変人二人の中に、凡人が一人
ロロウィ・アルハンブラという男は自他共に認める変わり者である。
それは変人という意味よりもむしろ、人と違う事を好むという部分がそう呼ばれる理由となっていた。
中年独特の色気とうさん臭さを持つ彼は、元々そこそこ以上の企業に就職していた。
世間一般で言えば成功者と呼ばれる位置に居たと言っても良いだろう。
にもかかわらず、全てを捨てて冒険者の道に入った。
そんな経歴だからこそ年齢も高く、同時に冒険者見習いらしからぬ『場慣れ具合』であり、その『風格』は既に一流のそれと同じであった。
まあそれは『一流の冒険者』という意味ではなく、ただの『一流の男』と呼ぶ方が近いが。
事実、彼の風格は冒険者のそれではなく企業とか内政官とかそっちの方が近い。
そんな彼のモットーは『重要な選択は己の手で決める』というもの。
運命とは誰かに委ねる物ではなく切り開くべきものである。
それが彼の生きる上での道標でありポリシー。
ここまでは、まだ良い。
ここまでならただのダンディなおっさんだ。
だけど彼は、何故か知らないが逆に『運命以外の選択は全部運否天賦に任せよう』なんて悪癖も持っている。
食べたい物が二択の時はコイントス。
行きたい場所が四方角の時はルーレットを回してその向きに。
無数の選択から一つ選ぶ時の為に、常に籤を入れる為の紙箱まで持ち歩いている。
せっかく途中まで仕事の出来そうなダンディだったのに、その所為で何か変なおじさんにランクダウンしてしまっていた。
そう、彼は常日頃から天に委ねて生きている。
重要な部分以外は全部彼はランダムな道を歩いている。
それでも、彼は一度たりともそのランダムな道を投げだした事はない。
自分で選んでいないからと言って蔑ろにして良い訳ではないと思う程度には責任感を持っている。
今回の事もそうだ。
偶然がきっかけとは言え、彼はクリスという存在を友と認識している。
動物扱いすべきか対等な男扱いすべきか悩んでいるが、それでも彼にとっては彼はまごう事なき友であった。
要するに……彼は、面倒見が良かった。
多少のトラブルなら一緒に抱える程度には、面倒見の良い変わり者の男であった。
学園側に連絡を取って個室を用意し、話しやすい場を用意した後場を温める意味も込め紅茶を用意。
その上で、彼は二人を区切る様その中間点に座った。
クリスとリュエルの二人の、その話し合いを中立の立場で聞くという姿勢を見せる為に。
はっきり言おう。
これは面倒事である。
リュエルという同期どころか同学……いや、二年先まで含めて見ても並ぶ者はいない。
勇者候補というのはその名を背負った時点で一流冒険者と同等の存在なのだと言っても決して過言ではないからだ。
その彼女が、わざわざDクラスのお世辞にも恵まれていると言えない彼に熱烈とも言える程の勢いでパーティー要請を出してきた。
何が彼女の理由に触れたのかわからないが、真っ当な理由であるはずがない。
だからアルハンブラは、中立でありながらもリュエルに対し最大限の警戒を向けていた。
まさかのアルハンブラも、極度のぬいぐるみ好きだからなんて理由は想像出来る訳がなかった。
更に言えばもう一点、アルハンブラがお節介を焼く理由があった。
どんな理由にせよ、これはクリスにとって多大なメリットとなる公算が高い。
なにせ相手は正しき存在である勇者候補。
おふざけや揶揄い、悪戯目的でパーティー申請を行える立場ではない。
彼女にその意図もなさそうに見える。
もしもがあるから用心して考えたているが、友の為にもこの話し合いはうまくいって欲しいとアルハンブラは願っていた。
だというのに……熱意持つリュエルとは対照的にクリスの方がどうも乗り気ではない。
価値ある彼女が求め、価値薄き彼が拒絶する。
訳がわからなかった。
「さて……とりあえず今回に関して私は中立という立場を取る。クリスを我が友と思うのは事実だが、話を纏める為に中立である必要があると考えたからだ。異論はないかね?」
