にゅーがくしき
夜、かすかに梟のさえずりだけが聞こえる静かな時間。
この心地よい孤高の時間が、彼は一番好きだった。
ソファに腰かけながら、リーガは夜空に傾けていた意識を二段ベッドの上に向け直す。
毛布と区別が付けにくい、その不可思議な生命体に。
そっと微笑み、彼はズレていた毛布を掛け直した。
すやすやと心地よく眠っている不思議生物。
幾ら魔族が千差万別の見た目をしているからと言ってもこんなのは見た事がない。
悍ましい姿の魔族を見た。
固形を保てない姿も見た。
作られた魔族にも会ったしゴーストだって見ている。
だけど、それでも、彼はそれらと比べても尚異質であった。
その姿はあまりにもファンシーが過ぎる。
寝息がなければ、それを魔族とは思わずぬいぐるみだと確信するだろう。
いや……リーガは出会った時じゃあなく、最初から知っていた。
これが外見だけがおかしい存在ではなく、内面さえも普通ではないと。
そう、彼は最初から知っていたのだ。
そう頼まれて、ここに居るのだから。
クリスは一度も、彼に尋ねなかった。
『何故一時寮に在校生が居るのか』
『どうして自分と相部屋になっているのか』
疑問に思わない訳がないはずなのに。
それにも関わらずクリスが尋ねなかったのは、間違いなく敢えてだろう。
敢えて、尋ねずにいてくれた。
更に言えば、初見でリーガを見抜いたその瞳。
リーガは冒険者の中でも対人に特化した能力を持ち、その中でも暗殺や隠密という裏稼業側に片足突っ込んでいる。
故に、己の戦闘力の隠蔽には絶対の自信があった。
今のリーガは魔力も圧も風格も全てが雑魚そのもの。
だというのに、あのナマモノは初見で擬態そのものを見破り、真に近い実力を読み取って見せた。
どこまで見られたのかはわからない。
魔力反応がなかったから、どんな能力を使って見抜かれたのかさえわからなかった。
ただ、自慢の偽装が通用しなかった事だけは確かだった。
――伊達に僕直々への依頼じゃないって事か。
リーガは苦笑いを浮かべた。
一時寮には変わり者も多いが、純粋な荒くれ者といった厄介な客が一番多い。
それが相部屋になろうものなら、トラブルが起きないなんて訳がない。
冒険者に成ろうと目指す者は夢とか希望だけじゃなく『他に選択肢がない』者も決して少なくない。
そんな新入生が起こす問題を処理するトラブルバスターが、この寮の中に何人か滞在している。
教師も混じっているが、その大半は現役の学園生。
その一人がリーガである。
再び、ベッドの様子を見る。
よほど深い眠りについているのか、こちらに気付くそぶりさえもなく心地よい寝息を立てていた。
このちんちくりん具合とその愛くるしい外見は擬態なのかもしれない。
そうリーガは一瞬思って……すぐにそれを否定する。
静かに、その頭と耳を撫でる。
「にゃふふ……」
何か嬉しそうに微笑み、そしてより深い眠りに。
どうみてもこいつは擬態出来る程に器用じゃあない。
良くも悪くも純粋だ。
いや、違う。
『純粋過ぎる』
子供だってもう少し悪い事を考える。
純真無垢なるその魂はまるで赤子の様だ。
だからこそ、ちぐはぐだった。
リーガに課せられた依頼内容は、実はそう難しい物じゃない。
もしクリスに聞かれていたとしても、全部丸ごと話しても別に問題なかった。
内容を聞かれたら迷わず答えようと決めていた位に、今回の依頼はクリーンな物だった。
不思議なナマモノと相部屋になって傾向を見守る。
何かしでかしそうだったら即座に連絡、後に退学処分を通告。
