14、魔道具屋
朝、まだ日も上がっていない頃にセツナは起きた。
その理由は異常なほどの寝苦しさがあったからだ。
「………」
『んにゃ…』
「にゃぁ…」
セツナのベットの中にはルナとティアが潜り込んでいる。
セツナは何故こうなったか、寝る前の事を思い出す。
♢♢♢
「じゃあ、寝るか」
『お姉ちゃんが一緒に寝てあげよう!』
「私も私も~」
セツナが自分のベットで寝ようとすると、当然のようにルナとティアが布団に入る。
「お前ら自分のベットあるだろ」
『昔はお姉ちゃんとじゃなきゃ寝れなかった癖に~』
「こんな可愛い学園長が一緒に寝るんですよ?興奮しません?」
確かにルナとティアは可愛い。それは誰が見ても言うレベルだ。しかしセツナは五年間戦場で人を殺し続け、恋などする余裕はなかった。
それどころか一度記憶を失う前もずっとルナ一筋だったため、ティアを見ても何も思わない。何も思わないからこそ戦闘中にも何の躊躇も無く蹴り飛ばした。
「ほらほら~一緒に寝ましょうよ~」
「…ギン」
『了解じゃ』
セツナの合図でギンはティアをベットから生やした茨で縛り付ける。ルナは即座に逃げたがティアは警戒していなかったため、あっさり捕まった。
「ちょ!ギン!なんで契約者を縛り付けるの!ちょっと!」
『教育と言ってくおれ』
「じゃあおやすみ、ルナ姉も自分のベットに戻らないと闇玉を鎖の形状にして縛り付けるから」
『セツナ…そんな性癖が…』
「頼むから黙って寝てくれ…」
♢♢♢
そして今に至る。とりあえずセツナは二人を放置して起きた。
「…何もやることないな」
セツナは着替えて暇つぶしに学園の中を探索し始めた。入学式の前日のため、何もすることがないのだ。
制服も配布されているが、それは入学式の日に着るのが決まりだと聞いたセツナはいつもの黒い戦闘服に長年の戦闘でボロボロになったフード付きのロングコートを着て外に出る。
「このコートにも世話になったな…凄い血塗れだ」
初めは真っ黒だったコートも返り血を何度も浴びて紅い色に染まっている。
♢♢♢
朝早くなので誰も起きていないようで、セツナは一人で散歩することになった。
「この先は…生徒達が使える商店通り…か。売られてるものはバラバラだな」
セツナは学校のパンフレットを見ながら呟く。何の目的も無く歩いていると朝早くなのにも関わらず生徒が大量に集まっている場所を見つけた。
「なんだあれ…」
少し興味を持ったセツナは集まっている場所をパンフレットで確認する。
「魔道具店『ガイル』、思い出の品を魔道具にします。思い出が強いほど強い魔道具へ…か。後少しで開店するらしいな…」
セツナはその店でやってみたいことがあり、列へ並ぶ。
「てめぇら!開店だ!」
列の前から図太い男の声が聞こえる。
「「「おぉぉぉぉぉぉ!」」」
「品を出しやがれ!一人二品までだ!」
その声を聞いてセツナも魔道具にしてもらいたい二品を用意する。
「これは半年も使ってないだろ!次!」
「はい!」
「これはお前の思い出が感じられん!次!」
「はい!」
そんな声が聞こえ、どんどん列が消えていく。結局、セツナの番までこの調子で捌かれていった。
「次はお前だ!ん?新入生か」
「あぁ、この二品を頼む」
目の前の男性はスキンヘッドで鋭い眼光、幼い子供なら泣いて叫ぶだろう。その男性はセツナの格好を見て新入生だと気付いた。
「お前、初めは俺の顔を見たら怯える奴がほとんどだが…面白い奴だな」
「顔を見て怯えられる経験を何度もしてるからな」
セツナの場合は戦場の返り血を浴び続け、敵にも味方にも怯えられる経験は数え切れないほどしている。
「お前面白いな!気に入った!名前を教えろ!」
「セツナだ」
「俺はガイル、お前ニホンジンだろ?家名はないのか?」
家名、日本人なら誰でも持っている。異世界人にとっては家名があるのは貴族である証明だ。
「家名を名乗ったら母さんに殴られたからな」
ミライの目の前でセツナは家名を言った。しかしその時はセツナが記憶を失っている時であり、今は名乗ってもいいのだがセツナはそのことを知らない。
