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インセクトマスター  作者: 天野げる
1章 死にたくないからダンジョンを創る

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10/26

元団長との死闘

 

  あの団長さんマジぶっ飛んでるわ洒落になんねーよ。


 

 まず一階層、どんだけアリぶつけてもバッタバタ倒されるし、催涙カメムシのガスを剣で斬り払いやがる。どうやら剣に風の魔術を纏って風を起こしているようだ。唯一成功した攻撃は、二階層に掘っておいた落とし穴の中に催涙カメムシを入れておくという罠だ。普段なら落とし穴になんか落ちなかっただろうけど、怒りで視野が狭くなってる団長さんは気づくことができなかったみたいだ。でもあいつ目が見えてない筈なのに、催涙カメムシ瞬殺して、穴から這い上がってきやがった。



 結論から言うと、コウは口調が変わるほどにテンパってた。


 

 作戦はあることにはある。だがこれは嫌だ。出来ればやりたくない。でももう直ぐ二階層も突破されそうだ。三階層まで敵が来たら、自分で直接相手をする、これが作戦だ。相手は明らかに格上。ダンジョンマスターにはリポップとか設定できなかった。殺されたら死ぬ。当たり前のことだが怖い。命に執着していたつもりはなかったのに。本能に刻み込まれた恐怖が身体中を支配する。だが、あのタイプの敵には、もうこれしか、手段が無い。やろう。やらなければ!


「行ってくるよ」


『うん。絶対に帰ってきてね』



 絶対帰ってこよう。そして帰ってきた暁にはダンジョンを強化しよう。絶対にだ。


 

 そう心に決めて三階層へとワープした。






「…景色が……変わったな」


 階段を降りると空があった。不思議だと思ったがあまり興味は湧かない。部下二人を失った後にそのようなことを考えられるほど、俺は感情を整理できる男では無い。早くこのダンジョンの魔物を皆殺しにせねば………むっ?向こうから誰かが走ってくる。魔物から逃げているのか!?









 俺の作戦段階1


 まずは魔物に俺を追いかけるよう命じ、男のほうへ向かう。



 段階2


 次に隙を見て男を剣で刺す。これでも生きていた場合は魔術を放って逃げる。



 これでいく。どう転んでも1時間後には全て終わっているだろう。さあ俺!腹ぁ括れ!行くぞ!!



「助けて下さいいいいいいいい!!!」


 魔物をトレインしながら大声で助けてを呼びつつ、男のほうへ一直線に向かう。


「むっ?」


 気づいたみたいだ。一回目は確実に伝わるようにした。二回目はもう無理ってアピールしよう。人を見かけて安心して力が抜けたと思われてもいいな。


「だれか…ぁハァ……たす……ハァ…けて…ハァ……」


 さあ!助けるか見捨てるか!ここが今日一番の賭けどころ!


「チッお前はどっか隠れてろ!」


 騎士としての心が残っていたみたいだ。相手が盗賊とかだったらこの作戦は絶対に実行しなかっただろう。まあとにかく俺は賭けに勝った!騎士の周りには四匹のカメムシと、上空から八匹のイナゴが狙いを定めている。そして真後ろ、この男のたった一点しか無い死角にバッチリと入り込めた。




 

「クソっ!」


 カメムシの放つガスを剣で払いのける。俺のことまで配慮しているからか、より広い範囲に力を使っているようだ。


 ちなみに俺は火の魔術のLv0にあたるのかな?足下の空気を暖めて上昇気流モドキをつくってるからガスは俺に到達することはない。


 

 カメムシは後一匹まで減らされた。最後のカメムシが突進する。ここしかない。


 イナゴ達を突っ込ませると同時に、俺も駆け出す。


 

 

 全身鎧と言えども弱点はある。それは関節部だ。人間が着るからには、関節は自由に動かせないといけない。だから堅い素材を使えない部分が発生する。


 俺は銅の剣を男の膝の裏に向けて全力で突き刺そうとする。こっちに気づいても、イナゴ達と同時には対処できまい。


「風斬り!」


 イナゴ達が一瞬で真っ二つになる。斬撃を飛ばす。そんな切り札を隠し持っていたとは、だが確実に片足は貰った!


「なっ!?」


 剣が刺さりかけた瞬間、前転をするように前へと転がった。


 

 

 気づかれてなかったはずだ。剣を突き出す速さだって充分なものだったし、タイミングも最善と言っても良いほどだった………戦闘経験の差というものか。それとも一ヶ月程度しか剣を握っていない者と剣に人生をかけてきた者との差か。俺の剣は奴には届かなかった。正確にいうならば使える手を全て使ってもあと一歩足りなかったというべきか。




「貴様ァ!」


 

 野生の勘がレベルアップしてくれたお陰で、次はどこに剣がくるか、嫌悪感が教えてくれる。左目の辺りがゾワリする。


 俺は迷わず頭を右に振る。


 さっき左目があった所を剣が貫いている。


 対して俺の攻撃は、剣で弾かれ、小手のような部分で受けられ、かわされる。



 どうすればいい。あの全身鎧の男を倒す方法を考えろ!考えろ!考えろ!


 右半身に嫌な感覚が生じ、左に転がる。




 思いついた!一つ、一つだけコイツを倒す方法がある!危険だけど迷ってる暇はない!


 それからは防御に徹する。守る、ひたすら守るーーー嫌な感覚が左胸の下部分に生じる。


 

     

     来た!


   


 俺は自分から突き刺さるように前に出る。


 男は少し動揺したが、真っ直ぐに剣を突き出す。





 剣が俺の心臓部に突き刺さる。





「残念だったなぁ。そこじゃあ俺は殺せねぇよ」


 漸くだ。この瞬間をずっと待ち続けた。


 俺はニヤリと笑い男の顔を掴む。そしてたった一言唱える。

 


【ワープ】



 ワープした地点は真上、三階層の一番てっぺんだ。地面がとても遠い。



 俺は男を投げ落とす。



 突然の事態に対応出来ずに男は重力に逆らわずに落下する。


直後、凄まじい音がフロア内に響き渡る。


「ファイアアロー」


 念のために火の矢を放ち、俺も落下する。



《初人間討ばーーーーーーー》



 頭の中で何かアナウンスが響いた気がした。


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