勧めるんだね。
合格者は、受付で合格の紙をもらう。
後日、依頼料、時期などを教えられるんだけど、冒険者が少なければ当然依頼料は上がります。それに伴って危険度も増すということですね~
じゃあ、次……
そんな風に次々鑑定していくんだけど、疲れちゃって、途中で一休みです。
サンドイッチを出してもらって、食べながら鑑定に臨んだんだよ。もちろん、フラットも黒い人には身体で示すからお腹が減ったみたいで、俺と同じサンドイッチを山盛り出してもらってます。
そんなとき、メルトが戻って来た。
「遅かったな。ちょうどいい、力貸せ。後で精算するから、お前への依頼だ」
なんですか? 意外そうにギルマスを見ているけど、驚くよ。
「ナギを脅かすやつが多すぎる。鑑定で出たら拘束して騎士団に引き渡すから、そこで待機だ。後ろの冒険者たちが拘束するから、お前は騎士団長と一緒に馬車まで運べ」
了解、と俺の方をチラリと見た。
苦笑を返せば、拳を握って任せろと言ってくれた。
じゃあ、次だね。
これはすごい。ランクこそBランクだけど、迷宮でランクアップしたらしい。
あれ? でもちょっと待って。
仲間をおとりに使ってるよ。何回かトラブったみたい。
残念だよ、こう言うやつは。
ギルドは把握してるのかな。いや、してたらここには来てないよね。
紙に書いて赤い線を引いた。そしてギルマス送りだ。
間違いなく、あっちのギルドに抗議するだろうね。
「拘束!」
そう言えば、後の冒険者たちが歩いてくる。
「ちょ、ちょっと待って! 俺、何もしてないっすよ? ランクも迷宮で上げたし、ギルドの推薦もあるんですから」
あはは、ギルドの推薦だって言っちゃたね。
メルトと騎士団長が両脇を固める。
「お前、何人囮に使った? 仲間を囮に使うようなやつは今回の探索には必要ない。ギルドにも報告させてもらう。あっちで聞き込みするだろうよ」
ぐぐっと唸ったけど、黙ったってことは事実だよね。
じゃ、次。
えっと、ここまで来れば呆れちゃうよ。
また殺し屋だ。
それも冒険者だよ。最悪な状況ですね。
こいつもあの男爵の手先か? 隣町の冒険者だけど、金で雇われたんでしょうね。
紙をスライドさせれば、大きく息を吐くギルマス。
男は一瞬で真っ青になった。
己の立場が理解できたということだろうけど、諦めたかな。
「拘束」
ギルマスの声に、冒険者たちが男を拘束した。
戻ったばかりのメルトと騎士団長は、鑑定結果を手に男を引きずって部屋を出た。
これ、いつまで続くのかな。
もう何人面接した?
いつまで続く?
既に疲れたんだけど……
「もう少し頑張ってくれな。昼になったら何でも食わせてやる。そうだ、少し数を減らすか。フラットも鑑定できるんだろ? フラット頼めるか?」
くわぁん! と鳴いて胸を張る。
この子が歩いてくるだけで怖いだろうに。
「メルト、お前が付いてゆけ。それとそこの半分もな」
『僕は何を鑑定すればいいの?』
フラットの声を伝えれば、ナギを殺すように命じられてるやつ、殺したいやつを見つけること。わかりやすくていいね。
フラットも納得したみたい。
「メルト、何もせずとも逃げ出すやつは、とりあえず拘束だ。後で話しを聞く。廊下に転がしておけ」
了解、フラットと一緒に出て行った。
二段構えなら早く終わりそうだ。
あと一時間は辛抱してくれと言われたので、右手を挙げる。
じゃあ、次ね。
この人はAランクだ。
経験は申し分ないね。黒い部分もない。
武器とスキルは長剣と俊足。そして探索能力が高い。
これはいいかもしれないね。
まるをかいて隣へスライドした。
「合格だ。だが、明日には模擬戦があるからな」
はい! と気持ちの良い声が聞こえた。
そんな風に順調にすすんでゆく。
その代わり、フラットとメルトは大変だったみたい。