「訳アリか、じゃあこれ以上は聞かん、それで品ってのはそれか?」
「あぁ、この壊れたナイフと五年前から使ってたコートだ」
セツナは先日、ティアに破壊されたナイフと血塗られたコートを渡す。どちらもセツナは何年も使っていたのでどうしても捨てることが出来なかったのだ。
「ふむ…、これには見たことない感情が見えるな…この感情どんだけ込めてんだよ…今までこんなに感情が入ってる品は見た事ねぇ…」
「それで頼めるか?」
「あぁ、問題ない…が、こりゃあすげぇ魔道具が出来るな」
「じゃあ頼む」
「わかったわかった…」
ガイルは店の奥に行って大きな謎の金属の箱を持ってきた。
「それは?」
「あー、ニホンジンはこの魔法知らないんだったな。【変換魔法】ってのがあるんだけどな、それを使うにはこれが必要なんだ。ちなみに魔道具店を開いてる奴は基本この魔法適性がある」
「なるほど」
「じゃあ始めるぞ」
ガイルはコートを畳んで箱に入れる。ナイフは別の小さめの箱に入れた。
箱の上に手を置くと瞼を閉じて数秒する。
「できたぞ」
「早いな」
「変換魔法なんてそんなもんだ」
「そうか」
「納得早いな」
「納得なんてそんなもんだ、それでどんなのが出来た?」
「えっと…まずコートだが【罪深き死神の衣】だとよ。お前、このコートで何してきたんだよ…」
「別にいいだろ、それで効果は?」
「【気配遮断 形状変化(防具) ライフチャージ(99999+) ライフコンバート】、だとよ」
「ライフチャージとかライフコンバートとか言われても分からないんだが…」
そう言いながらセツナはコートを受け取る。
触れた瞬間、セツナの頭に魔道具の情報が流れ込む。
【罪深き死神の衣】
専用装備
【気配遮断】
(形状:ロングコート時)
気配を完全に消すことが出来る。
【形状変化】
(形状:ロングコート)
装備の形状を変化する。
【ライフチャージ】
(蓄積数:99999+)
(溜めた命の数×20)性能を上げる。
命を溜めることが出来る。
命を消費して一時的に身体能力を上げることが出来る。
【ライフコンバート】
溜めた命を変換することが出来る。変換出来ないものはない。装備者の命が消えた時、自動的に蘇らせる。
この情報はガイルが触れた時には流れなかったことと【専用装備】の文字からセツナは自分にしかこの情報は読み取れない、と察する。
「次はナイフだな…【罪深き死神の闇】か…本当にお前何者だよ…」
「セツナだ」
「いや、名前じゃなくて…」
「それで効果は?」
「はぁ…もう考えるのやめる。【形状変化(武器) 破壊不可属性 ブラッドコーティング】だとよ」
「そうか」
セツナはナイフを受け取る。すると先ほどと同じように頭に情報が流れ込む。
【罪深き死神の闇】
専用装備
【形状変化】
(形状:短剣)
装備の形状を変化する。
【破壊不可属性】
破壊不可能
【ブラッドコーティング】
血液を吸った分だけ切れ味が上がる。効果は一時間。
流れてきた情報を見てセツナは思わず笑みをこぼす。何故ならセツナの心配が二つも消えたからだ。一つ目は破壊不可属性、これでティアの時のように簡単に壊されることは消えたのだ。
そしてもう一つはブラッドコーティング、セツナは戦場で付いた血を毎回拭き取る作業が一番面倒だったのだ。そんなことしている暇あるなら次に行くと、毎回思っておりある時には舐めて取っていた。
「お代は?」
「いらねぇよ」
「なに?」
「別の店は金が必要だが、俺の場合は学園から給料が出るんだよ」
「そうか、じゃあ俺は寮に戻るとするか」
「おう、男子寮はあっちだぜ」
そう言ってガイルは男子寮への最短ルートを教えてくれた。セツナは来た道で戻ろうとしたので最短ルートを教えてくれたのはありがたかった。その日は寮に帰り、入学式に備えるのであった。
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