7.嫌い
私の家に着くと、私が靴を脱いだ後に、アリアは先ほどとは違い、遠慮なく玄関で皮のブーツを脱いで、私の家に上がる。
私はアリアの靴を物珍しそうに見ていた。私の靴と違って勝手に脱げるわけでもなく、まずあまり見たことがない。
私はアリアの靴から目を逸らし、そのまま、数歩廊下を歩いてアリアに。
「飲み物とか欲しかったら冷蔵庫から取って、飲んでね」
私はそのまま、浴室に向かっていき、浴室の扉を閉めた。
アリアは私に言われたまま、周囲を見ながら、廊下を歩いていく。最初のドアを通りすぎて、次の部屋に入る。
そこは広いリビングで、周りはガラス張りで、外は深夜のためリビングも薄暗い。奥にはキッチンもあり、冷蔵庫も備え付けられている。
アリアがリビングに入ると電気がついて、そのままキッチンに行き、冷蔵庫を開けて、中身を数秒見た後、プリンを取り、食器棚からスプーンを取る。
プリンとスプーンを持ったまま、リビングのソファーに躊躇なく座る。リビングを見渡して。
「気持ち悪い」
アリアはリビングを見渡したが、リビング自体は物も整理されていて、床のタイルも綺麗に掃除され、少し見渡すかぎりではホコリすらないのに、アリアは「気持ち悪い」と言った。
アリアの表情にも嫌悪などは何も出ていない。
アリアは鬱な瞳でソファーに座りながら、壁をずっと無表情で見つめていた。
廊下の方からドアが開く音が聞こえ、ドライヤーの音が遠くから微かにリビングまで響いてくる……数分して廊下を歩く足音が聞こえ、アリアはソファーからゆっくり立ち上がってリビングから出る。
アリアが廊下に出ると目の前に自分の部屋に向かおうとしていた私とばったり会った。
少し私はいきなりアリアが出てきたので驚いたような表情をした後。
「ごめんごめん、部屋はこっち」
アリアはおそらく部屋を間違えてしまったのだと思う。
私が自分の部屋の位置も説明しないでお風呂に入ったことが良くなかったと思った。
私はアリアを誘って、自分の部屋に行き、ベッドに座る。
そうするとアリアが、私にプリンとスプーンを渡し。
「心の距離というものは大事ですよ」
「どう言うこと?」
「心の距離」? いきなりどう言うこと?
私はアリアの言葉がよくわからない。
だけど、行動はプリンをくれた。
なら、アリアは私との心の距離を縮めようとしてくれてるのかな?
「食べて良いって事?」
「勿論です、あなたのですから」
やっぱり、縮めようとしてくれてるのかな?
プリンを開けて、スプーンを使って食べる。
私はプリンを食べながら部屋を見渡して……。
「ゲームする?」
「ゲームですか……いいですよ」
私はプリンをすぐに食べ終わる。
私も何か、アリアが縮めようとしてくれてるなら、何かしたいな。
アリアは何かしたいことあるかな? ……ゲームでいいかな?
テーブルに置いてあった、手のひらサイズの半円の上のものを取って床に置き、ベッドにもう一度座ると、バーチャルモニターのようなものが現れた。
「古いやつだけど、やろ」
一様、昔の物が結構好きで集めているのだけど、誰かとレトロゲームをやる時はちょっと、新しい物の方がいいと思ってしまう。
私がアリアもベッドに座るように誘導すると、アリアが隣に座ってくれた。
なぜか私は少し緊張しながらも、指を動かしてモニターを操作してアリアの目の前にも画面を出現させる。
「アリアってFPSとかやるの?」
「ゲームをやらないのでわかりませんね」
「へ〜、珍しいね……ゲームできる?」
「下手でしょうが、できますよ」
アリアは指を動かして、モニターを操作する。
アリアはモニターと私の指の動きを交互に見ているだが、同時進行的に2つをこなしている。
私はアリアの「ゲームをやらない」という言葉をゲームが下手だと解釈して、ゲーム画面を開いて1分ほどでマッチングした。
「アリア……大丈夫?」
「大丈夫です」
アリアは私のレトロなゲーム機でも毎日やっている私よりゲームが上手かった。
無駄のないプレイだった。
本当にアリアは上手だった、まるで手本を見せられているのかと思うくらいに、見たことがない戦術や立ち回りをするけども、とても上手い。
「アリア上手いじゃん、まずこのゲーム機でそのプレイできるのは天才だよ」
「いえただ手先が器用なだけですよ、あと情報が単純でした」
「オンボロゲーム機だけど、ゲーム自体は最新のなんだけどな?」
アリアは私に褒められても謙遜しているような言葉を言ったが、顔は別に無表情のままである。
アリアの「ゲームをやらない」と言った言葉は単なる嘘だったと再解釈して、私はアリアに、
「ゲームやらないならいつも何してるの?」
「仕事してますね」