最初にフラットが入って行って鑑定を発動する。メルトはフラットが危険人物を排除すると伝えた途端、逃げようとしたやつが五人いた。あと、自信のないやつと思われる者が十人立ち上がって辞退した。
もちろん、全てを鑑定しているフラットは、逃がしても良いやつは止めなかった。それ以外は、拘束して廊下に転がる。
フラットの頑張りで、五十人はいた希望者が二十人以下になった。
そこで昼食になる。
俺たちと騎士団長は食堂に入ったが、希望者は外に出て屋台で食事をするようだ。
「何でも注文していいぞ」
その声を聞いたフラットは、嬉しそうにメニューを引き寄せる。
『ナギ、僕頑張ったから、たくさん食べていい?』
『いいよ。何でもいいってギルマスが言ったからね』
『うれしいな。じゃあ、お肉。オークの煮込みを二つとステーキが十枚、あとクリームパスタが二つ、シチューとグリルチキンを二つ。パンがたくさん!』
「あはは、ほんとにたくさんだね。少し待って」
メモをもらってフラットの注文を書き始める。とんでもない量だけど、ギルマスはニコニコ見ているだけだ。
全部書き終わってウエイトレスさんに渡した。
さて、これからは俺だね。
書いてる間にメルトと騎士団長は注文を終わらせたみたい。
じゃあ、とクリームパスタの大盛りとグリルチキン、サラダ、オークの煮込みを頼む。そしてパンを二人前だけど。騎士団長はすごく驚いている。でも気にしないよ~
運ばれた昼食を黙々と食べる。
「それにしても、あの男爵はなんでナギを?」
「それですよ。領主様からの連絡では、落ち目の男爵らしいです。捕らえようとしたけど無理だったから、腹が立ったと言うことろでしょう。でも、捕らえてなんの利益が?」
あるだろうよ、大きな利益が。僕に視線が集まるんだけど、意味がわからない。こんな子供の冒険者が欲しいのかな。
「なるほど。理解しました。そういう意味でも危険ですね、ナギ殿は」
そうなんだよ、と頷くギルマスだけど、意味がわからん!
心配そうなメルトの視線も痛いんだけど。
フラットは……何も聞いてないね。
あとでメルトに教えてもらおう。気になるからさ。
食事が終わったら買取カウンターへ来て欲しいとお姉さんが伝えに来てくれた。そうだ、獲物の引き取りだよ!
メルトもまだ受け取ってないらしく、一緒に行くことにした。
昼ご飯を食べ尽くして、獲物を受け取りにいく。
メルトとフラットも一緒だよ。
「やっと来たか。とりあえず、肉を渡しておく。素材の買取は明日の精算だから忘れるな。でも、今日の面接はとんでもないな。お前の鑑定がなきゃ、ヤバイやつばかりだぞ」
あはは、そうですかね、と明細を見ながら肉を収納した。
じゃあ、と再び階段を上がる。
待合室には二十人くらいの人がいた。
ささっと確認しただけだけど、殺意を持ってる人はいない。
「あと少しだ。頼むな。フラットとメルトも頼むぞ」
りょーかい、とフラットはうれしそうに出て行った。
さて、面接再開ですね。
最初に来た冒険者は、全く問題ない。
強いて言えば、あまりにきれいで不安になる。討伐実績も素晴らしい。Bランクというのも納得できるんだけど……問題がなさ過ぎるんだよね。
突出してランクが高いわけじゃない。討伐実績だけで見れば既にAランクだ。それでもBランク。どういうことだろう。気になる。
そう書いてギルマスに差し出した。
それを見たギルマスも同じ疑問を持ったらしい。
「ひとつ聞きたいことがある。お前の討伐実績、人柄から考えればAランクが妥当だろう。だが、Bランク。これはどういうことだ?」
無言で唇をかみしめる男は、意を決したように話した。
