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インセクトマスター  作者: 天野げる
1章 死にたくないからダンジョンを創る
9/26

犯罪者襲来

グロ有ります


 

『団長!こんな所に階段があります!』


『団長と呼ぶは止めろ。今の私にアリアドネ騎士団という肩書きは最早存在しない』


『あれは上の貴族どもが自分たちの責任を押し付けただけではありませんか!俺たちにとってはあなたが団長です!もう騎士団に所属しておらずともその気持ちは永久不変です!』


『チッ勝手にしろ!』



 相手は三人。先頭にいるのは斥候のような役目をしているみたいだ。


 真ん中の男、一番体格が大きく二人から団長と呼ばれている。本人が今は違うと言っていた所からするに、元は騎士団長で今はなんらかの事情で辞めたのだろう。堂々と前を向き歩いているが、真後ろ以外のどの角度からモニターでみていても、一定時間で必ず目がモニターに映る。一分も油断していないことから、かなりの猛者だと思われる。だが流石にモニターで観察されていることには気づいていないようだ。


 そしてほぼ完璧と言ってもよい警戒をしている真ん中の男の唯一の死角、真後ろ、全体の一番後ろにいる男は警戒しすぎている。背後をとられるというのは、1対1ではほぼ負け、集団戦においても、一方的に大きな打撃を受けることになる。だがあの気の張り詰めようでは、集中力を長く維持させることは出来ないだろう。



 装備は先頭の男は騎士のころから斥候役をしていたのだろうか、必要最低限の所に金属を用いているが、あとの部分は普通の服に比べるとやや頑丈そうな布ではあるが、ただの服だ。騎士だったころは、先頭において攻撃を受ける状況になることは少なかったのかもしれない。


 次に真ん中の男。あれは無理だ。全身ガッチガチの鎧だ。強いて言うなら、顔だけは、肌が見える部分もあるってレベルだ。まあ顔すら見えない装備だったら視界も狭くなるから、そっちのほうがやりやすかっただろう。


 そして最後尾の男。この男だけ剣を携えておらず、かわりに二人が剣を差している所に装飾された木の棒きれが存在している。戦いを舐めているのでなければ、多分杖とか魔術の威力を上げたりする道具ーーーいや武器だろう。防具はあれだ、あのゲームとかで神官がよく着てるやつ…そう!ローブだ!全体的に薄く汚れているが元は高級な生地を使っていたのだろう。だがローブは布だ。服の下に鎖帷子でも着込んでるんだろうか?いや三人の中で一番ヒョロイからそんなもの着てたら歩くペースに合わせられないだろう。


 

 

 そしてこの三人に共通しているのは、目立つ部分に紋章が描かれていることだ。真ん中の男の紋章だけ二人に比べて少しだけ複雑に装飾されている。


 

 




 大体の策は練れた。やっぱり戦いで一番大切なのは情報だな。敵と対峙しているときは情報を集めてる余裕なんか無くなっちゃうから戦いで大切というよりは、戦う前にできることとしてはトップである!ってかんじかな。


 事前の情報が勝敗を分ける!とかも戦国物のドラマでよく聞くセリフだしね。




『まぁ流石の馬鹿貴族どもだって此処までは追って来ることは出来ませんよ!』


 斥候が自分に言い聞かせるように口に出す。


『馬鹿者がっ!何故逃げ、生き延びることだけしか考えていないのか!自然の中に不自然な階段…ダンジョンの特徴だ。ダンジョンには、それ一つで国を丸々一つ買えるほどのマジックアイテムや、武器もある。それにダンジョンを攻略したという証を持ち帰れば、貴族も我々を糾弾することは難しくなるだろう。我々が敵に回してしまったのは一部の貴族であって、全体ではない。我々の有益さをもう一度知らしめれば、また国に仕える身に戻れることだろう』


 マジックアイテムかぁ~。そういや宝箱とか設置してなかったなぁ。



 マップから一度目を離す。




「なぁなぁ何でダンジョンは宝箱を設置すんの?」


『あーそれはねぇ~………………ダンジョンが!ダンジョンが冒険者を呼び込むために設置する、なんて言うかえーと…エサみたいな役割になるからだよ!』


 昔の方がもっとスラスラ出てきてた筈なんだがなぁ。だいぶ勢いでごまかした感があるし。

「認知症?」


 コウがボソッと呟いたその言葉。普通の人なら聞こえなかったであろう。

 だがしかし!ダンジョンコアはダンジョン内であれば、百キロ先にあるコインが落ちる音も聞き分けることができるのである!


『だぁれが認知症だぁぁぁあああ!!!こちとらまだピッチピチの生後1ヶ月ですぅ!』


 一ヶ月でこんだけ個性が成長するのか…一年後にはギャル語とかで話してるんじゃないかな……

 っと!そんなこと考えてる場合じゃない!


