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最終話 フランはユウと永遠を誓う


「ああ、オリヴァー!」


 戻ってきた母さんは俺を見るなり涙をボロボロに流して抱きしめてきた。


「ごめんなさい、本当にごめんなさい。私はあなたを守るべきだったのに……」

「もういいよ……そんなに謝らないで」

 

 俺は力なく答える。複雑な気持ちがあっても責める気にはなれなかった。


 父さん達が言うには、俺が出て行った2週間後にヒーラーが町を訪れたらしい。住民は悪魔が現れたと俺の嘘を真に受けて相談したそうだが、ヒーラーはそれを否定し俺のことを弁明してくれたそうだ。


 闇の属性は悪ではない。俺は罪悪感を抱かせないように出ていった。


 やはりヒーラーの言葉には強い力がある。住民達は彼女に説得をされて認識を改めたようだ。同時に両親は密かにあった罪の意識が浮上し、俺を探そうと決心したらしい。


 当時の俺が説明してもきっと納得はしていなかったんだろうな。


「あなたが息子と一緒にいてくださったのですか」


 母さんはパパの方を向いて感謝の意を表す。パパは居心地が悪そうにしているが、「ええ」とどうにか笑顔を作っていた。


「どうかお礼をさせてください。息子とまた巡り逢えた奇跡に感謝してもし尽くせません」

「……息子さんのことをずっと後悔されていたんですね」


 パパの言葉に父さんも母さんもうなずく。


「見つけ出すまで故郷には戻らないと決めていました。情報がないので手当たり次第という感じで苦しい時期もありましたが、この子の悲しみと比べれば大したことありません」

「ずっとオリヴァーに謝りたいと思っていたんです。そして許されるならまた一緒にいたいと。この子は幼い頃から優しくて素直な子で……」


 両親の視線は俺に向けられる。


「オリヴァー、今まですまなかった。もしお前が私たちを許してくれるなら、また一緒に暮らしてくれないか?」

「私も父さんも心からあなたを愛してる。それに……あなたはもうすぐお兄ちゃんになるのよ」


 母さんはそういってお腹をさすった。少し膨らんでいるそこには命が宿っているのだろう。


 両親は言葉の通りに心から後悔しているんだと思う。

 でも俺の心は決まっている。


「俺にはもう新しい家族がいる。父さん達のことは許すよ。でも、一緒には暮らせない」


 父さんと母さんの表情が曇る。母さんはまた泣き出しそうな顔だ。


「俺を探してくれてありがとう。父さんと母さんが元気そうで、妹か弟ができるって話も聞けて嬉しかったよ」


 でももう分かれた道をさかのぼるつもりはない。


「今の俺はオリヴァーじゃなくてフランだ。これからもフランとして生きていく。……さようなら、どうかお幸せに」


 かすれる言葉で言い切ると、俺は走り出した。


「オリヴァー!」


 父さん達の悲痛な声を背に走り続ける。人混みをぶつかりながら無理やり通り抜け、宿へ向かった。


「フランさん?」


 部屋に戻ると、椅子に座って外の景色を見ていたママが驚いた顔でこちらを見た。いつもと変わらない優しい眼差し。


 その胸に勢いよく飛び込んで、俺は声の限り泣き叫んだ。


「フラン……」


 後から追いついたパパが俺の頭を撫でてくれる。ママも優しく抱きしめてくれた。


「フラン、よく頑張った。自分の気持ちを伝えられて偉いぞ」


 パパもママも泣き止むまでずっと側にいてくれた。

 とても温かい。これからもずっと一緒にいたい。


 俺の居場所はここだ。

 俺はフランだ。


※※※


 泣き疲れて眠って、目が覚めたらすっかり日が沈んで夜になっていた。

 パパが屋台でご飯を買ってくれたようで、部屋で夕食を食べることにした。


「そういえば、またあのご両親と会ってな」


 パパの言葉に俺はビクッと肩を揺らしてしまった。

 ママはパパから話を聞いたのか、労わるように俺の背中をさすってくれる。


「散々謝ってきたけど、俺もフランと離れるつもりはないって伝えた」

「それで……」

「しばらく悩んだ後、息子をよろしくお願いしますって頭を下げていた」

「……そっか」


 その話だけで十分だ。もう心残りはない。


 夕食を食べ終わってママが淹れたお茶を飲んだ後、俺はパパを誘って宿のバルコニーで風に当たることにした。


 祭りは夜も続いていて、どこも灯りが眩しいくらいに輝いている。


「すごいな。夜なのに夕方みたいだ」

「うん」


 手すりに両腕をつきながら風景を眺めると、ふと心に浮かんだ想いが口から出てきた。


「俺、パパやヒーラー達と一緒に旅をしてさ……本当にただの人間だったら良かったのにって。実は心の中で何度も思ってた。でもダメだって気づかないフリしてた」

「フラン……」


 俺はずっとパパ達と一緒にいたかった。

 もしパパがあの時俺の手を取っていたらどうなっていたんだろう?


 世界は大変なことになっていたかもしれないけど、お互いに使命も何もかも捨てて生きるのはそれはそれで楽しかったかもしれない。


「パパ、俺を見つけてくれてありがとう」


 でもあの時、森でパパが俺がフランだと気づいてくれたから今がある。


「家族になってくれてありがとう。愛してくれてありがとう」


 パパは俺に目線を合わせて優しく微笑んでくれる。


「俺だって君が側にいてくれたから生きる希望を見つけられた」


 パパはいつもそうやって言ってくれる。


「フラン、俺と出会ってくれてありがとう。もし君がまた生まれ変わっても、俺はずっとずっと君の家族だ」

「種族が違っても?」

「もちろん」

「知能がない生き物になるかも」

「関係ない」

「もしかしたら次は記憶がないかも」

「それでも変わらない。俺は君の父親だ。何があっても永遠に」


 町の灯りのキラキラが、まるでパパのように温かい。

 心が大きく揺れて涙が止まらなくなる。


「これからもよろしくね」


 そう言って俺はパパを抱きしめた。パパも抱きしめ返してくれた。

 その温もりは前世でずっと求めていたもので、現世ではいっぱい与えてもらえる。


 ずっと放さない。


 これからもずっとずっと。


 …


 ……


 10年後。この国では世界で一番優れた魔法使いが誕生し、魔族と人間の共存に大きく貢献した。


 彼の両親は血縁関係がなくても息子を深く愛し、その溺愛ぶりは100年後には歌物語として語り継がれることになる。


 そんな魔法使いと父親が、魔王の後継者と勇者の関係だったと知る人はもういない。


 ただわかるのは、彼らが心から愛し合っていたことだけだった。


【終わり】

読んでいただきありがとうございました。

これでフランのお話はおしまいです。お付き合いいただき重ねて感謝を。


色々反省点が多いですが、どうにか書ききれて良かったです。

ブックマークや評価をいただけると次の作品作りの励みになります。

また番外編をどこかで追加するかも……。


それではまた別の作品で。

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― 新着の感想 ―
ブロマンス小説を探していてこちらの作品を見つけました。フランとユウ、種族と立場が対立する二人が惹かれ合う過程が非常に尊くて胸が熱くなります。擬似親子なのがまた。アルベルトも綺麗で優しくて慈悲深くて、フ…
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