迷宮でパーティでの活動をしていた。男はリーダーで、メンバーは皆良いやつばかり。家族のような仲間たちだった。だが、あるとき、いるはずのないランクの魔物が出た。それに対して逃げることもできない。逃げてもすぐに追いつかれる。それなら、と彼は決断した。戦うと。
その結果、パーティーメンバーは次々殺された。残されたのは、自分と魔法剣士の同じランクの男だった。
その男は、彼に逃げろと行った。
当然、彼は逃げることを選ばなかった。
だが、男は彼を突き飛ばして、魔物に突進していった。その時、男の魔法が発動した。今までにない大きな魔法を使い、魔物にトドメを刺すために飛び込んだ。
結果、大爆発を起こした。
ガラガラと崩れ落ちるのは、あたりの壁、岩などだ。迷宮でなぜ? と思ったが、遅かった。崩れたのは表面だった。全てが終わったあとには、いつもと変わらない壁や天井が見えたという。
本来ならリーダーであるはずの彼が守るべき存在が、命をかけて彼を助けた。その事実は彼に恐怖を植え付けた。男の遺体は迷宮に飲み込まれた後で、謝ることも泣くこともできなかった。
ギルドでは冷たい対応をされ、冒険者たちには、リーダーであるべき人間じゃないと罵られた。
それ故、仲間も作れず、半年が経った。
以来、一人で迷宮に潜り続けているという。
なるほど、と納得した。
でも、迷宮だって地上だって、リーダーであっても命をとして仲間を守る義務などない。リーダーは必要な時に決断し、差配することだと思うんだけど。
ギルマスは無言のままわかった、と言った。
最後に、お前の話を聞いて、信用できると確信した。
それだけ言って、明日の模擬戦の話しをしている。
やっぱりギルマスだ。自分の目で判断するつもりみたい。よかった、この人がギルマスで本当によかったよ。
全て終わったのは夕方五時を過ぎていた。
身体をほぐしながら階段を降りてゆく。
お疲れ様、と皆がいたわってくれるけど、フラットは?
どうやら食堂にいるらしい。
メルトも一緒だった。
「お疲れさん。飯食うか?」
『ナギ、大変だったね。ご飯食べて帰ろうよ。ナギは疲れてるでしょ?』
それもいいか、と食堂へ入ろうとしたら、お姉さんに呼ばれた。
俺とフラット、メルトへの報酬を渡すという。
ギルマスはまだ騎士団長と話してるんだけど。
「こちらがナギさん、メルトさんへ。そしてフラットにはこれを」
フラットは、オークの肉だ。大きな塊をもらったんだけど、いいのかな。
「これ、帰りにギルマスが狩ったオークだそうです。フラットに食べて欲しいって」
あはは、喜びます、とアイテムボックスへ入れた。
そしてメルトの報酬も預かって食堂へ引き返した。
すごく疲れてる。そう、自覚があるほどに。
こういうのは初めてだった。六歳にはきついでしょうよ。ご飯も食べなくてもいいかな。寝たいよ今は。
「メルト、今日の報酬だって。フラットはギルマスが大きなオークの肉をたくさんくれたよ。また作るね」
『とんかつがいい~』
わかった、と微笑みを返す。
「大丈夫か? 疲れただろ。でも飯は食った方がいい。力が出ないぞ。それとも魔力切れか?」
魔力切れ? それはない。だって、*10があるもの。
「違うよ。魔力は問題ない。でも疲れた。あんなの初めてだった。大人の中で悪人を暴くって、疲れるね」
そうだな、と辛そうな顔のメルトだ。
「ああいう、暴く行為は何にしてもしんどいぞ。まあ、今日で終わったから明日は休めばいい」
そうする、と呟いて二人で注文した。
フラットも追加だって。あはは、通常運転だね、フラット。
読んでいただきありがとうございます。
前世でなら大丈夫だったかもですが、さすがに子供には無理でしょう? とか言いながら書く私は鬼?
大人でも寝込みそうだもん。
コメント・評価をいただけると、九龍はとっても頑張れます。
明日もどうぞよろしくお願いします。