 コウは一階と二階の配下の魔物に作戦を伝える。


「これでよし!あいつらはどうなってるかな【モニター】!」



 

 



『団長。ですがこのダンジョンがある場所からして、長い期間誰にも挑まれていないはずです。ですから最大級のダンジョンとはいかないまでも、かなりの大きさであることが予想されます』


『分かっている。ダンジョンが小さかった場合はダンジョンコアを破壊し、その破片を持ち帰り証明、ダンジョンが大きかった場合は我々の実力で進める範囲でマジックアイテムに入手し、それを手土産に国にかえるとしよう』



 魔術師も団長さんもよく考えてるな。だけどダンジョンは小さいし、マジックアイテムも見つからないんだよここは。ダンジョンコアを破壊するって言ってたときダンジョンコアが『ヒィッ』て言ってたけどその体の構造で声が漏れるとか有り得ないからワザと言ってやがるな。取りあえずレベルとかチェックしとこう。



 斥候がLv35、魔術師が36で元団長が48………………………………………………正直見なきゃよかった。団長とか勝てる気がしねぇ。あと職業はみんな犯罪者になってた。犯罪者ってなんだよもうちょっと詳しく説明しろよ!

 なんて現実逃避してる時間はねぇ。


 コウは指示を出し直す。



『敵です!視認六匹!こんな魔物みたことありません!』


 まずは兵隊アリを六匹だ。兵隊アリが大イナゴを喰ったりしないか心配で、始めのうちは同じ階層に入れなかったが、味方を喰うなと命令したら、言うことを聞いたので、現在一階と二階には殆どの種類の魔物が存在している。


『落ち着けぇ!俺が三匹受け持つ!残りはお前達で『うわぁあああ!』どうした!?』


 後ろから聞こえてきた悲鳴に思わず後ろを振り返る。


『目を!目をやられましたぁあ!』


 催涙カメムシのガスで魔術師の目を潰す。十分ほどで目は見えるようになるが、十分もあれば充分だ。


 

 

 

 この作戦は魔術師の集中力が切れた瞬間を狙って実行した。だからここまでは成功して当たり前だ。ここからが勝負だ。


 兵隊アリが魔術師に噛みつこうとする。


『うわあぁ!ファイア!』

『ギギャアァァアア!!』

 恐怖に捕らわれた魔術師が放った火が兵隊アリに当たり炭にする。全く見えていない状態なのに魔術を当てるとは流石は元騎士といった所か。


 あの魔術師火属性を使えるのか…ここで仕留めておきたいな。


 一匹がやられる隙に横に移動していた兵隊アリが肩から腕ごと噛み千切る。


『ーーーっ!!?』


 目が見えない恐怖の中、想像を絶する痛みを受けた魔術師は声をあげることもなく気絶する。


 他のアリ達に加勢しにいこうとした兵隊アリに、コウは止めれを刺すように命じる。




 魔術師は排除出来た。

  

 

 次は斥候だ。


 団長と斥候と戦っている魔物たちは既にその数を、半分にまで減らされていた。


    今だ!


 コウは合図を出す。


 シュウウウゥゥゥゥと催涙カメムシが二人の間に入り、催涙ガスを全体に発射する。


『団長!ガスです!』


 二人はそれぞれ後ろに飛び、ガスを避ける。


『チッ分断させられたかっ!』


 作戦2成功。斥候を通路に立たせる。これは成功するか分からなかった。まあ最悪、分断するだけでもいいだろうと思って立てた作戦だ。催涙ガスを浴びたアリ達がよくわからない方向に攻撃を繰り出している。だが、半分はガスを避けている。団長と戦っていた数は三匹。その半分は…一匹か。だが大丈夫だ!そろそろ援軍の到着する頃だ。


 魔術師の亡骸を踏み潰しながら、赤いアリに連れられたら黒い集団、総勢二十匹。これで倒せればいいのだが。


『くっ面倒だな…だが雑魚が何匹集まろうと同じことだ!』


 凄まじい気迫だ。アリさんマジで頑張って!



 通路に飛び出た斥候は『団長!霧が晴れ次第、そちらへ戻ります!』とか言ってる。今一番危ないのは君なんだけどな。




 

 

 

                          

 

 

 一階層、真っ直ぐな道が多いのが特徴だ。碁盤の目のような構造と言っても過言では無い。


 そしてこの階層には、幾つか通ってはいけないと兵隊アリや隊長アリ、そして、催涙カメムシ達に通達されている道がある。


 何故なら……

『なぁ!?』


 アリ達が来る前から配置されていた魔物がいるからだ。

 

 

 

 イナゴ。体長3~4cm。それでいて、毎年畑を喰い尽くし、空を黒く染める。

 

 だが、大イナゴの体長は一メートルを超える。兵隊アリに比べれば小さいが、その巨体で飛ぶことができる。それも高速で。そして大きくなった口で、獲物を食らう。大イナゴの進むルートに馬鹿でかい木の板を設置すると、まるで大きな弾丸が撃ち込まれたかのように丸い穴ができている。以上が俺が調べた大イナゴの力だ。

 生き物だとどうなるのか試そうとしたがゴブリンは背が低く、あまりよく分からなかったがどれも一撃で死んでいた。


 それを人間が受けたらどうなるか。


 

 

 

 

頭がなくなった肉塊を、戻ってきた大イナゴが何処かへと運んでいく。




 最後に残ったただ一人の男。その目には怒りが宿り、鎧には斬り倒した魔物達の体液がこびりつき、彼自身は多くの傷を負っているものの、致命傷に至る傷は一つもない。


『あいつ等も闘いの中で逝けて満足だろう。だが、俺の大切な二人の部下を奪ったからには魔物共ォ一匹残らず土に還してやる!!!』


 足元には魔物の残骸が散らばっている。



 

 

   


 コリャマジでやべーかもな。


 コウはダンジョンマスターの部屋で一人、大量の冷や汗を流すのだった。


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