そうでなくとも色々と気を配って欲しい。
絶対に殺すな、殺意さえも向けるな。
依頼内容は本当にこれだけだった。
事前に聞いた相手の情報も名前と容姿程度で、どの方向に気を配れば良いかも教えて貰っていない。
正の方向か、負の方向か。
分かっているのは……依頼相手がこの学園の最高責任者で、そしてその学園長が最大限気を配っているという事実のみ。
そう、リーガは答えるつもりだったのだ。
クリスに対し『学園長からこれだけ目を付けられているぞ』と教えるつもりだった。
だけど、クリスは尋ねなかった。
ただ漫画談義をしただけで、そのまますやりと眠り今に至る。
「気が合う……とは思う。少なくとも、読書仲間にはなれそうだ」
楽しく話せた事を考え、リーガはそう思えた。
冒険者という間柄で読書が趣味という存在は思った以上に少ない。
漫画であっても語り合えたのは本当に久方ぶりだった。
だけどその事実は同時に、冒険者になる読書好きが少ないという意味でもある。
本を楽しむ程の読解力があるならば冒険者よりもっと楽に稼げる道があるからだ。
そう……獣身の里を飛び出したリーガは他に選択肢はなかったが、クリスは違う。
しかもクリスの場合はそれだけでなく、この外見と能力である。
可愛い容姿に鋭い瞳。
正直に言えば、クリスが冒険者としてやっていけるとは思えない。
というか絶対にもっと別の天職がある。
この愛くるしい外見ならば。
自分の擬態を見破った時点で常人ではない。
よほど特殊な独自スキルか、特別な血族遺伝か、起源能力か……またはそれ以外の何かか。
何かはわからないが、どれにしても容易く大金が稼げる能力である事は間違いないはずである。
解析能力というのはそれだけ希少な能力なのだから。
だがそんな能力を持っている割に他があまりにもぽんこつ過ぎる。
冒険者としてその力を生かすのは限りなく難しいだろう。
リーガは対象の動き方や話し方、持ちうる常識やマナーといった生き方である程度過去を特定出来る。
だが、今回は全く見えてこなかった。
クリスがどこでどう過ごしていたのか、全く見えなかったのだ。
まるで、過去がない亡霊の様に。
伽藍洞で赤子の獣。
一瞬だが、そう思えた。
ああじゃないこうじゃないと自分の意見を否定し続けて、色々考えてみて……そしてリーガは気づいた。
何かはまではわからないが、クリスは自分が思った以上に複雑な物を抱えている。
――わからない事だらけだけど、悪い奴じゃない事だけは間違いないんだよねぇ……困った事に。
少なくとも、処理する事を学園長は望んでいない。
そして退学処分にする程悪質でもない。
だったらまあ、リーガにとっては好ましい事と言えるだろう。
漫画の趣味の合う可愛い後輩がいなくなるのは、少しだけ悲しいから。
今度は漫画ではなく、小説の話がしたいと思っているのだから。
ただ……一点。
依頼内容で一点だけ、どうしても気になる事があった。
『殺意を向けるな』
これの意図がまるで読めない。
殺すなと言われたら、学園長にとってクリスは死んで欲しくない相手という事で非常に明確である。
だからこそ、向いてないとわかったら早々に退学させようと思ったのだろう。
だが、殺意さえ向ける事を禁じるのに一体どんな意図があるのか。
実際に向けたらどうなるというのだろうか。
……気になる。
獣人とひとくくりにしても様々な種族がいる。
ただ、どの獣人も基本的に他種族と比べ好奇心旺盛な傾向にあった。
それはもう本能に近い。
寡黙で知的なタイプのリーガでさえも、その好奇心の本能に苛まれずにはいられなかった。