クリスは小さく頷いた。
「うぃ。助かる」
「ああ。ミスリュエルも、私の介入は構わないかね?」
「問題ない。ありがとう」
それだけを言葉にし、リュエルも頭を下げた。
クリスの味方となる事も出来るのにわざわざ中立を宣言した。
それが自分の為であるという事がリュエルにはわかっていた。
ただ同時に、それを伝える為の口を彼女は持たない。
彼女はどちらかと言えば、口下手な方であった。
「双方の理解に感謝する。さて、此度はパーティー申請についての話し合いだが、まずは自己紹介から行おう。まずは司会進行役のロロウィ・アルハンブラ。クリスの友であり君達の同期だ。私はこれだけだが君達はもう少し深く自己紹介をしてもらいたい。つまるところ、自己PRの機会というものだ」
「だったら、声をかけた私からすべき」
リュエルはそう言葉にした。
「私はリュエル・スターク。技術、スキルは剣技が中心。魔法は苦手寄りだけど能力的には出来ない事はない……と、思う。オンリースキルとして『白の権能』を持って――」
「はいストップ」
アルハンブラは頭を抑えながら、言葉を止めた。
「……何?」
「いや、とりあえず、正気?」
隠すべき情報をブッパしてきたリュエルに対し、真正面からそう尋ねた。
リュエルは訳がわからず首を傾げていた。
オンリースキルとは通常手段では身に付けられない種族特徴以外の能力の俗称である。
オリジンは当然として、遺伝にて継承される『ブラッドホルダー』やダンジョン探索にて突如目覚めるとされる『迷宮の加護』神に見初められた証である『使徒』当たりが代表的な物だろう。
オンリースキルと俗される物はどれも希少な能力であり、一度知られればどんどん広まっていき余計な混乱を招く。
羨望と嫉妬、やっかみに乞食といった厄介事の混乱を。
だから基本的に隠すのはセオリーなのだが……何故か彼女は全ブッパだった。
勇者というだけでなく熱烈アプローチを受ける立場の彼女が戦闘向けのオンリースキルまで持っていると知られたら、スカウトで死人が出る事となるだろう。
しかも、アルハンブラは『白』という言葉が特別であると理解している。
勇者候補が白と名の持つ能力を持つという事は、場合によれば国が直々に動く位に大きな事であると。
まあわかりやすく言えば『馬鹿じゃないのかあんたは!?』とアルハンブラが叫びたい位にはリュエルは『常識離れ』した存在であり、そして同時に『常識不足』な存在でもあった。
「何が?」
「いや、オンリースキルのはああ。冗談か。そうだね」
空気を読んで、アルハンブラはそう言葉にする。
これで冗談だと答えてくれたらそこで話を切り替えられる。
だからそう言えと暗に目で訴えてみたが……。
「何が? 私は最初から、真面目で本気」
少し怒った様な様子の彼女を前にして、アルハンブラは顔を抑え、大きく溜息を吐いた。
どうやら勇者候補様は凄いお方らしいが、交渉という分野においては一年生レベルらしい。
どうやってそれで勇者候補に成れたのか不思議な位に、彼女は常識を知っていなかった。
「……ミスリュエル。ぶっちゃけ、貴女コミュニケーションが苦手ですね」
「凄い。どうしてわかったの?」
「その受け答えだけで十分理解出来ますよ……。それでクリス。一つ尋ねても良いかな?」
「うぃ。どうぞどうぞ」
「何でさっきから若干嬉しそうなんです? 少し前まではちょっと困った顔していたのに」
「一緒に学べるって、とっても良い事だから」
こっちもこっちで、アルハンブラには思考回路が全くわからなかった。
「オンリースキルの事は忘れますので別の話題で続きをどうぞ」
「一番の売りなのに、良いの?」
「良いんです。というか話したらいけない事なんですよ」
リュエルははっとした顔になった。
誰かにそう言われた事があるのか、思い当たるフシはあるらしい。
