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アリス

 あれから9か月がたった。魔法はほとんど初級の魔法が使えるようになった。アクアさんは「天才」や「普通じゃない」と驚いていた。特に自分の適性バイタリティの魔法は正確にでき、あと少しで中級の魔法も使えそうだ。


「では、今日は中級の治癒魔法の練習です。バニル君なら今日にでもできそうですね。」

「はい先生。」


 中級と初級では難易度が全くと言ってもいいほど全然違う。中級治癒魔法は4か月練習しているが、あとすこしというところでできないのだ。


「トリートメント」


 もちろんアクアさんの体すべてに自分のバイタリティが届くようにしている。


「ダメですね」


 そういうアクアさん。もちろん自分でもわかる。失敗か成功かは自分でわかるのだが何かが足りないのだ。その時であった。


「バニル様。お母様が破水されました。」


 なんと!そろそろ生まれるとは聞いていたが今日であったとは。僕はすぐさまカリンのもとへ向かった。


「お母様、大丈夫?」


 カリンはベッドで横たわっている。陣痛で痛そうな顔をしていた。


「大丈夫よ。バルちゃん。」


 カリンはそういっているが、相当つらそうに見える。そんな時だった。


「バニル君、今こそだよ。」


 後ろからアクアさんがそういってきた。


「今こそとはどういうことですか、先生。」

「今こそ『トリートメント』を使うんだ。トリートメントはけがを治す以外に痛みを和らげたりするので、出産なんかによく使われるんです。」


 確かに本には‘『トリートメント』は出産を安定させるために使われることもある’と書かれていた。ならばやってみるしかない。


「うん、やってみる。…トリートメント」


 そういって僕はカリンの体に自分のバイタリティを流すようにした。だが、やはり何かが足りないような気がする。このままでは失敗するであろう。何かが、何かが…そう考えているとカリンはよりつらそうにしていた。痛みが激しくなったのであろう。おなかの子宮口という小さなところから出るのだ。痛みは激しくなるのであろう。

 …ってそうか。僕は今まで自分のバイタリティを体を覆うようにしていた。しかし、痛みを伴っているのは体の内側だ。そう考えると、僕は自分のバイタリティを内側から覆うようにした。この感覚は…


「あら、痛みが和らいだわ。」

「バニル君、成功ですよ。」


 僕の予想が正しくトリートメントは成功した。やはり今までの発想ではだめなのだと気づかされた。




 僕はカリンのいる部屋から出て外で待機していた。分娩は私たちにお任せくださいとメイドのエリカさんとジークさんに言われたからだ。

 数十分するとカリンのいる部屋から鳴き声が聞こえた。無事出産できたようだ。


「バニル様、中に入っていいですよ。」


 エリカさんに言われてカリンのいる部屋へ向かうと、カリンは小さな赤ちゃんをかかえていた。


「バルちゃん、女の子ですって。バルちゃんの妹ですよ。」


 そういって僕に赤ちゃんの顔を見せてきた。肌は白く、目や鼻が整って美しい。将来は美人になるであろう。


「バルちゃんのおかげで少ない痛みで出産できましたよ。ありがとね。」


 カリンは僕の頭を撫でた。正直僕がお礼を言いたいくらいだ。これで僕は中級魔法を手に入れたのであるから。


「そうそう。それで、バルちゃんに名前を決めてもらいたいの。」


 名前か…。そうだな…


「アリスがいいかな。」


 アリスとは高貴なものにつけられる。今は子爵の身分だが将来はまた辺境伯になれるよう頑張る意味も込めてのアリスだ。


「アリス。いい名前ね。あなたは今日からアリスよ。」


 こうして長い一日が終わった。

週1回から二週間に1回くらいで登校します。

【次回】5月25日22時

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