とは言え学園長直々の、それも相当以上に高額な依頼料を貰った以上破るつもりはない。
責任を軽視するような性格だったら学園からの依頼なんて来ないし、好奇心に従って猫を殺す様な性格だったら生きてさえいない。
それでも一度気になってしまえばもうどうしようもないのもまた獣人の性であって……。
「しばらく尾行けるか」
アフターサービスというお題目を利用し、リーガは数日間程クリスの尾行を決意した。
そう……別に自分が殺意を向ける必要はない。
ここは冒険者学園で、しかもクリスは相当に目立つ外見をしている。
それだけの要素が重なれば、数日あれば誰かが殺意を向けて来るはずだ。
冒険者学園とは、そういう場所なのだから。
リーガは窓際まで移動して、再び意識をクリスから夜空に戻す。
起きているには長い夜だが、夜空が綺麗だったから退屈はしなかった。
目が覚めてから、リーガに案内させ、食堂にて共に食事を済ませる。
全ての行動が、クリスにとって新鮮な物だった。
朝自分で起きる事も、騒がしい中乱雑な安い飯を食べる事も、大した理由もないのに喧嘩をする馬鹿を間近で見た事も。
そして、友達と二人だけで食事をとる事も。
いつも魔王城の中で活動し、ヒルデに面倒を見て貰っていたクリスにとってこの日常は未知な物ばかり。
まるで本の中の世界の様で、大変楽しかった。
一つだけ不満を言うなら、誰も喧嘩を売ってこなかった事。
それだけは不満だった。
そうして、大して美味しくもなく脂っこい食事で腹を膨らませたクリスの次なる未知は……。
「それじゃあ、入学式。行ってらっしゃい」
リーガは大きな建物の前でそう言った
建物の前に書かれている文字は『65年度4期33回生入学式』。
この中に、昨日入学が決まった仲間達が集まっている。
そう思うと、楽しいとは少し違う興奮した気持ちになれた。
「うぃ。ここまで案内やら何やらありがとうなんよ」
「良いよ良いよ。あ、そうそうどうせ君の事だからもうしばらくあの部屋使うんでしょ?」
「新しい場所に移るまではそのつもり。どしたの?」
「それじゃ、帰ったらどこか外食に行こうか。相部屋記念に奢るよ」
「ちょー楽しみ」
きりっとした顔をするクリスにくすりと微笑み、リーガは手を振りそのままどこかに。
そしてクリスは一人になって……いつもの様にワクワクした顔でその先に進んだ。
相変わらず、クリスは目立つ外見をしていた。
全身毛むくじゃらで完全に犬の顔をした狼男とか、半透明の高飛車スライムクイーンとか、肩パッドスキンヘッドとか、入学式に参加する生徒にも割かし個性的なメンツが揃っている。
だけど、そんな中でもクリスの目立ち方は別物だった。
やたらときらっきらして整っているふわふわもこもこ毛並みにゆるキャラみたいなフォルム。
そしてその小ささ。
わいわい騒がしいのは元からだが、明らかに彼の周りの喧噪だけ何とも異質な物となっていた。
その小ささの所為であまり人の目に触れてはいないが、逆に言えば彼を直接目に出来る傍の全員はじっと彼を凝視している。
もう『なんか動いてる凄い』位の感じである。
それでも、それだけ凝視されていても、この中で彼の表情に気付いている者は誰もいなかった。
落胆……という程大きな感情ではない。
言葉にするなら、がっかり。
彼はアニメとか漫画の学園行事を想像していた。
大勢の生徒がいて、先生がいて、長話があってみたいな。
学園長の倒れる程の長話をちょっと期待してたりした。
実際は凄く短いらしいし生徒の数も数十人ちょいとかその程度?
