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面接


気が付いたら俺はそこにいた。

何時もの様に会社の寮に戻って寝た所までは覚えているが何故か今は真っ暗な部屋に立っていた。少なくとも寝ていたベッドではない。


「ようこそ周防甲斐さん。貴方を歓迎します」


パッと明かりがつくとそこは何処かの小さな会議室のような場所だった。

長いテーブルを挟んでパイプ椅子に座っていたのは高校生くらいの女の子だった。

綺麗と言うより可愛いと言う方がしっくりと来る。

そんな女の子だった。


「どうぞおかけください。私は担当の緋色と申します」

「はい失礼します」


言われたままにパイプ椅子に腰掛けたはいいが何が何やら。

緋色と名乗った女の子はテーブルに置いてあった紙を手にとった。


「では周防さん。勝尾株式会社に勤めておられるとの事ですが、どのようなお仕事ですか」


あれ、これは面接か 

と言う事はあの紙は最近書いてる俺の履歴書だろうか。


「はい、個人向けの投資の営業です」


そもそもここは何処だ。

俺は何の面接を受けに来たんだ。


「なるほど。ではいくつか質問します」


緋色さんは履歴書から顔を上げて真っ直ぐに俺を見た。

何か分からないが真面目に答えよう。


「では、貴方は海で遭難して無人島にたどり着きました。便利な道具を幾つか持っているか、それとも2人の仲間と到着するならどちらを選びますか」 


これは、アレだろうか。

たまに面接でこう言った一見業務と関係無いような質問をする事があると人事の人に聞いた事がある。

問題はどちらを選んだ方が良いかだが。


「道具を選びます」

「それは何故ですか」

「探索や食料などの確保は人数が多い方が良いですが、食べ物や飲み物を十分に得られなければ譲り合いより奪い合いになるでしょう。自分の知らない役立つ知識を持っているかもしれませんが、世の中には信じられないような馬鹿がいるのでそんな人かもれません。何より人は人を裏切りますが道具は裏切りません。だから道具を選びます」

「なるほど」


緋色さんは手元の紙に何かを書き込んでいて非常に気になる。

馬鹿正直に答えてしまったがまあ良いだろう。

世の中には本当に信じられないような馬鹿がいる。

どうしてそんな事をするのか。

そんな事をしたらどうなるのかを考えないような馬鹿が。

そんな連中はとは関わってはいけないがこの場合可能性は低いが、そんな連中と当たってしまったら絶望のため道具一択である。

具体的に言うと会社の連中。 


「では次に、貴方はゲームは好きですか。具体的にはファンタジーのRPGなどは」

「はい、かなり」

「なるほど」


学生の頃はよくやっていた。

寝る間も惜しんでレベルを上げたものだ。

またしても緋色さんは手元の紙に何やら書き込んだ。


「ではそんな世界に行くとして何か特別な能力を得られるとした何を望みますか」

「能力、ですか」

「はい。ただし1つだけです」


悩むところだがさっさと答えなければならない。


「そうですね。ならやっぱり魔法でしょう。ファンタジーの世界なら」

「なるほど、魔法使いですか。分かりました。では最後にどんな系統の魔法を望みますか」

「系統。ああ火か水とかですか」

「そうですね。1つだけです」


それなら考えるまでもない。 

 

「どんな相手でも倒せる万能属性が良いです」

「万能、ですか」

「はい、純粋な魔法攻撃です。炎が効かないとか、光しか効果がないとかそう言う物を無視して相手を倒せる魔法ですね。昔やったRPGで何度か感じた事があるんですよ。まあそれを言ってしまえばゲームが成り立たなくなってしまいますが、それでも気に入らない事がありまして」

「どんな事ですか」


おや緋色さんの目が輝いている。

俺の話に興味があるらしい。


「私はイベント戦闘が大嫌いでして。特に負けイベント戦闘が」


イベント戦闘とはゲームを進めて行くと強制的に発生する戦闘だ。そして負けイベントとはその名の通り必ず負けるのだ。


「特定のアイテムを持っていないとダメージを与えられないとか。なら最初から戦闘にするなと言いたくなります。酷い物になるとダメージを与える事が出来るから物凄くレベルを上げて倒したのに負けたとして話が進んだりしたのもありました。だからそう言った事のないような、相手がどんな状態でも倒せる万能系が良いです」

「なるほど。貴方もそうでしたか。私もああいうの嫌いなんですよ」


おやこの人は同志だったか。


「魔法攻撃を避けるとか当たっても耐えるなら納得しますが、システムと言う無敵のバリアで守られた相手と戦わせるとか本当に嫌いです」

「分かります!分かりますとも!」


緋色さんが目をキラキラさせている。

どうやら琴線にふれたらしい。

 

「他にも攻撃したらダメージが入ったので何日も頑張ってレベルを上げてボスの体力を削りきって勝ったと思ったら次のシーンでは負けた時と同じようにこっちが膝を着いて『な、なんて強さだ!』とか言ったゲームがありました。そのゲームはすぐに売りましたけど」


本当に何のための戦闘だと言いたかった。 

最初から戦わせるな。


「ですからそう言ったインチキを無視できるものが欲しい訳です。威力はレベルを上げれば何とかなるでしょう。魔法も反射するアイテムや魔法を無視する属性無しの万能攻撃魔法。私はそれが欲しい」


緋色さんは俺の言葉に思う所があるらしく何度も深く頷いた。


「貴方の仰りたい事、私は凄く分かります。最強の矛と盾を出そうとして辻褄が合わなくなったり、ボスキャラは凄いんだぞ、幹部は強いんだぞと見せようとして度が過ぎてこっちが一気に冷めるなどですね」


うんうんと頷いている様は下手したえら中学生にも見えかねないがこうして面接官をしている以上少なくとも20代後半、つまり俺と同い年かそれ以上のはず。

と言うか俺はゲーム会社の面接に来ているのだろうか。

緋色さんは満足そうに手元の紙に何か書き込んだ。


「では以上でこちらからは終わりです。何か質問はありますか」

「いえありません」

「結果は後日連絡させていただきます」

「はい、本日はありがとうございました。失礼します」


俺は立ち上がって一礼し入って来た扉に手をかけた。


社蓄の朝は早い。

いつものように枕元の目覚まし時計が鳴る前に目が覚めた。テーブルの上には昨日の夜に書いていた履歴書がある。


「変な、夢だったな」



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