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これをハーレムとは認めねぇ!  作者: 未練マシマシ
一章・さぁ、ハーレムを作ろう
9/14

第八夜 目覚めて、さすられて、引き摺り出された

遊園地にある、高所から急降下する絶叫マシン。

あれで落ちた時のような感覚を味わって目が覚めると環境がガラリと変わっていた。


暗い、狭い、暑い。

俺はどこか暗く狭い所に連れて来られたようだ。

手足を折り畳まれて小さく小さく座らされていた。

それにしても暑い。

まるで日本の寝苦しい熱帯夜だ。

息を吸うのも苦しい。

身動きをするにも四方八方から何かがピッタリとくっついて難しい。

というか、ここどこ?

それよりも魔物が村に迫ってるって伝えなく…


「〜〜〜〜」


「んむっ」


立ち上がろうと動いたが誰かに口を押さえられ、そのまま引き寄せられた。

そのまま首の向きをぐいっと変えられると目の前にラーニャちゃんの顔があった。

その背後には布団で簀巻きにされ、壁とラーニャちゃんに挟まれたベラが見えた。

…ベラ、暴れたのか。

口にも何か詰められてるし、誰かを噛もうとしたな?

相変わらず恐ろしい程に険しい眼差しを俺に向けてモゾモゾと動いていた。


ラーニャちゃんは片手でベラを抑えつつ、上をしきりに指差して何かを言っている。

声が小さく早口過ぎてよく分からなかったが、とりあえず頷いておいた。

言葉は分からずともラーニャちゃんの必死さは伝わった。


暗さに目が慣れてくると周りの状況が見え始めた。

灯りは一つだけ、とても低い天井の中央に頼りなく灯る淡い光があるのみ。

何がどうやって光ってんだ?

火じゃないのは分かるが。

何かが燃えてるような匂いはないし火の暑さとは違うし。

それにあの高さじゃ立ち上がろうとしたら確実に頭を打つだろうし。

ここは本当になんなんだ?


それと俺達以外にも人が居た。

俺達は壁際に近い所に居るが向こうの壁まで人が所狭しといった具合に人が居る。

それも殆どが幼い子供だ。

ラーニャちゃんみたいに大きな子も居るけど、幼い子共と比べるととても少ない。


そんな数少ない大きな子達にラーニャちゃんを含めて俺は囲まれている。

村に入る時、あんなに警戒されていたのに。

時間をかけて接して仲良くなったのなら分かるが、よく分からない外部の者に子供を近付けるなんて普通はしないだろ。

俺はベラの看護で部屋の外に出る機会があまり無かったしな。

初対面と言っても良いのにこんなに体を密着させるほど近付くなんておかしいぞ。

…どの子もモフモフで可愛いから俺は良いけど。


息苦しいのは密閉空間に大勢の人が入っているからだろう。

淡い光を頼りに見渡すとこの部屋はかなりの広さがあると思う。

そこに人が密着し合ってようやく入りきる具合なのだからこの部屋の人口密度はお察しだ。

ちゃんと換気されているのか不安になるぐらいだ。


部屋の空気は重い。

子供達は泣き声どころか息すら殺してじっと何かを待っていた。

外からの音は全く聞こえない。

だからとても静かで、どこか怖い。


まるで無声映画みたいだ。

それも戦争物のだ。

空襲警報が鳴って防空壕に逃げ込んで…いや、もしかして…


俺達は避難しているのだろうか。

邪神様が忠告してた魔物の群れ。

俺が邪神様と会っていた間に、既に村に来ていたのか。


邪神様、忠告するならもっと早くしてくれよ!

これじゃ段差に引っかかった後に段差があるよと言ってるようなもんじゃん!


あぁ、あの愛しの女性は無事だろうか。

この部屋は子供だけしか避難していないようだが別の場所にちゃんと逃げられただろうか。

いや、村長みたいな立場らしいから現場の指揮を執ってるのか?

厳重に奥で守られてるよな?

大丈夫、だよな?

まさか既に魔物にやられたなんて…


「〜〜〜、〜〜〜〜」


ラーニャちゃんが困ったような顔で何かを言いながら背中をさすってくれた。

言葉は分からないけど多分、励ましてくれているんだろうな。

あの女性の事が心配でついつい俯いてたから。

でもさ、背中に当たってるラーニャちゃんの手、震えてるんだよ。

そうだよな、怖いよな。

自分が住んでいる村が魔物に襲われてる。

もしかしたらこの避難場所にも魔物が攻め込んでくるかもしれない。

そりゃ怖いよな。

しかし、年下に心配をかけさせる訳にはいかんよ、俺。


俺はラーニャちゃんに笑顔を向けて覚えた言葉で大丈夫だと伝えた。

鏡が無くても頬が引き攣って見るに堪えない顔になっているのが分かる。

少し恥ずかしかったがラーニャちゃんが笑ってくれたから良しとしよう。


それにしても魔物か。

この世界の魔物と言えば小人ぐらいしかしか見た事がないし、俺もよく分かって無い。

しかし、小人だけじゃこんな防空壕みたいな場所に避難しないよな。

やっぱり村を囲んでいた巨大な柵よりも大きな魔物とか居るのだろうか。

…無理だな、俺じゃ勝てない。


黒い刃の化け物、邪神様の一部が出てきたらどうにか出来るかもしれないけど。

その時は無差別に攻撃するしなぁ。

嫁候補は増えても事態の解決は難しいし。


…待てよ?

邪神様は魔神に俺の事がバレて魔物を差し向けたって言ってたよな。

つまり魔物の狙いは俺なのであって…

俺がこんな所に逃げてたら…来るんじゃないか?

魔物が…


その時、あれだけ静かだったのに物が壊れるような大きな音が響いた。

そして木材が割れるような音と共に部屋全体を揺らすような衝撃が続け様に来た。

その間、誰も声を出せなかった。

それは恐怖からか、それとも絶望からか。


音が、衝撃が次第に強くなり…ついに来てしまった。

ベラの側の壁が割れて外から光と共に巨大で鋭利な何かが部屋に入って来た。

そして、その鋭利な物はグイッと曲がると布団で簀巻きにされたベラを引っ掛けて外に引きずり出してしまった。 

それは一瞬の出来事だった。

ベラの首にかけられた半透明の鎖はどんどん裂け目へ伸びて伸びて起きてしまった、巻き込みが。


「あ゛あ゛あ゛!?」


俺はベラと共に防空壕から引き摺り出された。

【ラーニャ】

あ…

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