どうせならそのフシをもう少し早く思い出して欲しかったが。
「わ、わかった。私は何も言ってない」
「はいよろしい」
「戦闘スタイルは前衛アタッカーで、活動は基本ソロだった。攻略したダンジョンは三つ、救った街は五つ。それなりに実績はあるはず」
絵物語の英雄相応の活躍をしておいて、それなりというのは嫌味だろうか。
一瞬そう思うが、その考え方を改める。
リュエルはそこまで考えていない。
彼女は本当に、それを大した事と思っていないだけである。
こと交渉事においては、これほど頼りにならない存在はいないだろう。
小さく、こっそりと溜息を吐いてからアルハンブラはクリスの方に目を向ける。
クリスの方は……何故かその頼れる実績を聞いて若干嫌そうな顔をしていた。
嫉妬とかそういうのではなく、彼女に興味が薄れたとか、そっち方面の感じだった。
「それじゃあクリス、自己紹介を」
「うぃ。私はジーク・クリス。能力は……何もない感じ? ぶっちゃけ今の私たぶん雑魚。生徒で一番弱いかも。でも将来的には天辺目指して頑張りたい所存です!」
きりっとした顔でクリスは言い切って、アルハンブラは顔を顰めた。
出来ないけれど熱意はある。
アピールとしてはおおよそ最悪な部類だ。
バンドマンが何の努力もせずに『俺は才能あるからビッグになるぜ』と言っている様なものである。
だが、リュエル的にはオーケーだったらしい。
「素晴らしい向上心。見習いたい」
アルハンブラは再び溜息を吐いた。
最初は、上手くいかない二人の仲介をしようなんてお節介を考えた。
だけど、それはもう色々と勘違いだった。
パーティーを組むとか組まないとかそれ以前。
自分の役割は、天然二匹に人間らしい交渉をさせる事。
つまり……これは『面倒事』ではない。
これは、『とびっきり厄介な面倒事』であった。
とは言え、それがわかった今でもアルハンブラの中には途中でほっぽり出そうなんて考えはない。
己の意思で友とするときめたクリスを投げ出すという選択肢は、アルハンブラの中には最初からなかった。
「ダンジョンとかも当然冒険者としてもなんも未経験。基本知識はラノベからです」
「未知であるのに自信に溢れれているのは凄い勇気。カッコいい」
溢れ出るクリスの駄目さを全て肯定するリュエル。
どこまでが本気なのかわからないが、おそらく当事者はどちらも本気なのだろう。
そう思いたくないが、それが事実である可能性が最も高かった。
本当に、『二人して自分を揶揄ってくれていたらどれだけよかっただろうか』と、アルハンブラは思わずにはいられなかった。
「あー……クリス。すまない。中立から外れるが、このまま行けば会話は終わらない。少しだけ、彼女に肩入れしても良いだろうか? もちろん、君が友であるという事を念頭に置いてだ」
「うぃ。アルハンブラのポリシーがそうすべきと思ったなら、どんどんそうして」
「感謝する。ミスリュエル。少し奥の方に」
アルハンブラはリュエルはを立たせ部屋の隅に誘導する。
リュエルは言われるがままではあるが、どことなくアルハンブラから距離を取っていた。
嫌っている訳ではないが、プライベートスペースを護る様な、異性として拒絶する様な、そんな態度だった。
「さて……少し話をしよう。見ての通り我が友はあまり君とのパーティーを好ましいと思っていない様子だ」
「え? ……そんな馬鹿な。好感触だと思っていたのに……」
「本当に気づいていなかったのかい? だったら私が間に入る事はなかったよ」
「……うん。気づいてなかった」
表情は変わらず淡々と。
だけど、雰囲気は明らかにがっかりとしていた。
鉄面皮……というよりも表情を表すのが苦手らしい。
「それで、少しだけ本音で話して欲しい。どこまで本気だい?」
「無論、全て。どこまでも」
リュエルはアルハンブラに、そうはっきりと断言した。
だからこそ、その言葉がアルハンブラには軽くしか聞こえない。