「え? ……そうなんだ、何歳なの?」
私は予想外の答えに思わず声が出て顔が硬直したが、言葉を理解して納得に変わるが、14歳の私よりも少し歳上ほどのアリアの外見を見て、年齢が気になり聞く。
「忘れました、外見的にあなたと同じくらいじゃないですか?」
「忘れるとかあるんだ」
「そんな、年齢に興味もないですし、数えるほど余裕があったわけでもありませんでした」
「アリアはどんな育ちだったの?」
アリアは珍しく、思い出すように少し考えて私に向き直り、どうでも良さげな無表情で。
「そう言えば、スラム街のような場所でしたかね……あ〜、そういえばスラム街と呼ばれるような場所でしたね」
私はスラム街という言葉が時点で表情が固まった。
その後、理解不能な顔に顔を歪める。
「アリア、それ本気?」
「はい」
「そんなの創作の話でしか聞いたことないよ」
私はアリアにまるで冷たい現実を突き詰めるかのような目をして言うが、アリアは表情を変えず、何がおかしいのかと言わんばかりに堂々としている。
「ありえないよ」
「あなたは否定しますが、なぜ信じてくれないのですか?」
アリアの言葉は私に信じてくれと真っ直ぐ言っているというよりは、どこか私への問い的な意味が含まれている。
私はアリアの言葉に顔を硬直させ、少し考えた後に。
「信じない……それは私が否定してるんじゃなくて、アリアがおかしいことを言い過ぎなんだよ、矛盾してるよ」
「矛盾していると問題ですか?」
「は?」
私は思わず、驚きからではなく怒りから「は?」という言葉を思わず言った。
私はただ単にアリアに真面目に返した。だが私には、アリアの言葉はただ私を否定する言葉として、私の言葉を受け止めず、一方的な否定に聞こえたのだ。
「私はあなたの言葉も聞いていますよ……私は否定ではなく信頼の話をしています、あなたはただ私よりも現実を信頼しているから現実を信じた」
アリアの「私はあなたの言葉も聞いている」という言葉には、まるで私の内面を読まれたかのように感じたが、それが私の怒りを理解へと変え、少しアリアを見つめる目が穏やかになった。
だがその後のアリアが綴る言葉には全く理解できない……正確には理解できるが、アリアが何を言いたいのかがわからない。
「私は決して嘘でもふざけているわけでもないです」
アリアはいつも無表情だからこそわからないが、普通の感覚で言うなら嘘はついていない表情や仕草をしている。
だからこそ私はアリアを信じかけている。
そんな時、廊下から足音が響いてきて私の部屋のドアが開けられる。
ドアを開けたのは私の母親だった。何か言おうとしていたが、さっきまでゲームをやっていた痕跡や私の目にできたクマを見て、
「ちゃんと寝なさいよ……ご飯食べる?」
「いや、いらない」
私の母親は別に怒っているようではなかった。
ただ優しく心配しているような顔をしていた。
私が「ご飯をいらない」と言うと、ドアを閉めて行った。
すっかりアリアとゲームや話をしていたせいで、窓の外は明るくなっている。
「まあ、もう朝ですし私は帰りますね」
「あ、帰るの? 別にまだいてもいいよ?」
私は少しアリアとの会話で発熱してしまっていたが、私の母親が来たことでいつもの状態に戻り、アリアに普通に「まだ帰らなくとも良い」と言ったのだが、
「私はあなたが嫌いです」
「……」
アリアの突然の言葉に私は呆然と立ち尽くし、顔を硬直させる。
まるでアリアの言葉が違う言語かのように。
理解ができない。
さっきまで普通に会話をしていたというのに、突然「嫌い」と言われた。
え、どう言うこと?? 私がアリアに少し否定的すぎた?
「アリア……どういうこと?」
私はアリアに何か嫌がられることでもしたのかと思い、アリアに恐る恐る聞いてみるが、アリアの表情には嫌悪や怒りは見えず、ただ焦点が合わない虚ろな瞳が私の方へ向いているだけだ。
「ただ、あなたが嫌いなだけです」
わからない、怒ってないのに「嫌い」?
感情的ではない、非常に落ち着いた声でアリアは言う。
まるで私を本当に感情に任せたものではなく、本心から嫌いと否定するかのような。
アリアは私から視線を逸らし、部屋の扉のドアの部に手をかける。私は反射的に、
「ごめん、アリア……」
否定的だったことが悪かったのか、でもアリアは怒っていない、何もわからない。
何が悪いのか、わからなくとも私はアリアに必死に謝る。
が、アリアは冷徹とも言えない。まず言葉が届かないかのようにドアを開けて、そのまま廊下を歩いていった。
私にはただ呆然と廊下からアリアの足音が響いてきた。それが何か抽象的であるが、心の距離が遠ざかる感覚を与えた。
「私は……わからないよ……」