とりあえず思った数の十分の一以下だった。
それもそのはずこの冒険者学園の入学式というのは最低限の説明が目的である為参加は自由。
だから大半は参加さえしていない。
というかそもそもの話だが、年間二十回以上入学受付している冒険者学園で、年一に開かれる入学式の様な行事を希望するクリスの方が間違っていた。
きょろきょろと周囲を見回して、他の生徒達に目を向ける。
クリスを凝視している人を除いたら、彼らの態度は概ね三種類に分けられた。
一つ、興味なさそうにしている者達。
二つ、緊張している者達。
そして三つ、不機嫌を隠そうともしない荒くれ者達。
恐らくだが、入学式の強制参加という罰則があるのだろう。
いかにもそういう罰則が与えられそうな生徒が大勢いた。
肩パッドとか釘バットとか。
そうこうしていると前方の方からざわつきが伝わって来る。
どうやら、誰かが正面に立ったらしい。
身長の問題でクリスにはその姿が見えないが。
クリスはちょいと横に移動し、列から外れその相手を確認する。
そこに居たのは学園長のウィードだった。
「……珍しく多いですね。いつもはもっと少ないのに……。まあ良い。私は学園長です。別に覚えなくても構いません。どうせこの中の大半は一年以内にいなくなるのですから」
冷たく言い放つその言葉に、生徒達は愕然とする。
せめて入学おめでとう位の建前はあると大半の生徒が思っていた。
ここは冒険者学園の中で最も優れていて、エリート校とも言われている。
だから誇りとかそういう話かと思ったが……。
「ちなみにこれは別に比喩でも嫌味でもありません。そんな事をする程私は貴方がたの大半に興味を持ってませんから。まず――半分。三か月という一期の間にこの中の半数は自主退学を選択するでしょう。嫌気が差したり諦めたり、学費の問題だったりでね。そうこうして残っていられるのは……」
学園長は、指を一本立てた。
「一割。一年後に残っているのは大体一割かそれ以下。もちろん、全滅だった時もあります」
しーんと、空気が静まり返る。
皆大なり小なり夢を見て来たからこそ、現実という冷や水をぶっかけられたショックは大きかった。
とは言え……落ち込むだけマシだろう。
この中には偉くなる自分には関係ない話だとドヤ顔している馬鹿も混じっているのだから、それと比べたら落ち込める分まだ自分が見えている。
「そう……大半は真っ当な冒険者にさえなれない。だけど、安心してください。例え一期だけの学生だったとしても、損はさせません。払った金額以上の物は必ず返します。具体的に言うなら、喰うに困らない程度の稼ぐ手段を早々に覚えてもらいます。だからこそ、好きにやって下さい。失敗も成功も、全部君達だけの物なのですから」
そうとだけ言い残し、学園長は早々にその場を後にした。
クリスはうんうんと何度も頷く。
これこそ四天王の鬼畜眼鏡のウィードである。
別に眼鏡かけてないのに似合いそうだからという理由で鬼畜眼鏡といじられるウィードらしい挨拶だった。
生き急ぎ、無駄を嫌って効率的に。
その結果鬼畜判定を受けるのがウィードである。
とは言えウィードもクリスはあまあまな為、普段の冷徹ウィードが見れた事がクリスは少し嬉しかった。
ウィードと入れ替わる様に若い男性が走って来て、そして皆の前に顔を出した。
やたらと美形なその男性は、学園長の背に渋い苦笑を見せていた。
「露悪的な学長だからね、最低限と悪い部分だけをピックアップしていったよ……。だから、俺が帳尻を合わせる為明るい話をするね。まずは自己紹介を。俺の名前はクレイン。君達の三年程先輩で……そして、勇者候補でもある」
静まりかえった空気に一石が投じられ、ざわりと小さな喧噪が徐々に、だけど確かに広がっていった。
クリスも耳をぴくぴく動かす位に興味を持って、彼の方に意識を傾けた。
『勇者』
本来のそれは、魔族のカテゴリーに人類が含まれた時点で消失している。
つまり、二百年前黄金の魔王と勇者が対峙した時。
それが最後の、本物の勇者である。
勇者と魔王が戦う理由はなくなり、魔王と勇者の明確な格付けが完了する。
勝者の栄光を持つ魔族の王と、敗者と成り果てた人々の希望。
そうして、勇者という存在は変質した。
