仲間割れ3/3
次回、最終回です
朝。
薄暗い中少女は赤い顔をして起床した。少女が起きたときにまず感じたのは喉の痛みと頭痛だった。
(....風邪引いたな)
そう思いつつも父のおさがりの軍服を着こみ、射撃場に向かう。今日は約1.2キロ先の標的を撃ち、35発撃中34発あたった。陽が出始め生き物が活発的に行動する中、少女はフラフラと歩きながらも家につき、倒れた。
「馬鹿な子ね、39℃もあるのに射撃なんてするから。」
「ごめんなさい。....母さん、今日ね一発外しちゃた。」
心配かけたことに謝り、今日の射撃の成果を言うと。瞬間、母親は手に持っていた濡れタオルを床に落とした。
「?!、どのくらいの距離で?!」
驚いた顔でそう聞いてくる。1.2キロと答えると、
「?!、....そんな事もあるのねぇ。明日は槍でも降るのかしら。」
ひとしきり驚いた後、そんな事を言った。
少女は3年前に一発外して以来、一度の失敗もしたことがなかった。母親以上に少女は外したことに驚いていたが、風邪のせいでどうでもよく思えた。今の少女の格好は寝間着で、ベッドに横になりながら母親から濡れタオルを額にかけてもらっていた。
早く良くなるのよ、と言い残して母親が部屋から出ていくと、少女は深い眠りに落ちていった。
夜になり、風呂には入れない少女は母親から身体を拭いてもらい肌着と下着を着ると、今夜の寝間着を探していた。タンスの中を探っていると、一枚の真っ白なワンピースが出てきた。それは去年、少女が誕生日プレゼントとして両親からもらった物だった。少女は寝間着としてワンピースを着ると、夜食のお粥を食べていつものように眠りについた。
少女はいつもの日常が続くと思っていた。続いてほしいと思っていたし、それ以外は望まなかった。いつものように射撃場に行き、帰って来て家族と一緒に食卓を囲む、昼間は家族と過ごし、夜にまた食卓を囲み、お腹いっぱいになって寝る。
ただ一日一日が幸せだった。続いてほしかった。
朝、母親のよく分からない頼みごとを聞いて起きた。
「何があっても、強く、強く生きるのよ!。......母さんと父さんとの約束よ?」
眠気にうつらうつらとしながら、声を聴く。
(....母さん何を言ってるの?)
少女は言葉の意味を考える、考えるが眠気に負けてまた眠りに落ちていった。
「?!」
少女は廊下から聞こえる争う音に飛び起きた。耳を澄まし、周りを探ると争っている音は消え、代わりにズルズルという音が聞こえてくる。
(?、.....引きずる音?)
少女が思った瞬間、それに答えるようバタンッと扉が閉まる音が聞こえる。一つ一つの部屋を見て回っているのか、一つ開けると閉め、一つ開けると閉めを繰り返していた。
残るは少女の部屋を含め2つ。少女は不審に思い、起き上がると周りになにか武器がないか探した。部屋の隅を見ると箒が立てかけてあった、少女は手に取り、感覚を確かめるように振ると、箒を構えた。
バタンッ、少女の部屋が最後になった。
箒を握りしめる手に汗がにじみ出る、緊張で脈拍が上がり、荒かった息づかいはさらに荒くなる。そして、その瞬間は来た。
バンッという音がたち少女の部屋のドアが開く。開いたドアの前に立っていたのは、右手にナイフ左手で少女の母親の髪の毛をわしづかみしている、知らない男だった。男の右手は血で染まり、少女の母親は腹や喉から血を大量に出していた。少女は母親の死体を見た瞬間、身体が凍りついたように固まった。誰よりも優しく育ててくれた母親、少女の頭の中で母親との記憶がフラッシュバックする。だが、母親が男の手から離れ、ゴンっと無機質な音を立てて落ちた瞬間。少女の中の何かがキレた。
男はわけのわからない事を叫びながら両手でナイフを握り、少女に向かって突進してきた。対する少女は避けようともせず、無表情で箒を野球の打者のように構えると、避けられた時のことも考えず男の顔面に向かって横薙ぎに振り抜いた。箒の柄は男の顎の付け根にぶち当たる。男の身体がふらつき、後ろに仰向けに倒れると男は立ち上がろうとする。だが、顎の強打による脳震盪で床に手をつくだけで立ち上がれない。少女は箒を捨て、つかつかと男に近くと馬乗りになって抵抗する男の顔面を殴りつけた。
一発、二発、三発と殴り続ける。
ガッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ、ガッ、ガスッ、
男が気絶しても殴り続ける
ガッ、ゴッ、ガッ、ゴスッ、ベチャッ、ビチャッ、
少女の拳が男の歯に当たって切れたり、拳が擦りきれ血がでても止めない、殴り続ける
ベチャッ、ビチャッ、べちゃっ、ビシャッ、
男が打撲死しても殴り続ける
ピシャッ、ペャチャンッ、ベチャッ、ビシャンッ、
少女の着ている両親からもらった真っ白なワンピースが血に染まって、真っ赤なワンピースになっても、殴り続ける
グチャッ、ゴシャッ、ボキャッ、グシャッ、グシャッ、
男の顔が潰れ、判別できなくなっても、殴りつづけた。
いつまでそうしていただろうか。家の外から声が聞こえてくる。
「――――かー、居ませんかーっ!」
少女はフラリと立ち上がり、棚にあった魚の置物を掴むと自分の部屋から出る。
(誰でもいい、殺したい。とにかく殺したい。殺したい、殺したい、殺したい、殺したい、殺したい、殺したい、殺したい、殺したい、殺したい、殺したい、殺したい、殺したい、殺したい、殺したい___)
少女は殺意に駆られていたが無意識に口が開き、声にならない声で呟いた。
助けて___と
少女は半開きのドアをおもいっきり蹴破った
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