ある漁師の話
記念すべき初投稿
一人の少女が海辺に佇んでいる。
『私、人魚姫なの』
そういって微笑んだ彼女。
いったいいつからそこにいたのか、誰も知らない。この街の皆が物心つく前からずっとそこにいた。
―海が好きなのだろうか
小さい頃、そう思って思わず声をかけた。そうして自らを"人魚姫"と名乗った彼女。ふと、いやずっと前から思っていたのかもしれないが、私はそんな彼女のことを知りたいと思ったのだ。
「どうして、海をいつも見ているんですか?」
『…待っているから』
「…何を待っているんですか?」
『……忘れてしまったわ、ずっと前のことだもの』
彼女は自嘲気味に教えてくれた。…なぜだろう、何かを隠しているように思えた。言いたくないことなのだろうか…
「私も一緒に待っても良いです『いやよ』
『………ごめんなさい、遠慮するわ』
普段の儚げな印象とはうって変わって強く否定された。己の語気の強さに驚いたのか、少しして丁寧に断りを入れ直した。
「こちらこそ、ずかずかとすみません」
彼女の、人魚姫の隣で静かに海を眺めて時間を過ごした。不思議とゆっくりと時間が流れている気分だった。もしかしたら人魚姫には時の流れを変える力でもあったのだろうか…そんな取り留めもないことを考えていた。
『明日も…くるの?』
日も沈み始め、海が夕焼け時の鮮やかな赤を反射してきらきらと輝いていた。
「…お望みとあらば」
幸いにも少し長い休暇を取っていた私は、恭しく人魚姫の申し出に乗った。その瞬間、さながら姫に傅く従者のつもりになっていた。
このときすでに私はこの人魚姫に魅入られていたのだ。
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