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13、ルームメイト

「じゃあ、俺達はもう行くから」


ティアとギンの喧嘩が終わり、キクチが迷子から帰ってきて寮に案内してもらうところだった。


「キクチ先生、セツナ君のルームメイトを教えてくれますか?」


先ほどまで子供並みの口喧嘩をしていた人物とは思えないほど、清楚で気高い雰囲気で話していた。

おそらく別の先生にはこの振る舞いなのだろう。

そしてセツナとルナはここで初めて知ったのだがキクチはこの学園の教師だったのだ。担当は科学らしく、科学を知らない異世界人の要望により学園に科学の授業が実装された。


「え?あぁ、セツナ君のルームメイトはまだ決まっていません」

「そう、決まってないのね…」

「それではセツナ君、行きましょう」

「はい」


その時、セツナは気付けなかった。ティアが教育者とは思えないあんな行動になるなんて…


♢♢♢


セツナはキクチに最短のルートで男子寮に案内してもらった。そしてルナは精霊なのでかなり悩んだ末に兄妹ならば、という理由で男子寮に住むことになった。


「ここがセツナ君の部屋だよ、ルームメイトはいないから自由に過ごしてくれ」

「ありがとうございます」


さっそくセツナは自室の扉を開ける。


ガチャ


「やぁセツナ君、これからよろしくね!」

「………」


ガチャ


セツナは無言で扉を閉めた。


「キクチ先生、部屋を間違えてる以前に男子寮と女子寮を間違えているぞ」

「え!?嘘!確認してくる!」


キクチは寮の階段を降りて確認しに行く。


「ちょっと、いきなり閉めるの酷くない?」

「お前のような学園長をそのまま若くしたような奴がルームメイトなんて認められるか、ってか俺は最短ルートで来たのに何でいるんだよ」

「裏技」

「それに俺はルームメイトいないはずなんだがな」

「そこは学園長の権力で」

「性別を考えろ馬鹿野郎」

『あ、ギンさんだ』

『セツナ殿にルナ殿、さっき振り』


竜種の精霊…ギンがいることで目の前にいる生徒はティアだと確定した。


「それとお前、何で若返ってる」

「ふっ、私のユニーク魔法【生命の輝き】を持ってすれば簡単!」

「そうか、じゃあ学園長の業務に戻れ」

「それがね、この魔法は若返ることは出来るけど、戻ることは出来ないんだよ~」

「見た目が十五歳でも学園長の面影あるから何とかなるだろ」


セツナの言ってることは正しい、ティアの姿を見た途端、学園長が若返っただけだと一瞬で理解できたのだ。学園長だと言えばすぐに業務に戻れるはずなのだ。


「そんな細かいことはいいじゃない、ささっ、上がって上がって」

「はぁ………」


若干諦めつつも、セツナは部屋に入る。部屋の中はセツナの予想を遥かに超えて広かった。この寮には貴族も住んでいるらしく、一室一室が広く要望があれば個室も用意できるらしい。


「二人部屋とは思えない広さだな…」

『そうだね…』

「あ、でもベット二つしかないからルナちゃんどうしよっか…」

『それなら大丈夫です!セツナ、お姉ちゃんの荷物だして!』

「はいはい」


ルナの荷物は全てセツナの亜空間に入っているのだ。セツナの荷物は少なったがルナは家具を全部持っていくと言っていたので、亜空間を使うことになったのだ。


ルナの指示に従い、セツナは家具を置いていく。一時間ほどするとようやく全ての荷物が出し終えた。ピンクの絨毯などは流石に男子寮なので止めてくれと頼んで敷いていない。

家具を全て出しても、まだまだ部屋には余裕があった。貴族の中には巨大な荷物を大量に持ってくる人もいるらしく、それにも何とか対応出来る広さになっているのだという。


「さて、配置も終わったし隣の部屋に挨拶でも行くか」

『洗剤持って行こっか!』


ルナは戸棚から箱に入った洗剤を取り出して、実体化する。

そしてティアを連れて行くと面倒になりそうだとセツナは考え、ギンに監視してもらうことにした。


♢♢♢


右隣には部屋はないので左隣の部屋に向かった。ルナとセツナは左隣の部屋の呼び鈴を鳴らす。


「はーい、どなたですか?」

「隣の生徒だ」

『こら!それじゃ伝わらないでしょ!すみません。うちの弟が…これ、つまらないものですが』

「あ、ご丁寧にどうも…それでは今行きますので!」


少しすると、扉が空き黒髪黒目の日本人が出てきた。セツナは黒髪赤目なので日本人に見えないかもしれない。


「初めまして~僕はイトウ カズキと申しま…」

「どうした?いきなりアホみたいな面して」

『失礼でしょ!』


カズキはセツナの顔を見ると突然固まった。セツナがそれに対しての感想を言っても聞こえていないようだった。


「セツナ…なのか?」

「ん?何故、俺の名前を知っている?」

『あ!カズ君だ!懐かしい!』

「カズ君?誰だ?」

『セツナが一年生の時によく遊んでたでしょ!』

「覚えてるわけないだろ」


そんな会話をしていると、カズキは「ふ、普通だ…」と呟く。


「とりあえず立ち話もあれだし、部屋はいれよ」

「あぁ、知り合いっぽいしな。全く覚えてないが」


部屋の中は一人分の荷物しかない。カズキは「まだルームメイトが決まってないんだ」と言っている。この時セツナは「学園長いるか?」と言おうとしたがカズキが可哀想なので言わなかった。


『はいどうぞ!』

「ありがとう」


玄関で最初の目的の洗剤を渡す。部屋の中で小さめのテーブルを囲うように座る、小さめと言っても二人で食事する程度なら余裕があるぐらいの大きさだ。


「お前がある日を境におかしくなった頃から一度も会話してなかったよな…」

「ある日…?」

「お前の姉ちゃんが誘拐された日だ…その日から毎晩亡霊みたいに街を歩いてよ」

「全く覚えてないな、俺はルナ姉を探してただけだし」


セツナは平然とした顔で答える。カズキは「でもよかった」と続ける。


「前のお前に戻ってるみたいで安心したよ!それで、そっちの子は妹さん?」


その言葉で一瞬、部屋の空気が凍り付いた。


「………お前、完全に忘れてるな」

「へ?」

『私はセツナのお姉ちゃんなんだけど…』

「えぇぇぇぇぇぇ!?で、でも見た目が!」

『そっかぁ…私、妹に見えるのかぁ…』

「す、すみませんでした!」

『いいのいいの、どうせ…どうせ、こんな見た目だからこれからもセツナの妹だと勘違いされて…』


その後、カズキは何回も謝るがルナは全く機嫌を直さず、最終的にセツナが「ルナ姉は俺の大切なお姉ちゃんだよ」と言って一瞬で機嫌が良くなった。

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