はっきり言えば、信じられなかった。
これまでの会話からも、リュエルを信じるという要素は欠片もなかった。
むしろ冗談であってほしいとも思っている。
戦闘力はあるだろうが、今の交渉では子供にしか見えなかった。
「知っていると思うが、正規パーティーにも二種類ある。学内限定の物と、正規の国が認可した物。前者は良くも悪くも学内限定だから多少失敗しても後からなんとかなる。けれど、後者は一度結べば破る事叶わない。それこそ、君の様な立場であるなら猶更ね」
「……何が言いたいの?」
アルハンブラはそっと、彼女に書類を渡した。
「要するに、本気に見えないから君の本気を見せて欲しいんだ。これは学内ではなく正規パーティー契約書であり、誓約書だ。これでパーティーを結べば契約解除の書類申請が通るまでずっとそのまま。一生彼の面倒を見る事となる可能性もある。本当にどこまでも本気であるのなら、これに名前を書けるはずだよね?」
リュエルは静かに、首を横に傾けた。
どうすればいいか困る様に。
当然の事だが、アルハンブラは本気ではない。
これはただの脅しだ。
学内でパーティーを組もうとしているのにいきなり正規の物を用意されて『一生涯彼と共にしろ』なんて無茶であるとアルハンブラ自身が理解している。
その上で、どこまでが彼女の本気で、どういう意図なのか、それを探る。
我が友の為に、本当に我が友を任せても良いのか知る為に。
アルハンブラには現実が見えていた。
クリスはきっと、誰ともパーティーが組めない。
肉体は小さく、力は弱く、それでいてあの舐められる外見。
そんな彼相手に、冗談でも何でも勇者候補生が組もうと言っている。
それは間違いなく彼にとっての救いのはずだ。
彼を任せたいとアルハンブラも思っている。
だが……今の彼女は信用出来ない。
だから……信じる要素が欲しかった。
「もちろん。君の混乱もわかっている。だが、どこまでもという事はそういう暴論にも成立するという事でもあるんだ。冒険者として活動していたであろう君ならばわかっているはず。それは婚姻の契約に等しい。正規のパーティーを組むという事はそれだけ重要な事で――」
「ん」
「……ん?」
「だから、書いた。これを書いたら提出してくれるんでしょ?」
「……は?」
そんな馬鹿なと思い、書類に目を向ける。
リュエルはしっかりはっきり、書類の必要事項全てに記載してあった。
「い、いつの間に……」
「そんな事はどうでも良い。これで良いの? 後何をしたら彼と組ませてくれるの? 私の貯金位なら差し出すから、早く」
相変わらずの無表情のはずなのに、その雰囲気に飲まれる。
まるで獰猛な肉食獣を前にした様な空気を、アルハンブラは味わっていた。
「い、いや。これは試しで、実際には組む事は……」
「どうして? 書類に書けば正式なパーティーになれるのでは?」
「いや、そもそも、今の時期は学内用の正規パーティーしか認められない事になってるから……こういう正式なのは、まだちょっと……」
「何故?」
「新入生はお試し期間という感じで……」
「そう、残念。それで、次に私は何をすれば良い?」
アルハンブラはようやく、自分の勘違いに気付いた。
彼女は最初から学園内用のパーティーを求めている訳ではなくて……。
「……もしかして、正規パーティーの方を、一生涯の相棒という意味も兼ねて、クリスと組みたいのかい?」
「何を言っているの? 私は最初からそう言っているけど?」
きょとんとした顔で、リュエルは断言する。
「……最初からオールベッドだったのか。失礼した。ミスリュエル。貴女の覚悟を見誤っていた様だ」
「どうでも良い。それより、どうしたらクリスきゅ……君と組めるのか教えて」
「きゅ? いえ、失礼。揚げ足取りでした。では、彼に聞きましょうか。どうすれば貴女と組めるのか」
「ん。任せた」