魔王を倒す……という目的だけでは今も変わらない。
ただし、討伐するのは犯罪を犯した不当なる魔王のみ。
もっと言えば、勇者は悪と断定された為政者を屠る権利を持つ者への称号となっていた。
既存の地位で近いのは、自由騎士だろう。
騎士でありながらも特定の国家に属さない存在。
どの国家にも、どの団体にも属さない。
代わりにあらゆる国のあらゆる権力者を罰する資格を持つ。
同時に一度のミスも許されず、常に最大多数を救う義務を背負っている。
自由騎士でありながら国際間警察の様な役割さえも担っていた。
国家保全の任務と考えるなら、ある意味において魔王の僕と呼ぶに等しいだろう。
自由騎士の様に国に所属せず、国際間警察の様に世界中の大犯罪を解決し、そして大魔王にさえ挑戦する権利を持つ唯一の存在。
それが今の勇者。
そして将来的に勇者として相応しいと判断された者達が『勇者候補』である。
「これは余談だけど、俺の他にもう一人勇者候補がこの学園に在籍している。更に言えば昨日組、つまりこの入学式である君達の同期にも勇者候補がいる。世界中合わせて指の数程も――いや失礼。十程度もいない勇者候補がこの学園に三人も在籍している。そう、それだけ、この学園が学びの最前線にいるという事なんだ」
少し声色をあげ、クレインはそう言った。
「先程学長は一年で一割しか残らないと言った。だけどそれは退学させられるからじゃあない。皆自分から辞めるんだ。お金を稼げたらそれで良いって考えの人が多いからね。でも、それはもったいなくないかい? この学園に居れば俺達みたいな勇者候補生や、俺達にも並ぶ凄い人達やもっと凄い人達と縁が築ける。何ならスカウトされて一緒のパーティーになる事だってあるかもしれない!」
冒険者を夢見る以上、皆一度は考えるだろう。
最高の力、最高の名誉、最高の贅沢。
夢物語の様な英雄譚の日々を。
その吟遊詩人に謳われる伝説に最も近いのがこの男クレイン。
正義である勇者に近く、冒険者の学び舎として理想の場所にいて、そして実際に冒険者として大成している。
この男の様な立場になりたいと考える者も、この男に取り入って出世したと考える者も、決して少なくない。
当然、この入学式に参加した者の多くもそう望む。
彼の様に恵まれた立場と成る事を。
「後、これはあんまり言うなって言われてるんだけどね……」
手を口元にもってきて、ひそひそ話風に……。
まあ、部屋の後ろまで聞こえる位に大きな声ではあるが。
「学生って言ってもさ、ぶっちゃけ君達の先輩は大体が現役冒険者だ。一年もここに通えば最低限でも並の冒険者になれちゃんから当然だね。そう考えると、ここは都合が良くないかい? 現役冒険者と直通のコネが作れるんだから。……もうわかるね? 学長の言う事は間違ってないけれど正しくもない。冒険者になりたいという意思が貫けるなら、君達はもっと先の世界を目指せるんだ!」
両手を上げて、称える様に。
そしてクレインは、大きな声で叫んだ。
「改めて、六十五年度四期生の諸君! 入学おめでとう! 俺達雛は君達冒険者の卵を歓迎する! さあ、共に未知なる冒険の世界に出よう!」
数秒の静けさの後、まばらな拍手が響く。
そしてそれは大きな拍手の渦となり、最後には大歓声に変わった。
「ありがとう! これで俺の話は終わりだ。……最後に、冷水をぶっかける事だが、一つ忠告しておこう」
クレインが冷たい目になった瞬間、空気が一気に冷え込んだ。
その様子はまるでたった一人がこの空間を支配したかの様だった。
その後ちらっと、懲罰組を見た後……。
「学長は優しいから言わなかったが、毎年相当の割合でやらかす馬鹿がいる。喧嘩程度なら文句は言わないよ。冒険者なんてそんなもんだからね。俺だってそうさ。だけど、それを超える様なやらかしをする様なら……。わかるね? 頼むから、俺達に剣を抜かせないで欲しい。最低限のルールさえ守ってくれたら、そんな事はしなくても済むんだ。頼むよ、本当に……」
それを最後に、クレインもその場を離れた。
「それじゃあ、新入生の方は適正を測りますのでこちらにどうぞー」
入口から女性の声が聞こえ、皆がそれに誘導されていった。
ありがとうございました。