気づけば代理人の様な事になっている状況にアルハンブラは苦笑する。
とは言え、たぶんこれが最も早いだろう。
クリスとリュエルだけに会話をさせたなら、十時間かけても本題に行きつかない。
何となくの予感だが、きっと勘違いではないだろう。
「さて、我が友クリス。少しだけ申し訳ないが、彼女側に立たせて貰う。理由は……」
「言わなくても大丈夫。そうすべきと思ったんなら、気にしないで」
「ああ。その上で、単刀直入に聞こう。彼女は間違いなく、冒険者界隈において当たりくじだ。それも宝くじ一等相当の」
無表情のまま、リュエルはえへんとない胸を張った。
「うぃ。そだね」
「それがわかって、何故君は否定的なのか教えて欲しい。君の事だから気遅れとかそういう事はないだろう」
「うぃ。ぶっちゃけ強すぎ」
「……強すぎる? それが悪い事なのかい?」
「私の希望は主人公無双系じゃないの。もっと修行したりとかそういうのなの。だから仲間に欲しいのは主人公最強キャラよりもむしろちょっと劣ってるけど磨けば光るタイプなの。序盤は駄目な位で丁度良い感じの。具体的に言えばダ〇大のポ〇プ君的な」
アルハンブラは静かに、ゆっくりと息を吐きながら天井を見上げた。
「ミスリュエル。クリスの言っている言葉の意味がわかるだろうか? ちなみに私にはまるでわからない」
「私もわからない。そういうところもミステリアス」
「うん。私みたいな凡人には二人を理解する事は難しいって事はわかったよ」
凡人である事を、アルハンブラは嫌っていた。
だが、今は自分がそうであると実感出来た。
むしろ凡人であるという自覚が己を安堵させていた。
「け、建設的に行こう。どうすればミスリュエルとパーティーを組む気になれる?」
「むぅ。うーん。……勇者候補生じゃなくなるとか?」
「あ、これ内緒だけど近い内に私勇者候補生じゃなくなるかもしれない。陰謀的なあれこれで候補生になったから」
「えっ」
「えっ」
クロスもアルハンブラも、眼が点になった。
「えっ?」
何故かリュエルも目が点になった。
「……後は、剣が少し強すぎる様な……」
「へし折ったら良い?」
そう言いながら、リュエルは自らの剣をぽいっと投げて、その上からそこいらにあったパイプ椅子で打ち付けようとして……。
「思い切り良すぎ。ストップ! しばらく使わないとか売るとかあるから! 早まらないで!」
アルハンブラは必死に静止しながらそう叫んだ。
「そうか。貢も……パーティー共有資産に出来るしそうしよう。それで、他には?」
「後は……特殊能力を封印してくれるなら、流石に文句はない」
リュエルはだらだらと冷汗をかきだした。
「……こ、これがアルハンブラの言っていたオンリースキルを話すと不利になるという事。本当だ、本当に後悔する事になった……」
「違う。私の考えとは違う……。そしてクリス。流石にそれは無礼が過ぎる。その気があっても出来ない事を無理に要求するのは、紳士的でない行為だ」
「……その気はあるの?」
クリスの質問に、リュエルは頷く。
「それで貴方と組めるのなら、私は何でも行う覚悟がある」
「……どうしてそこまで?」
「深い理由はない。ただ。そうしたいから。そう、死が二人を分かつまで」
その言葉に、クリスは目を丸くし驚いた様子を見せた。
そして……楽しそうに、本当に楽しそうに笑った。
小さな獣ではなく、まるで老人が孫を見る様な、そんならしくない雰囲気で。
「そうかそうか。だったらしょうがないね。運命だもんね。能力の封印装置をこっちが用意するよ。それを付けてくれるなら、こちらの要求はもう何もないんよ。お世話になります」
クリスはぺこりと頭を下げた。
「……ん。わかった。これからよろしくお願いします」
そう言って、リュエルはぺこりと頭を下げた。
小さくそっと、アルハンブラは溜息を吐く。
そして苦笑しながらもパーティー成立を祝い小さな拍手を送った。
ありがとうございました。